2018/03/05 09:28今週の注目通貨(米ドル/円)= トランプ課税ショック拡大なければ、米ドル下がり過ぎ修正の流れに戻る可能性も?!
◆要約◆
・根本にあるのが、独金利上昇と米ドル安の「行き過ぎ」ということなら、それの再燃には自ずと限度があり、ポテンシャルが大きいのは、行き過ぎ修正方向ではないか。
・トランプ課税ショックが一段と広がることがなければ、それ以前の米ドル下がり過ぎ修正の流れに戻る可能性もあるのではないか。
◆トランプ課税ショック前、なぜ米ドル/円は反発していたのか
米ドルは先週、対円でこの間の安値を更新し、一時105円割れ近くまで下落しました≪資料1参照≫。ではこれは新たな米ドル安・円高の始まりなのでしょうか。
≪資料1=米ドル/円の推移 (2018年1月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
ただ、米ドルの総合力を示す実効相場は、2月後半からは反発気味の展開となっていました≪資料2参照≫。それが上述のように、対円も含めて先週後半米ドル全面安再燃となったのは、トランプ米大統領による鉄鋼などへの輸入課税発言を受けて、貿易戦争への懸念から世界的な株急落再燃といったリスク回避が急拡大した影響が大きかったでしょう。
≪資料2=米ドル実効相場と90日MA (2018年1月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
以上のように見ると、トランプ課税ショックにより、それまでの米ドル反発の流れが変わったかを見極める必要があるでしょう。では、トランプ課税ショック前、なぜ米ドルは反発気味になっていたのか。
昨年末頃からの米実効相場の動きを比較的うまく説明できたのは独10年債利回りとの逆相関関係でした。その意味では、米ドルが2月後半から反発気味になったのは、独10年債利回りが低下気味になった影響が大きかったと考えられます。
ではなぜ2月後半以降、独10年債利回りは低下気味になったか。3月に入ると、イタリアやドイツなど欧州政治を巡る注目イベントが相次ぎます。こういった欧州政治リスクへの警戒から、リスク回避で独金利が低下した可能性はあったでしょう。
そういった観点からすると、これらのイベントを見極めて独金利が上下どちらに動くかは、米ドルの行方を考える上でも重要になりそうです。
それとは別に、米ドル実効相場の90日MA(移動平均線)からのかい離率を見ると、2月にかけて下がり過ぎ懸念が強くなり、その修正から米ドル反発になったと見ることもできそうです≪資料3参照≫。
≪資料3=米ドル実効相場の90日MAからのかい離率(2010年-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
要するに、欧州政治リスクへの警戒は、米ドル下がり過ぎ、独金利上がり過ぎ修正のきっかけといった意味合いが大きかったのではないかということです。根本にあるのが、独金利上昇と米ドル安の「行き過ぎ」ということなら、それの再燃には自ずと限度があり、ポテンシャルが大きいのは、行き過ぎ修正方向ということではないでしょうか。
米ドル/円の90日MAからのかい離率も、一時かなり下がり過ぎ懸念が強くなっていました≪資料4参照≫。その意味では、こちらも、米ドル実効相場と同様に、短期的には米ドル下がり過ぎ再燃の余地より、修正に伴う米ドル高・円安余地の方が基本的には大きいのではないでしょうか。
最初に述べたように、先週後半の「トランプ課税騒動」により、世界的な株急落再燃などリスク回避が急拡大となりました。ただし、先週金曜日に米株が引けにかけて持ち直すと、「トランプ大統領が関税賦課を表明したものの、厳しい保護政策にはつながらない」(2日付けブルームバーグ)との楽観論も浮上しました。トランプ課税ショックが一段と広がることがなければ、それ以前の米ドル下がり過ぎ修正の流れに戻る可能性もあるのではないでしょうか。(了)
≪資料4=米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2010年-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
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【マーケットスクウェア】
先週金曜日のマーケットスクウェアは、「欧州発のテールリスクにご用心!」です。
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