今週はこう動く! マーケット羅針盤

2015/12/14 11:05金利差の小さい通貨ペアを予想する=金融政策で説明困難なドル安、ユーロ高の理由とは?

◆要約◆
・(ドル円)=「米利上げ見通しでもドル安」は株安が影響。株の動きは中国に注目か。
・(ユーロ)=「ECB緩和強化でもユーロ高」は独長期金利急騰が影響。



(出所:買いスワップはM2J、割高安度はM2J投資判断インディケーターに基づく)

今回は金利差の小さい通貨ペアについて考えてみたいと思います。具体的にはドル円、ユーロドル、ユーロ円の3通貨ペアを取り上げます。

金利が味方にも敵にもならない通貨ペアは、価格変動リスクにより注目する必要があります。その上で、ドル円とユーロドルは、5年MA(移動平均線)からのかい離率で見た中期的な評価が対照的な状況になっています。つまり、ドル円は中期的にかなりドル割高度が高くなっているのに対し、ユーロドルは逆に中期的にはユーロ割安度が高くなっているわけです≪資料1、2参照≫。

≪資料1≫ドル円の5年移動平均線からのかい離率

(出所:Bloomberg)

≪資料2≫ユーロドルの5年移動平均線からのかい離率

(出所:Bloomberg)

こういった中にあって、ドル円は目先米利上げが注目され、一方ユーロドルはECB追加緩和の影響が注目される状況にありました。米利上げが注目される中では、ドルは割高度を拡大する可能性を普通は考えるでしょう。一方ECB金融緩和強化ならユーロは割安度を拡大する可能性を考えるのが普通でしょう。

ただ、すでに見てきたように、中期的にはドルはかなり割高度が高く、一方ユーロは割安度が高くなっていました。何かの拍子にその修正が入ったらドルは米利上げ見通しの中でも急落、一方ユーロはECB金融緩和強化にもかかわらず上がる可能性を潜在的に抱えていることを自覚する必要があるでしょう。

さて、今述べたことを実際に目の当たりにしたのが、過去2週間だったのかもしれません。米利上げ見通しが変わったわけでもないようなのに、ドルは123円から120円台へ一段安となりました。そしてその前に、ECB金融緩和強化にもかかわらずユーロは1.05→1.10ドルへ急反騰に転じました。

このように一般的に注目される材料では説明しにくい動きになったのは、それぞれきっかけはあったわけですが、それにしても基本的には中期的に行き過ぎた動きの反動が入るリスクを抱えていることの自覚の必要性を改めて確認するものだったのではないでしょうか。

このような中期的なドル割高、ユーロ割安といったことはすぐに大きく変わるものではありません。それを踏まえた上で、当面の見通しについて、改めて考えてみたいと思います。

1.ドル円=「米利上げ→中国→株→ドル円」で注目

それにしてもドル円は、米利上げが16日FOMCで行われるとの見通しに変わりない中で、なぜ先週後半から大きく反落する結果となったのでしょうか。これは、ドル円の動きに金融政策を反映する日米2年債利回り差と日経平均を重ねたグラフを比較するとわかりやすいのではないでしょうか≪資料3、4参照≫。これを見ると、この間のドル円は株との相関性が高く、その株が先週後半から急落に向かったことからドルも急落したということでしょう。

この関係がこの先も大きく変わらないなら、ドル円の行方はやはり株次第ということになるでしょう。では米利上げが行われたら株はどうなるのか。米経済は、利上げを行おうとするくらい好調ですから、利上げを吸収できるかもしれませんが、米国以外は金融緩和を続けざるを得ないほど不安な経済状況の先が多いようですから、そういったところへの影響は大丈夫でしょうか。

中でも最も注目されるのはやはり中国ではないでしょうか。その中国では、人民元の対米ドルでの下落が続き、いよいよ8月の切り下げ直後に記録した安値も割り込んできました≪資料5参照≫。実質的には当局が管理している人民元ですから、通貨安の容認、または8月に続く2度目の切り下げを織り込む動きのようにも見えます。

さて、仮に中国が人民元安政策に動くとしたら、それは米利上げに伴う中国経済悪化を回避する政策として、世界経済の観点から好感されるでしょうか、それとも8月の「人民元ショック」再燃として、再び世界同時株安のトリガーになるでしょうか。

以上のように見ると、中期的にドル割高な状況にあるドル円が、さらにドル割高拡大に向かうか、それとも割高修正でドル下落に向かうかは株の動きが鍵であり、それはまずは米利上げをにらみながら中国の状況がどうなるかが目先の焦点になるのではないでしょうか。

≪資料3≫ドル円と日米2年債利回り差

(出所:Bloomberg)

≪資料4≫ドル円と日経平均

(出所:Bloomberg)

≪資料5≫人民元ドル

(出所:Bloomberg)

2.ユーロ=独長期金利の動きに注目

次にユーロについて考えてみましょう。ユーロは上述のように、3日ECBが金融緩和強化に動いたものの、1.05ドルから一時は1.10ドルまで急反騰となりました。この動きを比較的うまく説明できるのは、米独の長期金利、2年債利回り差です≪資料6参照≫。要するに、ECB金融緩和強化でもユーロ反騰となったのは、独長期金利が急騰し、金利差ユーロ不利が急縮小したためということになるでしょう。

ユーロは対米ドルではすでに見てきたように中期的にはかなり割安となっています。2014年5月1.4ドルから今年3月1.04ドルまで、ECBの大胆な金融緩和を主な材料に大幅安になったわけですから、その結果中期的にユーロ割安になっていることは理解しやすいところです。

そんなユーロ割安がさらに拡大に向かうか、それとも修正でユーロ高になるかは、これまで見てきたことからすると独長期金利の動きが鍵になっているようです。

ところで、ユーロは中期的に割安ということに加え、足元で売り越しも大幅に拡大していました≪資料7参照≫。この間のユーロ急反発により、このユーロ「売られ過ぎ」も修正圧力が続きそうですから、それはユーロを底固く、場合によってはさらなる上昇に向かう圧力となる可能性もあるのではないでしょうか。(了)

≪資料6≫ユーロドルと米独10年債利回り差

(出所:Bloomberg)

≪資料7≫CFTC統計のユーロ・ポジション

(出所:Bloomberg)

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