市場調査部レポート

重要性が高まる各国インフレ動向

2017/06/23 14:17

【相場環境】重要性が高まる各国インフレ動向
【米ドル】米ドル/円、レンジ相場主体の展開か
【ユーロ】ユーロ/米ドル、遅行スパンとDMIに要注目
【ポンド】英ポンド/円、トレンド転換の可能性も
【豪ドル】豪ドル/米ドルが0.77米ドル台に定着するには材料が必要!?
【NZドル】NZドル/米ドルは0.73米ドル台に定着できるか
【トルコリラ】トルコリラ/円は90日と200日MA間の動きが続きそう   


【相場環境】 重要性が高まる各国インフレ動向

主要国の中央銀行は極端な金融緩和策からの「出口」を模索し、あるいはすでに「出口」に向けて進みつつあります。そうしたなかで、全般にインフレ(物価上昇)が落ち着いていることが、各中央銀行が「出口」に急がない大きな理由となっています。

来週は、日米欧の物価指標が発表になります。物価指標の結果が金融政策に対する市場の見方に影響を与える可能性があり、これまで以上に注目されるところでしょう。

日本、ユーロ圏、米国の重要な物価指標(5月分)がいずれも6月30日に発表されます。

米国のPCE(個人消費支出)デフレータは、食料とエネルギーを除くコアが4月に鈍化しました。今年に入ってからの携帯電話料金の急落が主因です。そのため、FRBは「インフレ率の鈍化は一時的」と判断しているようです。他方、ダラス連銀が発表する、変動の大きい項目を除いた「PCE刈り込み平均」も、PCEコアに比べれば堅調に推移しているものの、やや鈍化がみられます(下図)。

22日時点のFFレート(政策金利)先物によれば、市場が織り込む次の利上げの確率が50%を超える、換言すれば利上げがメインシナリオになるのは来年3月です。ただし、インフレ率の鈍化が一時的であることが確認されれば、年内の利上げ観測が改めて高まるものとみられます。



8日の理事会後の会見で、ドラギECB総裁は、「基調的インフレの指標は、引き続き弱い状態にとどまっている」としたうえで、「非常に高い度合いの金融緩和がなお必要だ」と述べました。ECB内部では、QE(量的緩和)の縮小や停止を求める声が高まっており、物価指標が上振れるようであれば、ドラギ総裁がそうしたタカ派を抑えるのは難しくなるかもしれません。

ECBは、FRBや日銀と異なり、食料やエネルギーを除くコアではなく、総合物価を重視する傾向があります。ユーロ圏の消費者物価は今年に入って伸びが高まり、ECBの目標である2%に接近しました(下図)。ただ、原油価格の反発やユーロ安による物価押し上げ効果は弱まりつつあるようです。



日銀の黒田総裁は21日の講演で、「2%目標までには距離があり、強力な金融緩和推進が適切」としたうえで、「2%の物価安定目標に向けたモメンタムは維持」との自信をみせました。もっとも、日本の消費者物価コアは今年4月まで3か月連続で前年比マイナスとなっており、このままでは目標達成はかなり難しい状況です(下図)。一方で、黒田総裁の任期満了(来年4月8日)に向けて、少なくとも「出口戦略」の議論を始める必要が出てくるかもしれません。そうしたなかで、日銀が追加緩和を検討するのか、それとも現在は「時期尚早」としている「出口」に関して何らかのメッセージを発するのか、大いに注目されます。インフレ動向がそれらの判断に影響を与える可能性があります。

英国では、金融政策の判断においてインフレ動向がより重要な役割を果たすかもしれません。15日のBOE(英中銀)のMPC(金融政策委員会)では、金融政策の現状維持が決定されました。票決は5対3の僅差でした。カーニー総裁を含む利上げ慎重派は、これから本格化するブレグジット(交渉)が景気に与える悪影響を懸念しています。一方で、MPCで反対票を投じた3人の委員らの利上げ派はインフレ率が目標の2%を超えて加速していることを懸念しています。今後のインフレ動向次第ではBOE内のパワーバランスが変わる可能性もありそうです。次回6月の消費者物価は7月18日に発表されます。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、レンジ相場主体の展開か

金融マーケットのメインテーマが、「政治/地政学」から「中央銀行/金融政策」に徐々にシフトチェンジする中、テクニカルチャートで勘案する当面の米ドル/円の動きはボックス圏内での推移が想定されます。

