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【アップデート】アメリカ大統領選挙ガイド2、クリントン対トランプ。為替相場への影響は?

2016年11月

最新版(2016年11月)「トランプ大統領誕生でどうなる? 為替市場の注目点は?」はこちら。

【アップデート】投票日のタイムライン

◇11月8日投票日

投票時間は州により異なる。通常は、午前6時/7時から午後7時/8時まで(アイオワ州とノースダコダ州は午後9時まで)。米国内でも時差があるので、投票時間は日本時間8日午後8時から9日午後2時ごろまで

東部の州の投票終了(日本時間9日午前9時ごろ)直後から出口調査の結果が順次明らかになり、それを基に各メディア(TV局など)が各州の結果を判定する(接戦の場合は公式結果を待つ場合もあり)。

早ければ、日本時間9日午後1時ごろに各メディアがどちらかの候補に「当確」を出す。2012年の選挙でオバマ大統領の再選が報じられたのは、日本時間7日13時半ごろ(Bloomberg日本語記事は13:50配信)。

各メディアの報道、あるいは公式の結果を受けて、両候補が勝利宣言か敗北宣言を行い、それをもって次期大統領が正式に決まる(選挙人による形式だけの投票は12月19日、新しい正副大統領の就任は2017年1月20日)。

ただし、接戦が続けば、結果が出るまでに数日〜数週間を要するケースもある(↓)。
なお、獲得選挙人が同数(269人vs269人)の場合は、下院で決選投票が行われる。現在の下院は共和党247議席、民主党186議席、空席2のため、決選投票では共和党候補が有利になる(トランプ氏に投票しない共和党議員が多くでるかもしれないが)。

◆2000年ブッシュvsゴア

フロリダ州の投票結果があまりに僅差だったため、劣勢だった民主党ゴア陣営の要請によって票の数え直しが実施された。両者の差はさらに縮まったが、手作業による数え直しに時間がかかったため、州務長官(共和党)が規定に従って数え直しの中途終了と共和党ブッシュ氏の勝利を宣言。12月12日に最高裁で州務長官の行動は正当との判断が下され、翌13日にゴア氏が敗北宣言をしたことで、ブッシュ氏の勝利が確定した。11月7日の投票日から36日後のことだった。

ブッシュ氏が獲得した選挙人は271人で、当選に必要な270人に1人を上乗せしただけだった。獲得選挙人の差はわずかに5人。フロリダ州の選挙人は25人で、同州での投票結果が逆転していれば、「ゴア大統領」が誕生するところだった。また、全米の得票率ではゴア氏がブッシュ氏をわずかながら上回っていた。

 


2016年10月 トランプ氏の「カムバック」はあるか?

9月下旬の第1回目のディベート(TV討論)でクリントン氏にあしらわれ、さらにビジネスで巨額の損失を出したために20年近くにわたって納税実績がないとのリーク記事が巷(ちまた)を賑わせるなど、トランプ氏にとって強い逆風が吹いている。各種の世論調査でも、クリントン氏にジワリと差を広げられているようだ。

劣勢に立たされたトランプ氏は、数々の失敗や苦境を乗り越えてビジネスで大成功した、そのメンタリティこそが大統領に相応しいとして、自らを「カムバック・キッド」に模した。

「カムバック・キッド」と言えば、クリントン氏だ。といっても、ヒラリーではなく、92年の大統領選挙で当選したビルの方だ。民主党の予備選で出遅れたクリントン氏は、自身の不動産投資に関する疑惑(ホワイトウォーター)や、複数の元愛人が名乗り出るといったスキャンダルに見舞われた。しかし、クリントン氏は、予備選中盤以降に挽回し、自らを「カムバック・キッド」と称した。そして、民主党の指名を獲得するとともに、本選でも見事に現職のブッシュ大統領(父)を破った。

92年にクリントン氏が当選したのは、同氏の落ち着いた態度や巧みな話術によるところが大きかったのかもしれないが、それだけではあるまい。当時は景気が低迷するなか、ブッシュ大統領に庶民の暮らしは分からないとの批判が根強かった。クリントン陣営は「It’s economy, Stupid!(問題は景気だよ、そんなこともわからないのか)」との標語を掲げて選挙に臨んだが、まさしくそれが的を射ることになったのではないか。

