市場調査部レポート

注目すべき3つの「金利差」

2018/05/18 13:17

【相場環境】注目すべき3つの「金利差」
【米ドル】米ドル/円、“半値戻しは全値戻し”を示現か
【ユーロ】ユーロ/米ドル、一旦下げ止まりの可能性も?
【NZドル】上昇するには米ドルの売り材料が必要か
【トルコリラ】TCMBの利上げ期待で下げ一服も、引き続き要注意
【南アフリカランド】SARB政策金利とS&Pの格付け発表に注目


【相場環境】 注目すべき3つの「金利差」

米国の長期金利(10年物国債利回り)が、それまで攻防を続けてきた3%を上放れしたようにみえます。今後、以下の3つの「金利差」に注目すべきでしょう。

二国間長期金利差
まず、米国とその他主要国との二国間長期金利差です。米長期金利は主要国の中では唯一3%台をつけており、「高金利」といわれた豪州やNZをも上回っています(下表)。それだけでなく、3月末以降の米長期金利の上昇幅はカナダ(と新興国)を除き最大となっており、米ドル高の背景にあったとみられます。今後、米長期金利が一段高となり、二国間金利差が拡大するようであれば、米ドルをサポートしそうです。

米長短金利差
米国の長短金利差(ここでは10年-2年)は、景気の動きに先行することで知られています。大雑把に言うと、長短金利差の縮小は景気の先行きの減速を、そして長短金利の逆転は1-2年後の景気後退入りを示唆します。一方、国債需給の悪化や外国人投資家の米国債離れといった「悪い金利上昇」の場合、主に長期金利が上昇して長短金利差が拡大すると考えられます。

米長短金利差は昨年初から縮小傾向が続いていましたが(今年2月上旬にいったん拡大)、今週に入って拡大しています。米長短金利差が目立って縮小したり、逆に目立って拡大したりせずに、長期金利と短期金利がいずれも上昇するようであれば、米ドルにとってプラスとなりそうです。

独伊長期金利差
ドイツとイタリアの長期金利差が足もとで拡大しています。イタリアの長期金利が大きく上昇しているからです。これは、イタリアで「五つ星運動」と「同盟」による連立政権が誕生する可能性が高まったからです。「五つ星」も「同盟」も反ユーロの立場をとっており、とりわけユーロ圏の緊縮財政に批判的です。また、いったん封印していたユーロ離脱の是非を問う国民投票を実施する可能性も市場では意識され始めたようです。
イタリアの財政赤字の拡大(=国債発行額の増加)やユーロ離脱が懸念されれば、イタリア国債が売られて(長期金利は上昇)、独伊長期金利差は一段と拡大し、ユーロ安の材料となる可能性があります。

<チーフエコノミスト 西田明弘>


【米ドル】 米ドル/円、“半値戻しは全値戻し”を示現か

以下、米ドル/円・日足チャート+200日MA(移動平均線)+フィボナッチについてご覧ください。


 
先週の当レポートにおいて記載した、米ドル/円の【110円の壁】。当該水準のメルクマールとして挙げた200日MA(≒110.16円)を、今週15日時点でローソク足が上抜けブレークしていることが視認できます。(上図黄色矢印)

そんな中、足もとのローソク足が直近高値H(=114.69円、2017/11/6)と同安値L(=104.58円、2018/3/23)を結ぶフィボナッチ・61.8%ライン(≒110.83円)にタッチ(or上抜け)する状態となっています。(上図青色三角印、5/18時点)

これからの時間において、ローソク足がフィボナッチ・61.8%ライン(≒110.83円)を明確に上抜けブレークした場合は、先の同・50.0%ライン超え、いわゆる“半値戻し”を示現していることからも、相場格言通り【半値戻しは全値戻し】、つまり昨年11月時高値である114円台後半レベルまでの上昇フローを想定に入れた方が良いのかもしれません。

その一方で、ここもとの米ドル高は米経済指標の強さに伴う金利高、いわゆる“良い金利上昇”の側面がある一方で、いわゆる“トランプ減税”に代表される大型財政出動の派生フローとしての「財政赤字拡大」を伴う金利高、いわゆる“悪い金利上昇”の結果としての米ドル高と捉えることも可能です。いずれにしても、足もとの米ドル高フローは金利高を背景にした上向き推移を継続しそうです。

<チーフアナリスト 津田隆光>


【ユーロ】 ユーロ/米ドル、一旦下げ止まりの可能性も?

