2018/01/29 09:10今週の注目通貨(米ドル/円)=「2010年以降最長の米ドル続落」は、日独金融当局の違和感表明で変わらないか?!
◆要約◆
・今回の米ドル続落は、先週までですでに「2010年以降では最長」。
・それに影響をもつ「日独金利上昇」に対して、日独当局が異例ともいえそうな違和感を表明しても、この「日独金利上昇=米ドル安」が止まらないのか、それが試される局面。
◆2010年以降最長の7週連続米ドル安はさらに続くのか?
米ドルは先週も続落し、対円では一時108円割れに迫る米ドル安となりました。この結果、「ブルームバーグのドル指数は週間ベースで7週続落と、2010年以降で最長の連続安となった」(26日付けブルームバーグ)。つまり、今回の米ドル続落は、2010年以降では最長といえそうですが、ではそれはまだ続くのか、それともさすがにそろそろ一段落するのでしょうか。
7週連続の米ドル安とは、年末から米ドル実効相場が続落しているといった意味になります。それは米10年債利回りなど、米金利が上昇傾向となったことを尻目に展開したわけですが、比較的うまく説明できるのは独10年債利回りなどの上昇と逆相関だったということです≪資料1参照≫。
≪資料1=米ドル実効相場と独10年債利回り (2017年12月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
以上のように見ると、今回の2010年以降で最長の米ドル続落は、独金利上昇を受けたユーロ高の結果といった面が大きかったようです。そうであるなら、この米ドル安がさらに続くかは、「独金利上昇=ユーロ高」が続くかを考える必要があるのではないでしょうか。
そんな「独金利上昇=ユーロ高」に対して、25日ECB会合後の記者会見で、ドラギ総裁は、「年内利上げの可能性は極めて小さい」、「ユーロは誰かのコメントのせいで上昇した面もある」などとの見方を示しました。普通に考えると、「独金利上昇=ユーロ高」への違和感を示したということではないでしょうか。
このドラギ発言後も、ユーロ高・米ドル安傾向は続いた形となりました。ただし、年内の利上げをほぼ否定するといった、かなり異例の発言を行ったにもかかわらず、米ドル総合力と連動性の強い独長期金利だけが続伸するかは引き続き大いに注目されるのではないでしょうか。
また、今年に入りそれまでの日米10年債利回り差と米ドル/円の相関係数が急低下する一方で、日本の10年債利回りと米ドル/円の相関係数は急上昇しました≪資料2参照≫。要するに、最近の米ドル安・円高傾向の展開は、「日本の長期金利上昇=円高」の影響が大きかったということです。
≪資料2= 米ドル/円の相関係数(2016年6月-)≫
(出所:トムソン・ロイターより作成)
以上からすると、先週、一旦トランプ米大統領の「強い米ドル」支持といった発言で米ドル高に戻ったものの、それが黒田日銀総裁発言をきっかけに「日本の長期金利上昇=円高」再燃となったのは、とてもわかりやすいでしょう。
ただこれに対して、「日銀のスポークスマンは、黒田総裁のコメントは今月23日に発表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した見解と変わらないと電子メールで補足。総裁の発言は、インフレ率が目標の2%に達する時期は2019年度ごろになる可能性が高いという意味だと説明した」(26日付けブルームバーグ)。
つまり、黒田発言を受けた「日本の長期金利上昇=円高」に違和感を示したということではないでしょうか。
以上をまとめてみます。最近の米ドル実効相場の下落は独金利上昇の影響が大きく、その中の米ドル安・円高は日本の金利上昇の影響が大きいといえそうですが、そんな独金利と日本の金利のさらなる上昇となった先週の動きに対して、日独金融当局はかなり異例の違和感を表明しました。
最初に述べたように、米ドルは2010年以降で最長の続落となりましたが、それに影響的な「日独金利上昇」に対して、日独当局が異例ともいえそうな違和感を表明しても、この「日独金利上昇=米ドル安」が止まらないのか、それが試される局面ではないでしょうか。(了)
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【マーケットスクウェア】
先週金曜日のマーケットスクウェアは、「米財務長官の米ドル安容認発言」です。
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