今週はこう動く! マーケット羅針盤

2015/10/05 11:1510月の為替を予想する=「黒田マジック」が試練を迎える可能性のある「真の理由」

◆要約◆
・過去1か月で株と為替の関係微妙にかい離。株高でもドル高・円安追随鈍い可能性も。
・黒田緩和での円安には米金融政策姿勢も重要。米緩和見直し中断なら「マジック」試練。


1.株と為替の関係の微妙な変化

2日発表の米9月雇用統計は、予想を大きく下回る結果となりました。これを受けて、米年内利上げ観測は大きく後退する一方で、日欧の追加緩和期待が高まっているようです。ではこういった中で、10月の為替相場がどのように展開するかについて、今回は考えてみたいと思います。

上述のように、9月米雇用統計が「ネガティブ・サプライズ」となった2日海外市場で、欧米株は最初こそ急落したものの、その後は株高へ大きく戻しました。米早期利上げ懸念の後退や日欧緩和期待を好感したということでしょうか。

この株高に連れる形で、ドル円もドル高・円安に戻しました。では、この株高・ドル高は日欧緩和期待などをにらみながらこの10月も続くのでしょうか。

ドル円と日経平均の相関関係はよく知られているところですが、この1か月ほど、両者の関係は微妙にかい離しました≪資料1、2参照≫。株価が安値を切り下げる展開が続く中で、ドル円は横這う展開が続いたのです。では、なぜドル円は株安に追随する形でドル安値を切り下げる展開にならなかったのでしょうか。

うまく説明できるか微妙ですが、これは米利上げ見通しへの反応が影響したのではないでしょうか。米金融政策を反映する2年債利回りは、9月17日のFOMCまで、年初来の高値を更新する水準での推移となっていました。結果的にこのFOMCで利上げは見送られましたが、米金利は直前まで米早期利上げを織り込む動きだったようです。

この米早期利上げを織り込む米金利の動きに対し、株は警戒から下落が続く一方で、ドルには一定の下支え材料となった結果が、両者の微妙なかい離になったのではないでしょうか≪資料3参照≫。

以上の仮説を前提にすると、今回の米雇用統計を受けて、早期利上げ観測が一段と後退したということなら、株と為替には過去1か月とは逆の影響をもたらす可能性があるのではないでしょうか。つまり、米金利低下を好感し株高になっても、ドルは米金利低下が重しとなって株高に必ずしも追随しないといった具合にならないでしょうか。

2.「黒田円安」を決める米国という「もう一つの主役」

次に、日欧追加緩和の影響を考えてみたいと思います。米国が利上げに躊躇するほど世界経済が減速しているなら、日欧は追加緩和する可能性が高く、それによって株高、そして円安、ユーロ安の結果としてドル高になるでしょうか。

今回は特に日銀の追加緩和ついて考えてみたいと思います。金利市場では、今月2回の日銀金融政策決定会合で追加緩和が決まるとの見方が増えているとされます。黒田総裁主導の過去2回の金融緩和では、その後1か月余りで約10円の円安となりましたが、では「黒田緩和3」なら120→130円へ円安が進むきっかけになるでしょうか

黒田緩和の円安への影響の考え方について、日米の中央銀行の供給する資金、マネタリーベースの差とドル円の関係に注目する「ソロスチャート」という方法がありますが、それを使ってもじつは二つの解釈が可能です。

例えば、黒田緩和が始まった2013年からの両者の関係を見ると、日米マネタリーベース比率は130円超のドル高・円安を示唆する拡大となっているので、黒田緩和で円安になった印象があります≪資料4参照≫。

ただ、このソロスチャートをもっと長く遡ってみると、現在の日米マネタリーベース比率は2008年頃の水準に戻ったに過ぎません≪資料5参照≫。この2008年のドル円は90-110円中心での推移だったので、それを考えると、現在のドル高・円安は日米マネタリーベース比率よりかなり行き過ぎた動きになっているといった評価になります。

2013年の黒田緩和登場以前と以後での大きな違いの一つは、米金融政策のスタンスでしょう。2013年後半から、FRBは量的緩和縮小で超金融緩和見直しに動きました。日米マネタリーベース比率のドル高・円安示唆には、米国サイドの影響も大きかったことでしょう。

さて、この数か月のマーケットは、黒田総裁登場以前、2012年以前のように不安定な展開となってきました。これは一時的なのか。それとも世界第2位の経済大国、中国バブル破裂懸念なども広がる中で、2013年から展開してきた米超金融緩和見直しを中断せざるをえないものになるのか。

もしも後者のようになるなら、黒田緩和通りに円安、株高になるといった「黒田マジック」はそれでも通用するのでしょうか。似たような意味合いで使われる「ドラギ・マジック」とともに試練の時を迎える可能性は要注意ではないでしょうか。(了)

≪資料1≫ドル円と日経平均(2015/1〜)

(出所:Bloomberg)

≪資料2≫ドル円と日経平均(2012/1〜)

(出所:Bloomberg)

≪資料3≫ドル円と米2年債利回り
(出所:Bloomberg)

≪資料4≫ドル円と日米ベースマネー比率(2009/1〜)
 
(出所:Bloomberg)

≪資料5≫ドル円と日米ベースマネー比率(2000/1〜)
 
(出所:Bloomberg)

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