以下、米ドル/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。

上記チャートのメルクマール(指標)をそれぞれ確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が横向きであること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) 各ボリンジャーバンドが21日MAに対して、パラレル推移となっていること、そして、4) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIの2つのラインが収斂状態となっており、またADXが右肩下がりとなっていること(上図赤丸印)から、方向性の乏しいレンジ相場主体の動きとなることが想定できます。

当面の米ドル/円の「戦略レンジ」(コアレンジ)となり得るゾーンは、21日ボリンジャーバンド・±2σライン内のゾーンを基準とする109.30-112.00円と想定します。

これからの時間帯において、上記チャートのDMI(方向性指数)が23日時点で確認できるような形状(=+DIと-DIの2つのラインが収斂し、ADXが右肩下がり継続となる状態のこと)が続く場合の「重点レンジ」(コアコアレンジ)は、21日ボリンジャーバンドの21MAから+2σライン内のゾーンを基準とする110.60-112.00円を考慮してもいいのかもしれません。<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、遅行スパンとDMIに要注目

早速ですが、以下、ユーロ/米ドル・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。



上記チャートのメルクマール(指標)をそれぞれ確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)がやや右肩下がりとなりつつあること、2) 遅行スパンがローソク足と絡み合う形状となっていること、3) 各ボリンジャーバンドが21日MAに対して、やや拡張(エクスパンション)しつつあること、4) ローソク足が分厚い青い雲(=買いの雲)の中に入り込んでいること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DI、そしてADXの3つのラインが収斂状態となっていること(上図赤丸印)から、下方硬直性を伴うレンジ相場主体の動きとなることが想定できます。

当面の米ドル/円の「戦略レンジ」(コアレンジ)となり得るゾーンは、21日ボリンジャーバンド・-2σラインから21日MAの間のゾーンを基準とする1.1110-1.1200ドルと想定します。

一方で、これからの時間帯において仮に、a) 遅行スパンがローソク足から下放れ(逆転)し、b) ローソク足が-2σラインを明確に下抜けブレークした場合は、下押し基調が強まる可能性も。

その場合は、青い雲の下辺である先行2スパン(≒1.0950ドル)までの下押しを考慮すべきでしょう。

と同時に、DMI(方向性指数)において、+DIと-DIが乖離し、ADXが右肩上がりに変化した場合は、+DIと-DIの両ラインで上方にある指標に準じたトレンドが加速することも考慮に入れておいた方がよさそうです。(※+DI>-DI:上昇トレンド、-DI>+DI:下降トレンド) <津田>


【ポンド】 英ポンド/円、トレンド転換の可能性も

早速ですが、以下、英ポンド/円・日足・スパンモデル®+21日ボリンジャーバンド+DMIをご覧ください。
 


上記チャートのメルクマール(指標)をそれぞれ確認していくと、1) 21日MA(21日移動平均線)が右肩下がりとなっていること、2) 遅行スパンがローソク足の下方に位置していること、3) ボリンジャーバンド・±2σラインが21日MAに対して、縮小(スクイーズ)しつつあること、4) ローソク足が赤い雲(=売りの雲)の下方に位置していること、そして、5) DMI(方向性指数)において、+DIと-DIがクロスし、+DI>-DIとなりつつある(上図赤丸印)ことから、トレンドの転換に向けた準備段階にあると想定できます。

上記チャートのテクニカル指標から勘案するポイントは以下の通りです。

1. ボリンジャーバンド・±2σラインが21日MAに対して収縮(スクイーズ)しているため、下降トレンドが一旦終了し、上昇トレンドへと転換する可能性がありそう。
2. DMI(方向性指数)において、+DI>-DIがさらに乖離し、ADXが右肩上がりに推移し始めた場合は、上昇トレンドのモメンタムが強まる可能性がありそう。
3. これからの時間帯において、遅行スパンがローソク足を上抜けブレークした場合(≒ローソク足の+2σライン[≒143.78円]ブレーク)は、上昇トレンドがさらに強まる可能性がありそう。

今後の英ポンド/円は、これらテクニカル指標だけではなく、ファンダメンタルズ材料(特に物価関連指標)に注意を払う必要がありそうです。<津田>


【豪ドル】 豪ドル/米ドルが0.77米ドル台に定着するには材料が必要!?