リーマン・ショック後の景気低迷が続くなかで、有権者が大統領に求めるものも、品格や清廉さではなく、いかに自分たちの暮らし向きを良く変えてくれるかという切実なものに一段と変わっている可能性がある。

そうだとすれば、トランプ氏が「カムバック」する可能性はあるのかもしれない。もちろん、有権者は、ビジネスで大損したトランプ氏ではなく、大成功を収めたトランプ氏に賭ける必要はあるのだが。

 


2016年9月 ネガティブ・キャンペーンの帰結

レーバーデー明けの9月6日、今後を予見させるかのように、クリントン候補は、トランプ大学に関連した不適切な献金に絡んで、トランプ候補を「詐欺師」呼ばわりした。一方で、トランプ候補も、クリントン候補を「大統領らしく見えない」と感情的に攻撃した。
9月26日には、3回予定されているディベート(討論会)の1回目が開催され、両者の直接対決が実現する(別に副大統領候補のディベートが1回)。投票日が近づくにつれて、ネガティブ・キャンペーン(中傷合戦)がどこまでエスカレートするか予測不能だ。

さて、ネガティブ・キャンペーンは、有権者を投票所から遠ざけたり、あるいは第3候補に向かわせたりするだけではない。その悪影響は、選挙が決着した後にも尾を引きそうだ。

まず、「コートテール効果」はほとんど期待できない。「コートテール(コートの裾)効果」とは、ある大統領候補が高い得票率で当選した場合に、議会選挙でも同じ政党に所属する候補の得票率を高める効果だ。その結果、大統領の議会運営は容易になる。

そうでなくとも、ネガティブ・キャンペーンは民主党と共和党との関係にも禍根を残すことになり、選挙後の協調路線は難しくなるはずだ。

さらに、新大統領には選挙戦で暴かれた「過去」が付きまとうことになり、就任早々から求心力を失うかもしれない。そして、消去法的に選ばれた新大統領のもとで、有権者や企業のマインドが劇的に改善するとも思えない。

今回の大統領選挙は、史上稀にみる「醜い」選挙になるかもしれない。

 


2016年8月 アメリカ大統領選挙ガイド2

7月下旬の民主党と共和党、それぞれの党大会で、正副大統領候補が正式に決定され、選挙公約のベースとなる党綱領が採択された。

今後、11月8日の投票日に向けて、市場でも大統領選挙への注目度が高まっていきそうだ。以下では、新大統領誕生までのスケジュールと注目点、そして両候補の政策や為替市場への影響について考察する。

今後のスケジュール

選挙キャンペーンのキックオフ:

党大会を終えて、選挙キャンペーンが正式にキックオフされた。8月は議会も夏休みで政治の動きは鈍いが、9月5日のレーバーデー明けからは選挙ムード一色となる。各候補が接戦の州(toss-up statesあるいはswing states)を中心に全米を行脚し、タウンホールミーティングなどで自身の政策を訴える。投票日までの間に正副大統領候補による複数回の討論、いわゆるディベートが開催される。それらを通して、各候補は有権者に選挙公約を訴えるが、一方で選挙公約の曖昧さや矛盾がメディアや対立候補から追及される。

本選挙の投票:

投票日は11月第1月曜日の翌火曜日に決まっており、今年は8日にあたる。得票率ではなく、選挙人の獲得数で勝負が決する

選挙人の数は、各州の連邦議員の数(上院2名、下院は人口比例制)に等しく、連邦議員のいないワシントンDCには3人の選挙人が割り当てられる。選挙人総数は上院分100人、下院分435人、DC分3人の合計538人。過半数にあたる270人以上の選挙人を獲得すれば、大統領に当選する。本選挙では、ごく一部の例外を除いてほとんどの州で「勝者総取り(winner-take-all)」方式となる。

