FX投資判断インディケーター」の使い方・後編


M2JFX アカデミア学長
吉田 恒

「FX投資判断インディケーター」の使い方・前編はこちら
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今回も前編に続き、先週リリースした「FX投資判断インディケーター」の使い方解説をレポートします。後編の今回は、(4)52週移動平均線(5)ポジション(6)購買力平価 について解説します。

(4)52週移動平均線=中期トレンド判断で参考にする

52週移動平均線は中期トレンド判断に役立ちます≪資料1参照≫。それが効果的に機能したのは、2011年10月末を境に、歴史的円高が終了し、中期的な円安トレンドへの転換が始まっていることを見極めたケースでした。

≪資料1≫ドル円と52週移動平均線(2000年~)

(Bloombergより作成)

2012年2月からドル高・円安が勢い付き、76円程度から一時84円までドル高・円安になる中で、ドルはこの52週線を大きく、長く上回ったのです。52週線は、中期トレンドに対して「ダマシ」が少ないことが経験的に確認されてきました。そんな52週線をドルが大きく、長く上回ったということは、一時的なドル高、つまり「ダマシ」ではなく、中期トレンド自体がドル高・円安へ転換した可能性を示していたわけです。

歴史的な円高から円安への転換だったからか、2012年中に一時的にドルは52週線を再び割れるなど、52週線のルールから少し例外的な現象もありましたが、ただその後2012年秋以降、「アベノミクス円安」が急加速する中で、確かに52週線の示唆通りに、2011年10月末で中期トレンドは円高から円安へ転換していたことが証明されたわけです。

ところで、私はこれまで52週線は、中期トレンドに対して「ダマシ」が少なく、中期トレンドが不変なら、52週線を「大きく」、「長く」ブレークすることはなく、逆に「大きく」、「長く」ブレークしたら、それは中期トレンド転換を示していると説明してきました。この「大きく」、「長く」の基本的な目安は1ヶ月程度、5%以内です。

この52週線を使った投資判断も、これまで私が調べた限りでは、じつはドル円以外、ユーロドル、豪ドル米ドルにもある程度適用できそうです。

今回の歴史的円高から円安への転換が典型的に示しているように、中期的なトレンドの転換は「振り返って見たら、2011年10月末の75円で円高は終わり、円安へ変わっていたのだ」といった具合に、基本的には後から確認するものです。

ただそんな事後的な確認が、遅くなればなるほど、5年線からの乖離率でも説明したように、「この先何年にも渡って二度と出会わない水準で売り買いする」といった致命的な判断ミスにつながる危険が高まりかねません。事後的な確認ながら、それをなるべく早く判断できるように役に立つのがこの52週線といえるでしょう。

また、相場は中期トレンドの中でも上がったり下がったりするもので、その中では中期トレンド自体の転換も気になることが出てくるでしょう。たとえば、一直線に進んだ「アベノミクス円安」が、2013年5月103円で一服した後、一転して93円へドル急落が起こったケースでは、中期円安自体が終了した不安に襲われた投資家の方もいたでしょう。

そんなケースで参考にするのがこの52週線です。これまで述べてきたように、52週線は中期トレンドに対する「ダマシ」が少ないので、要するに「アベノミクス円安」がまだ終わっていないなら、52週線より大きく、長くドル安・円高にはならないといった具合に目安にすることができたわけです。

 

(5)ポジション=相場の主導役、HF取引の目安になる

市場参加者のポジションが買いに傾斜しているか、売りに傾斜しているか、行き過ぎていないかなどの目安を得ることは、取引する上で参考になるものです。要するに、「買われ過ぎ」の相場は基本的には上昇余地が乏しく、「売られ過ぎ」の相場は下落余地が限られ、それぞれ行き過ぎの反動で逆方向に大きく動くリスクがあるわけです。

そんな市場参加者のポジションについて参考にする上で、ここでとりあげているのは米商品先物取引委員会(CFTC)集計による投機筋についてのデータです。これは、マーケットの主導役を担うことの多いヘッジファンドの取引を反映しているものであり、しかも為替以外の相場についてもデータがあるため、ポジション判断の基本になります

このデータについては、初期設定を2010年以降としましたが、ほかのデータも含め、期間設定を最長で1990年まで遡り変更することが可能です≪資料2参照≫。ですから、必要に応じて、現在のポジションが、過去の実績と比較して、どれだけ行き過ぎたものかを点検することで参考にできるでしょう。

