今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/05/20 17:51「オージー」はいくらまで下がるのか?

・オージーは対米ドル、円ともに消費者物価購買力平価が長期的上限、生産者物価購買力平価が下限の目安となってきた。足元は0.7-0.84ドル、50-105円。

・オージー下落の大背景は、BRICs
時代の終わり、米国の復権。
 


1.オージー安の目処を考える
 
ここ数年、FX人気ナンバー1通貨だった豪ドル、「オージー」が対米ドルで下落リスクが目立ってきました。そこで今回は、オージーが短中期的にいくらまで下落する可能性があるのか、そして下落する理由は何なのかについて考えてみたいと思います。
 
まずは≪資料1≫をご覧下さい。これはオージーの対米ドル相場と、適正価格の目安である購買力平価のグラフを重ねたものです。このように見ると、長期的には、米豪の1973年消費者物価基準の購買力平価がオージーの上限、一方1999年生産者物価基準の購買力平価が下限のそれぞれ目安になってきたことがわかるでしょう。
 
≪資料1≫「豪ドル米ドルの各種購買力平価」(1973/3〜現在)

 (出所:Bloomberg)

ところで、2008年リーマンショック前後の一時期を除き、2006年頃からオージーは消費者物価基準の購買力平価を大きく上回って推移してきました。これは、≪資料1からすると、「行き過ぎたオージー高」の可能性がありました。
 
 
 
そうであるなら、最近の対米ドルでのオージー下落は、ついにそういった「行き過ぎたオージー高」の本格的な是正が始まった可能性が注目されます。消費者物価の購買力平価は足元0.84ドル程度なので、「行き過ぎたオージー高」是正なら、その0.84ドルを割り込んでいくのが最初の大きな目標になるでしょう。
 
ちなみに、オージーの長期的な下限は、基本的に生産者物価基準の購買力平価が目安になってきたわけですが、それは足元0.7ドル程度です。その意味では、さすがに余程のことがない限り、それを下回る可能性は低いといえそうです。
 
では今度は≪資料2≫を見て、オージー円について考えてみたいと思います。このように見ると、オージー円の場合も、さっき見てきたオージーの対米ドル相場と基本的に同じで、オージーの長期的な上限は日豪の1973年消費者物価基準の購買力平価、そして下限は1999年生産者物価基準の購買力平価が目安になりそうです。
 
≪資料2≫「豪ドル円の各種購買力平価」(1973/3〜現在) 
 
(出所:Bloomberg)
 
ちなみに、この2本の購買力平価を参考にすると、長期的なオージー円の上下限は、50-105円程度になりそうです。こんなふうに見ると、最近のオージーは一時上限一杯まで上昇し、なお高値圏での推移が続いているといえそうです。
 
すでに見てきた対米ドルのように、上限を超えたオージー高ということでは、対円の場合はないわけですが、それでも安定圏の上限に近いところで依然として推移しているといった意味では、下落余地は結構ありそうです。ただ、よほどのことがない限り、50円を割り込む可能性は低そうだということも、この≪資料2≫からは指摘はできそうです。

 
 
2.なぜオージー安になったのか?
 
それにしても、なぜここに来てオージーは下落が目立ち始めたのか。それについては、会員向けブログ4月23日付け「新興国の転機と豪ドル下落」で比較的詳細に書いたので、その一部を抜粋し、再確認してみたいと思います。
 
プレミアムナイツ・セミナー講師でもご登場いただく双日総研副所長の吉崎達彦さんは、4月19日付け「溜池通信」というご自身のブログで「BRICsの時代は終わったか」というテーマを取り上げ、以下のような見解を示していました。
 
「もちろんBRICs4か国は、大きな人口と経済規模を抱えた国として、今後もそれなりの存在感を示していくことでしょう。政治的な役割も、以前に比べると大きくなっている。ただし、もはや4か国の一挙手一投足が注目されるような状況ではなくなっている」。
 
「むしろ今後の世界経済にとっては、先進国経済の復権が可能かという点が重要ではないか」。
 
ところで、シティバンクの為替ストラテジストである高島さんが、4月15日付けで書いた「フィッチ対チャイナ」と題したレポートで示した見解も、似たニュアンスを感じさせるものでした。
 
高島さんは、大手格付け会社であるフィッチが、「1999年以降では初」とされる中国の格下げを決定したことについて、以下のような認識を示していました。
 
「今回、フィッチは事実上、『中国におけるレバレッジ拡大、つまり信用拡張が行きすぎた』との判断を表明したのである」、「格付機関が新興国でのレバレッジ拡大、先進国でのデレバレッジの潮流の転換を示唆することになるか否かは大変興味深い」。
 
ではこういったことが、為替においては中長期的にどのような影響をもたらすか。それについては、吉崎さんの以下のような指摘がヒントになりそうです。
 
「新興国における『オールド・エコノミー中心』の成長が減速すると、使われる資源量は2000年代ほどではなくなる。このことは、昨今の国際商品価格の下落という現象と整合的である」。
 
新興国の台頭が、資源価格の中長期的な上昇をもたらす一因となり、同時に資源国通貨の中長期的上昇を後押ししてきた、そんなトレンドが転換に向かい始める可能性が注目されそうだということです。
 
 
「BRICs」という言葉は、ゴールドマンサックスのチーフエコノミストをつとめたJ.オニールが2001年のレポートで使ったことが最初だったとされます。そして、2003年頃から完全に定着するところとなっていったわけです。
 
ところで、≪資料1≫は、豪ドルの対米ドル相場と適正価格の目安である購買力平価を見たものです。これを見ると、リーマンショック前後の一時期をのぞき、まさに2003年頃から、豪ドルは米ドルに対して割高拡大に向かい、最近では空前の割高になっていることがわかるでしょう。
 
それは、まさに先進国の衰退、新興国の台頭、それを象徴する「BRICs」という言葉の流行と重なるわけです。そのトレンドの転換が始まりつつあるなら、それはこの空前の豪ドル割高、米ドル割安の修正が始まっているという意味になる可能性があるわけです。(了)

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