2018/05/21 10:13今週の注目通貨(米ドル/円)= 「米金利上昇=米ドル高」はいつまで続くのか、今後の行方を考える上での鍵とは?!
◆要約◆
・予想以上の米長期金利上昇継続で、米ドル/円も1月下旬以来の一時111円。
・米ドル反発があくまで一時的なら、遅くとも6月半ばにかけて米ドルは52週MAをしっかり割れてくる見通しになる。鍵は米金利が低下に転じるか、米株が暴落再燃となるか?!
◆米ドルが111円まで反発した背景とは?
米ドル/円は、5月に入ってから続いていた109-110円中心のレンジ相場を上放れとなり、一時は1月下旬となる111円を示現しました≪資料1参照≫。そろそろ米ドル/円に方向性が出てきて、月末にかけて少なくとも米ドル高なら111円、米ドル安なら107円になりそうということは、先週まさに予想したことでしたが、私はどちらかといえば米ドル安かと思っていたところ、実際には米ドル高方向への動きとなったわけです。
≪資料1=米ドル/円の日足チャート(2018年1月-)≫
(出所:M2JFXチャート)
そんな米ドル一段高の動きは、日米長期金利(10年債利回り)差で比較的うまく説明できます≪資料2参照≫。そしてその金利差の中心となる動きは、米長期金利の上昇でした。米10年債利回りは先週3%の大台をしっかり上回り一時3.1%に達しました≪資料3参照≫。
≪資料2=米ドル/円と日米長期金利差 (2018年3月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
≪資料3=米10年債利回りの推移 (2018年1月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
このような米長期金利の上昇について、私は持続力に限度のあるものではないかと考えてきました。その一つの理由は、米10年債はすでに記録的な売り越し、つまり「売られ過ぎ」の可能性があるため、米10年債のさらなる売りに伴う価格下落、利回り上昇にも自ずと限度があるだろうということでした≪資料4参照≫。
年明け早々にも米長期金利は急騰しましたが、間もなくそれを嫌気する形で米株が暴落しました。私は今回の場合も、米金利の一段の上昇は米株暴落を再燃させるのではないかと考えています。ただ先週の米株は上げ渋る展開とはなったものの、「暴落再燃」というほどではありませんでした≪資料5参照≫。
≪資料4=投機筋の米10年債ポジション (2016年-)≫
(出所:CFTC統計より作成)
≪資料5=過去一か月のNYダウ≫
(出所:Bloomberg)
こういった背景には、米経済のファンダメンタルズの好調ということもあるのかもしれません。米GDPの「早読み」で定評のあるアトランタ連銀のGDPナウは、16日公表した最新予測で、4-6月期のGDP成長率を4.1%としました。
1-3月期に米金利が急騰し、米株が暴落するといった景気にネガティブと考えられる動きがあってなお、米景気は足元にかけて4%超の高い成長が続いているといった見方になっているわけです。この背景には、今や世界一の産油国となっている米国にとって、原油価格が70ドル前後といった高値圏で推移していることによるプラスの影響などがあるのかもしれません。
こういった中で、米長期金利上昇が続き、それと連動性の強い米ドル/円は足元で110.5円程度の52週MA(移動平均線)を小幅に上回りました≪資料6参照≫。経験的に、あくまで一時的な米ドル高に過ぎないなら、52週MAを1か月以上といった具合に長く、5%以上といった具合に大きくは上回らないのが基本です。
年明け以降の米ドル急落は、米株暴落の中で広がりました。米株安への転換で、米ドル/円も米ドル安・円高トレンドへ転換したということなら、米ドル反発はあくまで一時的であり、遅くとも6月半ばにかけて米ドルは52週MAをしっかり割れてくる見通しになりますが、果たしてどうか?(了)
≪資料6=米ドル/円と52週 MA (2000年1月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
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【マーケットViewチャンネル】
先週金曜日のマーケットViewチャンネルは、「注目すべき3つの『金利差』」です。
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