本選挙は、大統領だけでなく、下院の全議席、上院の3分の1の議席、州知事や州議会議員の選挙が同時に行われる。さらに、各自治体レベルでの住民投票も組み合わされる。

閣僚の選択と正式就任、そして一般教書演説

勝利した候補(次期大統領)は即座に政権移行チームを組織し、新たな閣僚の選択を始める。そして、2017年1月20日に次期大統領が正式に就任して、新政権がスタートする。それまではオバマ大統領と改選前の議員が執務することになるが、任期終了が迫っていることで重要な決定はできず、レイムダックと形容される。新大統領の最初の大きなタスクが1月下旬の一般教書演説であり、やや遅れて予算教書が発表される。それらによって、新政権が目指す政策が明確に示される。

選挙戦の注目点

苦戦が避けられない共和党トランプ候補

Cook Political Reportによれば、5月下旬の段階で、23州とDCが民主党寄り(強固+公算大+傾斜)で、それらの選挙人合計は304人。23州が共和党寄りで同190人。どちらに転んでもおかしくない接戦州はわずか4州で同44人に過ぎない(ただし、接戦州がもっと多いとみる分析もある、後述)。つまり、取りこぼしさえしなければ、民主党のクリントン氏は接戦州を全て落としても選挙人の過半数(270人以上)に達する、イコール大統領に当選することが可能だ。逆に、共和党のトランプ氏が勝利するためには、全ての接戦州で勝利したうえで民主党の牙城を切り崩す必要があり、かなり「不利な戦い」と言えそうだ。

(「民主党へ傾斜」と「共和党へ傾斜」をいずれも「接戦」と再定義すると、「接戦」は13州、選挙人合計は173人となる。この場合、トランプ候補が過半数に達するためには、共和党の「強固」と「公算大」の州全てで勝ったうえで、接戦州の選挙人173人のうち106人=62%を獲得する必要がある)

議会の勢力図がどう変わるか

大統領選挙と同時に行われる議会選挙も注目される。下院の全議席と上院の1/3の議席が改選になる。現在は、民主党政権に対して、上院、下院ともに共和党が過半数の議席を有している。大統領候補の人気が高いと、議会選挙も同じ政党が躍進するというコートテール効果が期待できるが、今回は両候補ともにそこまでの人気はなさそうだ。むしろ、有権者がバランス感覚を発揮して、議会選挙では大統領と異なる政党の候補を後押しするかもしれない。

トランプ大統領が誕生し、かつ両院を共和党が押さえれば、トランプ氏の公約は実現しやすくなる。しかし、上院か下院、あるいは双方を民主党が奪還すれば、トランプ氏の公約が実現する可能性は大きく低下することになりそうだ。

「第三の旋風」は吹くか

トランプ氏が戦う相手は、クリントン氏だけではないかもしれない。実は、大統領選挙には二大政党以外からも多くの候補が出馬する。いわゆる泡沫候補だ。ただ、稀に大きな旋風を巻き起こす候補が現れることがある。

1992年には、テキサスの大富豪ロス・ペロー氏が、財政赤字削減を主張して無所属で出馬。選挙人を獲得することはできなかったが、得票率は20%近い、異例の高さだった。ロス・ペロー旋風によって、民主党クリントン候補が42.9%という低い得票率ながら、370人の選挙人を獲得して当選した。

今回、リバタリアン党からゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事緑の党から内科医のジル・スタイン氏が出馬している。Real Clear Politicsの世論調査によれば(8/1時点)、4人の戦いとなった場合の支持率は、クリントン氏42.2%、トランプ氏37.8%、ジョンソン氏7.4%、スタイン氏3.2%となっている。二大政党の候補は有権者の不支持率が高いだけに、彼ら以外の候補が突如勢いを増して台風の目となるのか、それとも泡沫候補のまま終わるのか、大いに注目したい。

リバタリアン党は政策的に民主党より共和党に近いので、ジョンソン氏が勢いを増せば、トランプ氏にとって一段と不利な状況が生まれるかもしれない。

副大統領候補の重要性

通常、副大統領候補の役割はそれほど大きくない(大統領継承順位1位である点は意識される)。ただし、両大統領候補はいずれも有権者の不支持率が高いため、支持率アップへの貢献が期待され、重要な役割を担うことになりそうだ。

共和党の副大統領候補はマイク・ペンス、インディアナ州知事。保守派でティーパーティ運動にも参加。12年間の下院議員歴を生かして、トランプ氏に欠如している政治経験を補うことができるか。また、トランプ氏と、共和党幹部や有力支援者との懸け橋となり、党を一つにまとめることができるか。

