今週はこう動く! マーケット羅針盤

2015/10/19 09:46高金利通貨を予想する=「資産運用のFX」の活路は「ドルストレート」なのか?!

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1.高金利通貨投資の最大の鍵は「割安な通貨」を探すこと
2.割安な通貨は「ドルストレート」で探しやすい
3.米ドル全面高がもたらした、高金利通貨が対米ドル割安という現象
4.割安の判断指標=5年MA(移動平均線)からの乖離率、購買力平価
5.「高金利+通貨高」リターン期待が拡大する分岐点は52週MA
6.まとめ

1.高金利通貨投資の最大の鍵は「割安な通貨」を探すこと

高金利通貨投資の最大の魅力は、いうまでもなく相対的に高い金利です。ただ、そんな金利というアドバンテージが吹き飛ぶほど通貨が大幅に下落すれば、もちろんトータルでも損失が発生します。

では、大幅に下落するのはどんな通貨か。基本的には「相対的に割高な通貨」は大幅に下落するリスクを抱えています。一方で、「相対的に割安な通貨」は下落リスクも限られるのが基本でしょう。

基本的に下落リスクが限られる相対的に割安な通貨なら、高い金利でトータルの利益をもたらす確率が高く、かりにトータルで損失に転落しても、利益を回復するまでの時間は比較的短くすむでしょう。以上からすると、高金利通貨投資の最大の鍵は、「相対的に割安な通貨を探す」ということになるのではないでしょうか。

2.割安な通貨は「ドルストレート」で探しやすい

では、通貨の割高、割安はどのように判断できるのか。株式投資で使われるPER(株価収益率)は、まさに割高、割安を判断する代表的な指標です。それを参考に、私が「為替版PER(株価収益率)」として公開している「FX投資判断I(インディケーター)」とは、まさに様々な角度から通貨の割高、割安の判断材料を提供することを目的としたものです。

その中でも、中長期の割高、割安を判断する上で参考にするのが5年MA(移動平均線)からの乖離率です。この5年MAからの乖離率で最近、「相対的に割安な通貨」という印象がきわめて強くなっているのは対米ドルでの豪ドルです。

豪ドルは対米ドルで2011年の1.1ドルから、最近にかけて0.7ドルまで4割近くもの大幅な下落となりました。その結果、さすがに5年MAからの乖離率でみると、1990年以降では最も割安な水準まで下落してきたのです≪資料1参照≫。

≪資料1≫豪ドル米ドルの5年移動平均線からの乖離率

(出所:Bloomberg)

では、豪ドルの対円相場はどうでしょうか。豪ドル円は、昨年11-12月には100円を上回って推移していましたが、最近にかけて一時82円まで急落しました。では、この豪ドル円の動きを、5年MAからの乖離率で見てみましょう。

豪ドル円の5年MAからの乖離率は、最近にかけて割安圏に入ってきましたが、まだそれは小幅に過ぎません≪資料2参照≫。なぜ同じ豪ドルの5年MAからの乖離率が、対米ドルと対円でこんなに割安感で大きな差になっているかといえば、もちろんドル高・円安の影響ということでしょう。

≪資料2≫豪ドル円の5年移動平均線からの乖離率

(出所:Bloomberg)

ここ数年は米ドル全面高、一方円は円安傾向が続きました。その結果、多くの通貨が米ドルに対して大幅に下落し、中にはかなり割安になっている通貨が出てきたこと、そしてそれは対円では事情が異なることは確かに理解できることでしょう。

さて、「高金利通貨投資の最大の鍵は相対的に割安な通貨を探すということ」でしたが、最近において、そんな「割安な通貨」とは、基本的に対米ドルで探しやすいということになるでしょう。対米ドル取引は「ドルストレート」と呼ばれますが、米ドル全面高が長く続いたことを受け、最近の高金利通貨投資は「ドルストレート」に妙味が増してきたようです。

3.米ドル全面高がもたらした、高金利通貨が対米ドル割安という現象

同じオセアニア通貨で豪ドルより少し金利の高いNZドルについても、5年MAからの乖離率を見てみましょう。ドルストレートは、1990年以降では3番目に割安な水準まで乖離率が拡大してきました≪資料3参照≫。一方、NZドル円の乖離率は、割高が修正されニュートラルな状況になってきたことを示しています≪資料4参照≫。

≪資料3≫NZドル米ドルの5年移動平均線からの乖離率

(出所:Bloomberg)

≪資料4≫NZドル円の5年移動平均線からの乖離率

(出所:Bloomberg)

ドルストレートの乖離率を比較すると、先に見た豪ドルよりNZドルは経験的には割安を拡大する余地はあると言えます。ただ、ドルストレートと対円を比較すると、NZドルも前者の割安感がかなり大きくなっているのがわかります。