豪ドル/米ドルは先週、一時0.7630米ドルへと上昇。約2か月ぶりの高値をつけたものの、今週は反落。軟調な鉄鉱石価格に加えて、原油安が進行。資源価格の下落を背景に、豪ドルに下押し圧力が加わりました。

20日公表されたRBA(豪中銀)議事録では、RBAが賃金の伸びの鈍さや、住宅市場の過熱を背景に家計債務が高水準になっていることを懸念し、6日の会合で政策金利を据え置いたことが判明。労働市場や住宅市場の動向が、RBAの今後の金融政策の鍵を握ることが改めて示唆されたものの、市場ではあまり材料視されませんでした。

来週は、豪州の主要な経済指標がなく、豪ドルの独自材料が乏しい感があります。豪ドルは引き続き、鉄鉱石や原油など資源価格の動向に影響を受けやすい地合いになりそうです。


出所:Bloombergより作成

日足チャートをみると、豪ドル/米ドルは2016年3月以降、0.77米ドル近辺で反落する展開が続きました(*下のチャート参照)。そのため、0.77米ドルに近づく場面では利益確定売り圧力が強まりそうです。0.77米ドル台に定着するには、資源価格が反発するか、米ドルの売り材料が出てくる必要があるかもしれません。<シニアアナリスト 八代和也>

豪ドル/米ドル(日足、2016/2/12-)

出所:M2JFXチャート


【NZドル】 NZドル/米ドルは0.73米ドル台に定着できるか

RBNZは6月22日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置くことを決定しました。据え置きは4会合連続です。

声明は、前回5月11日から大きな変化はありませんでした。

[国内経済]
「NZの1-3月期のGDP成長率は予想を下回った」としたものの、「緩和的な金融政策や力強い人口増加、高水準の交易条件に支えられて、成長見通しは依然として明るい」と強調。NZ政府の2017/18年度予算案も成長見通しを支えるだろうとの見方を示しました。なお、1-3月期GDPは前期比+0.5%(6月15日発表)。RBNZは5月の金融政策報告で+0.9%と予想していました。

[NZドル]
「TWI(貿易加重指数)は、輸出商品価格の上昇に応じて5月から約3%上昇した」と指摘。「NZドルが下落すれば、貿易財部門の成長見通しのリバランスに役立つだろう」との見方を示し、前回とほぼ同じでした。

[国内インフレ]
「1-3月期の総合インフレ率の上昇は、主に貿易財インフレ、とりわけガソリンや食品価格の上昇によるもの」とし、「これらの影響は一時的」と指摘。一方で、非貿易財や賃金のインフレは依然として緩やかとしつつも、徐々に加速すると予想し、これが将来の総合インフレ率を目標中央値にもたらすだろうとしました。

[住宅市場]
「とりわけオークランドで住宅価格のインフレが一段と緩やかになっている」と指摘。住宅価格のインフレ鈍化は、住宅融資規制や貸出条件の厳格化がある程度影響しているとし、鈍化傾向は続くとの見方を示しました。一方で、需給の継続的な不均衡を考慮すると上昇が再び加速するリスクがあるともしました。

[金融政策]
「かなりの期間、緩和的になる」とし、政策金利を長期間据え置く可能性を改めて示しました。「とりわけ国際的な見通しに多くの不確実性が残っており、それに応じて政策の調整が必要になる可能性がある」とし、引き続き、追加利下げに含みを残しました。

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市場では、RBNZが来年前半にも利上げに転じるとの見方があります。今回の声明発表後、この見方に大きな変化は見られませんでした。市場の金融政策見通しを反映するOIS(翌日物金利スワップ)が6月22日時点で織り込む、RBNZが年内に利上げを行う確率は13.4%。利上げの確率は、来年2月までで18.4%、3月までで45.2%、5月までで51.7%へと上昇します。

近い将来ではないものの、利上げ観測が残存していることはNZドルにとってプラスと考えられます。NZドル/米ドルは、昨年7月以降、0.73米ドル台で反落する展開が続いてきました。0.73米ドル台に定着できるのかが目先のポイントになりそうです。<八代>

NZドル/米ドル(日足、2016/5/3-)

出所:M2JFXチャート


【トルコリラ】 トルコリラ/円は90日と200日MA間の動きが続きそう

トルコリラ/円は4月下旬以降の約2か月にわたって、おおむね90日移動平均線(MA)と200日MAの間で上下動を繰り返し(*下のチャート参照)、方向感を失っている感があります。

来週は、30日にトルコの5月貿易収支や日本の5月CPI(消費者物価指数)が発表されるものの、相場材料としてやや力不足かもしれません。

トルコリラ/円は、90日MAと200日MAの間を中心とした動きが続きそうです。90日MAより下の水準、あるいは200日MAより上の水準で定着すれば、再び方向性を持った動きになる可能性があります。6月22日時点で、90日MAは30.91円、200日MAは31.80円に位置します。<八代>

トルコリラ/円(日足、2017/2/6-)

出所:M2JFXチャート




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