≪資料2≫投機筋の円ポジション(2010/01~)

(Bloombergより作成)

たとえば、2013年に入ってからの円の売り越しは、2010年以降で見ると記録的な高水準に達しました。その意味では、「アベノミクス円安」で膨らんだ投機筋の円売りは「行き過ぎ」になっていた可能性があったわけです。

ただし、期間設定を2005年以降まで伸ばして見ると、円売り越しは2007年には18万枚まで拡大し、2013年のそれをはるかに上回っていたことがわかります。では、「アベノミクス円安」で膨らんだ円売りも、さらに拡大する余地があるのでしょうか。

ただし、2007年と2013年では、円売りリスクテークの基本条件に違いがあります。為替リスクテークにおける最大の基本条件は金利差です。2007年当時の日米の中央銀行の決める金利、つまり政策金利差は最大5%以上の米ドル優位、円劣位だったのに対し、2013年は依然として日米とも基本的にゼロ金利です。

こんなふうに、為替リスクテークの基本条件も確認しながら比較すると、単なる数値の機械的な比較とは違って、足元が「行き過ぎた」ポジション・テークになっているか否かの判断が可能になるでしょう。

グラフにカーソルをあてると、極端なポジション・テーク、つまり「異常値」を記録した局面がいつかわかります。そんな売られ過ぎ、買われ過ぎが起こった相場はどんな局面だったか、それが一巡した後、どんな展開が起こったか、そういったことを調べることで、当面のシナリオについての自分なりのイメージを構築できるようになるでしょう。

他人がどんな相場観を持っているといったことも、ある程度参考にする必要はありますが、ただそんな「借り物の相場観」だけに頼るのではなく、自分なりの相場シナリオをイメージすることが、このようなデータを見ながら、「考え」、「疑い」、「理解する」ことでどんどん可能になっていくはずです。

 

(6)購買力平価=為替で最もPERに近い指標

購買力平価は、物価を元に計算した為替の適正水準ですが、どの物価を基準にするかによって、経験的な上下限の目安にもなります

たとえば、ドル円の場合、これまでは輸出物価基準の購買力平価をドル下限、生産者物価基準の購買力平価をドル上限にした範囲内で基本的に推移してきたことがわかります≪資料3参照≫。別な言い方をすると、中期的なドル高・円安トレンドとは、生産者物価基準の購買力平価までドル円が戻ったところで終わるのが基本だったのです。

ただそんなドル円の変動幅は徐々に変化してきました。要するに、ドル安・円高は輸出物価基準の購買力平価まで届かないようになり、一方でドル高・円安は生産者物価の購買力平価を上ぶれるようになってきました。これが、日米の経済構造変化を受けた、ドル円の適正価格との関係の中長期的な変化ということでしょう。

ドル円は中長期的には、生産者物価基準の購買力平価をドル下限、消費者物価基準の購買力平価をドル上限とした範囲内に変動幅をシフトしつつあるのかもしれません。それにしても、この購買力平価こそは、外貨での資産運用を行う上では必要不可欠な指標の一つでしょう。

≪資料3≫ドル円と購買力平価(1990年~)

(Bloombergより作成)

このような指標を参考にしなければ、ドルが中長期的にどこまで上がり、一方でどこまで下がるか、常識的な判断をするのは困難でしょう。

たとえば、昨年まで個人投資家の間で大人気だった豪ドルは、対米ドル相場では2008年リーマンショック以前まで、消費者物価基準の購買力平価より豪ドル高になったことはほとんどなかったのに、リーマンショク以降は、それを大きく上回る動きとなりました≪資料4参照≫。「突然変異」ということでなければ、これは行き過ぎた豪ドル高の可能性を示しているでしょう。

≪資料4≫豪ドル米ドルの購買力平価(1973年~)

(Bloombergより作成)

購買力平価は、「資産運用としてのFX」という考え方からすると、とても重要な指標であり、長年私がFX投資家向けに情報提供する中でも、最も公開希望の多い指標の一つでした。それだけ、個人投資家にとっては比較的簡単な入手の困難な指標だったのです。

今回それを、個人投資家の皆さんがそれぞれ独自に確認できる形で公開できるようになったことは、長年抱えてきた「宿題」をようやくやり遂げた思いで、少なからず達成感を感じている次第です。(了)

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