民主党の副大統領候補はティム・ケイン上院議員(バージニア州選出)。穏健派。スペイン語を話すため、ヒスパニック系からの支持が期待される。また、接戦州に分類されることもあるバージニア州で知事を務めたこともある。トランプ氏が無難な副大統領候補を選択したことで、クリントン氏も冒険する必要がなかったとされる。

両候補の政策比較

今回の大統領選は、「政策」よりも「人格」や「資質」に注目が集まっており、それらが勝負を決しかねない状況だ。そうではあるものの、政策についても比較しておきたい。

クリントン大統領なら・・

クリントン氏が大統領になれば、同じ民主党のオバマ政権の政策をある程度は引き継ぐだろう。ただし、「変化」を求める有権者を意識して、自分のカラーも打ち出すはずだ。クリントン氏は、根はリベラル派との指摘もある。社会主義者を自称するサンダース氏が予想以上に健闘した影響もあって、政策運営の軸足をかなり左寄りに置く可能性がある。企業より労働者、富裕層より中間層や貧困層、グローバルより内向きを強く意識した政策だ。

もっとも、本選挙後も議会の勢力図が変わらなければ、多数派の共和党との協調なくして、政策は前に進まない。92年に誕生したビル・クリントン政権が、その2年後の中間選挙での民主党惨敗を受けて、中道寄りの政策にシフトした事例が想起される。

トランプ大統領なら・・

トランプ氏が大統領になるとすれば、かなり不透明感が強まるだろう。それでも大きく2つのシナリオが考えられそうだ。

一つは、選挙キャンペーン中に口にしたことを次々に実行に移そうとするケースだ。大企業やウォール街(金融業界)を敵に回し、ワシントンの政治家を攻撃し、移民を排斥するような政策だ。また、中国や日本などに対して強硬な姿勢で臨むだろう。このケースでは、仮に共和党が議会を握っていても、政権と議会との協調は簡単ではないかもしれない。

もう一つは、暴言・放言の類は有権者の受けを狙って計算されたものであり、大統領就任後は現実的な政策を追求するケースだ。その場合、閣僚には優秀な実務者を配して、自身はオーガナイザーに徹するだろう。大成功した実業家として、自らのイデオロギーとは切り離して、物事を着地させることを優先する側面があるかもしれない。

後者の可能性もなくはないだろうが、少なくとも就任早々は前者の面が強く出る可能性が高そうだ。

為替市場への影響は?

どちらの政策もドル安要因となりそうだが・・

クリントン氏もトランプ氏も、TPP批判ないし反対を表明するなど、外国に配慮しない内向きの姿勢が明確であり、そのことはドルにとってマイナス材料だろう。

トランプ氏の方が主張は過激であり、また「予測不可能(unpredictable)」あるいは「制御不能(uncontrollable)」であるため、不確実性を嫌う市場からは敬遠されやすい。そのため、選挙戦においてトランプ氏が優勢であるほどドル安が進行するかもしれない。

クリントン氏も、その政策はウォール街に対する厳格な姿勢も含めて、ドルにとってプラスの材料ではなさそうだ。ただ、あくまでトランプ氏との比較において、不確実性が低い分だけ、金融市場は落ち着いた動きとなるのではないか。「トランプ大統領誕生」の目はないというだけで、ドルは上昇するかもしれない。

「トランプ大統領でドル高」のシナリオ?

ただし、「強いアメリカ」を標榜し、減税や歳出増(インフラ投資)を前面に打ち出すトランプ氏の経済政策は、1980年代の共和党レーガン政権での「レーガノミクス」に通じるものがある。そうであれば、財政赤字の拡大とインフレ抑制のための金融引締めという組み合わせは、純粋に政策効果だけならドル高の処方箋ではある(レーガノミクスでドルが高騰したために、1985年9月にドル高是正のための「プラザ合意」が生まれた)。また、米企業の海外利益に低い税率を課して国内への資金還流を促そうとする、いわばトランプ流の本国投資法は、一時的にドル買いのフローを発生させる可能性がある。

いずれにせよ、トランプ大統領の方が、為替相場のボラティリティ(変動)は大きくなりそうだ

 

(チーフアナリスト 西田明弘)

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