こんなふうにドルストレートで中長期的に割安な通貨が増えているのは、もちろんここ数年の米ドル全面高を受けた結果です。米ドルはまだ円とともにきわめて金利の低い通貨でありながら長くほぼ全面高となった結果、ドルストレートにおいては米ドルより金利の高い通貨が割安になるという現象が目立ってきたわけです。

ちなみにオセアニア通貨以上の高金利通貨、南アフリカランド、トルコリラについてもドルストレートの5年MAからの乖離率を見てみましょう。ランドは2008年リーマンショック以上の割安に、そしてリラは2003年以来の割安になってきました≪資料5、6参照≫。

≪資料5≫ドルランドの5年移動平均線からの乖離率
 
(出所:Bloomberg)

≪資料6≫ドルトルコリラの5年移動平均線からの乖離率

(出所:Bloomberg)

4.割安の判断指標=5年MAからの乖離率、購買力平価

次に、5年MAからの乖離率以外で中長期の割安を判断する上で参考になる指標として購買力平価との関係を見てみましょう。絶対的に割安と判断できる指標がない以上、複数の指標によって割安を判断することは必要でしょう。

豪ドルのドルストレートは、2008年リーマンショック前後には米豪生産者物価基準の購買力平価近くまで下落しました≪資料7参照≫。その購買力平価は9月末現在で0.63ドル程度ですから、それにかなり近いところまで豪ドルは下落したといえます。

≪資料7≫豪ドル米ドルと購買力平価(PPP)

(出所:Bloomberg)

NZドルのドルストレートは、中期的な下落局面では購買力平価を10%以上も下回るまで下落するのが基本でした≪資料8参照≫。最近でも、そんな購買力平価よりまだNZドルは上回って推移しているといった意味では、中期的な下落余地はまだ要注意なのかもしれません。

≪資料8≫NZドル米ドルと消費者物価購買力平価との乖離率

(出所:Bloomberg)

5.「高金利+通貨高」リターン期待が拡大する分岐点は52週MA

ドルストレートにおいては、米ドルより金利が上回っている限りは、その通貨が大幅に下落しなければトータルでは利益が出る確率が高く、損失も比較的早く解消できる見通しになるので、通貨の割安の程度によっては比較的リスクの限定的な投資として位置付けられることが可能になるでしょう。

一方、高い金利に加えて割安の修正で通貨高になるようなら二重のプラスが見込まれるため、その場合はリターンへの期待も高くなる可能性があります。ではそれはどんなケースなのか?

ドルストレートで通貨が割安になっているということは、裏を返せば米ドルが割高になっているということです。従って米ドルが下落する、さらには米ドル割高の本格的な修正局面となれば、高金利通貨は短期的に中期的に上昇に向かう可能性が出てきます

では、それはどんなケースか。最も想像しやすいのは米国が利上げをできなくなるケースでしょう。

いずれにしても、そんな中期的な米ドル高から米ドル安への転換はどのように判断したらよいでしょうか。私が「投資判断I」で中期トレンド判断を行う際に参考になると説明してきたのは52週MAです。

例えば一時的な動きなら、経験的には52週MAを大きくブレークしない動きにとどまります。逆に52週MAを完全にブレークする場合は、中期トレンドが転換している可能性が高くなります。

例えば豪ドルのストレートドルの52週MAは、10月16日現在で0.77ドル程度です≪資料9参照≫。さきほどの説明からすると、この52週MAを豪ドルが完全にブレークするようなら、それは一時的な豪ドル反発ではなく、中期的な豪ドル高が始まっている可能性が高くなるということです。

金利が優位であることに加え、中期的な通貨高も重なることで高いリターンへの期待も広がることになるかを見極める目安の一つが52週MAということになるでしょう。

≪資料9≫豪ドル米ドルと52週移動平均線

(出所:Bloomberg)

6.まとめ
 
それにしても、たとえば豪ドルが対米ドルで大幅に下落してきたのは、代表的な資源国通貨とされる豪ドルですが、原油価格の暴落に象徴されるように資源価格が大幅に下落したこと、資源価格に影響の大きい中国経済への不安感が急拡大していること、その一方で米国は先進国で最初の利上げへの転換を模索しているといった理由があるでしょう。

こういった誰もが簡単にわかる理由があったからこそ、豪ドルは対米ドルで大幅に下落したわけで、これらの理由は一般的には当面大きく変わる見通しもなさそうです。そうであれば豪ドルの上昇にはまだ限界があり、それどころかこれまでの経験以上に下落するリスクもあるのかもしれません。

ただ、見方を変えれば、そういった中で広がってきたのが金利で有利な通貨が中期的に割安を拡大しているといった現象でした。こういった現象は過去になかったわけではなく、それらも終わりがあったわけですが、果たして今回の場合はそんな終わりがまだまだ先なのかといったことが、最終的な投資判断の鍵になるのでしょう。(了)

※当レポートは、投資や運用等の助言を行うものではありません。また、お客様に特定の商品をお勧めするものでもありません。

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