以下、ユーロ/米ドル・週足・スパンモデル®+26週BB+パラボリック+スローストキャスティクスについてご覧ください。


 
上図チャートより、以下のようなメルクマール確認ができます。

1) 26週MA(移動平均線)が右肩上がりであること。
2) 遅行スパンがローソク足に対して絡み合う形状となっていること。
3) ローソク足の上方にパラボリック・SAR(ストップ・アンド・リバース)があること。
4) ローソク足が青色の雲(=サポート帯)の中に入り込んでいること。

以上、1)-4)より、週足レベルで見るユーロ/米ドルは、上昇トレンド期における下押し調整(=上昇一服)の時間帯であることが勘案できます。

上図チャートにおけるポイントは・・・スローストキャスティクス(以下、SS)を構成する2本の線の動向。

過去のパターン分析をしてみると、SSを構成する2本の線(%D、SD)が「売られ過ぎ」水準とされる20%ライン付近で交差した後に右肩上がりとなる【ゴールデン・クロス】となったケース(上図赤色丸印)では、その後の上昇フローの起点となっていることが見て取れます。足もとでは、当該2本の線が20%ライン近辺で交差しつつあること、また、ローソク足がBB・-2σライン(≒1.1711ドル)付近まで下落していること(いずれも上図赤色点線丸印)から、これからの時間において【ゴールデン・クロス】が示現した場合は、「一旦の下げ止まり」→「上昇トレンドの起点」となる可能性も視野に入れた方がいいのかもしれません。

<津田>


【NZドル】上昇するには米ドルの売り材料が必要か

NZドルは今週(5月14日の週)、対米ドルで約3カ月ぶり、対円で約2カ月ぶりの安値を記録しました。RBNZ(NZ中銀)の5月10日の声明や金融政策報告が引き続き、NZドルの重しとなりました。10日の声明では次の一手は利上げと利下げのいずれもあり得ることが明言され、また金融政策報告では利上げ予想時期が2月時点の来年4-6月期から同7-9月期へと1四半期後ズレしました。

足もとの為替市場は、米国の長期金利(10年債利回り)の上昇を背景に、米ドルが全般的に強含んでいます。こうした地合いに加え、NZドルには独自のマイナス材料(利下げの可能性を残し、利上げ予想時期も後ズレ)もあります。NZドルはとりわけ対米ドルで上値が重い展開になりそうです。NZドル/米ドルが上昇を続けるには、米ドルの売り材料(米長期金利が下落傾向に転じるなど)が必要かもしれません。

<シニアアナリスト 八代和也>


【トルコリラ】 TCMBの利上げ期待で下げ一服も、引き続き要注意

トルコリラは5月16日、対円や対米ドルで過去最安値を更新しました。エルドアン・トルコ大統領がTCMBの金融政策への関与を強める可能性に言及したことで、TCMBの独立性をめぐる懸念が強まったためです。エルドアン大統領は日本時間5月15日、「(6月24日の)大統領選と議会選に勝利した場合、自身が金融政策に対してより多くの責任を担うだろう」、「中銀は選挙後、大統領が発するメッセージを無視することはできなくなるだろう」と語りました。

トルコリラが対円などで過去最安値を更新した後、TCMBは声明を発表(16日)。「市場における不健全な価格形成を注意深く監視する。インフレ見通しに与える為替動向の影響を考慮したうえで、必要な措置を講じるだろう」と表明しました。TCMBの声明を受けて、市場では利上げ期待が高まり、トルコリラ安は一服しました。

先週(5月17日の週)も利上げ期待が高まる場面がありました。エルドアン・トルコ大統領が9日に経済会合を開催し、翌10日にTCMBのチェティンカヤ総裁と経済担当当局者らが会議を行ったためです。しかし、利上げ期待は11日のエルドアン大統領の「利下げが必要」との発言で後退し、トルコリラへの下落圧力は再び強まりました。エルドアン大統領から利下げを求める、あるいはTCMBの独立性への懸念を強めるような発言が新たに出てくれば、トルコリラには下落圧力が再び加わる可能性があり、注意が必要です。

TCMBが緊急会合の開催を含め、もし通貨安対応に十分と市場が受け止める幅の利上げを行えば、トルコリラの下落基調にいったん歯止めがかかる可能性もありそうです。

<八代>


【南アフリカランド】 SARB政策金利とS&Pの格付け発表に注目

5月24日にSARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。その結果が相場材料になる可能性があります。

政策金利は現行の6.50%に据え置かれそうです。南アフリカの今年3月CPI(消費者物価指数)は前年比+3.8%と、SARBのインフレ目標(3から6%)内に引き続き収まったものの、上昇率は約7年ぶりの低さを記録しました。ただ、SARBは3月の前回会合で0.25%の利下げを行ったばかりです。CPI上昇率の鈍化は利下げ余地の拡大を示唆するものの、南アフリカでは4月に付加価値税が1%(14%から15%へ)引き上げられており、その影響が今後出てくると考えられます。3月の利下げの効果を見極めるうえでも、今回は政策金利を据え置くと見られます。

今回の注目点は、会合後に行われるSARBのクガニャゴ総裁の会見で、金融政策の先行きについて新たな材料が提供されるか?になりそうです。会見では、会合で政策変更(利下げ、あるいは利上げ)を主張するメンバーがいたのか、そして経済成長やインフレに関する見解が焦点になりそうです。

5月25日のS&Pによる南アフリカの格付け発表も材料になる可能性があります。南アフリカの現在の格付けは、自国通貨建てが「BBプラス」、外貨建てが「BB」。格付け見通しはいずれも「安定的」です。格付けや格付け見通しが変化した場合、南アフリカランドは反応する可能性があります。

<八代>


= = = = = = = = = = = = = = = = =

(続きはPDFでご覧ください。)
市場調査部レポート

資産運用としてのFXを身につける!
M2J FX アカデミア

Page Top