今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/04/30 14:225月の為替を予想する

◆要約◆

・ドル高・円安の連続記録最長は7
ヶ月。今回8ヶ月以上を更新しないと円安は一服に。

・円売りリードしてきた投機筋も経験的には5
月が転換期。日本の機関投資家による外貨運用拡大期待も、内外長期金利差縮小の中では時期尚早か。
 

1.円安連続の最長記録に並ぶ「アベクロ円安」
 
今日で4月も終わり、明日からは5月が始まります。そこで今回は5月の為替を予想するといったテーマで考えて見たいと思います。
 
この4月は94円程度で取引が始まったので、本日、ドルがそれを上回ると、7か月連続のドル高・円安となり、少なくとも1995年以降で私が調べたところでは、ドル高・円安連続記録の最長に並ぶことになります≪資料1≫。
 
≪資料1≫

 ただ、別な言い方をすれば、ドル高・円安が8か月以上続いたことはなく、1996年にかけてと2001年にかけての2回とも、8か月目はドル安・円高となりました。
 
ところで、実はそれはドル安・円高の連続記録でも同じです。ドル安・円高の連続記録も、これまでは7か月が最長で、8か月目はドル高・円安への転換となったのです。
 
さて、今回のドル高・円安は、昨年10月から続いてきました。当初は「安倍円安」として、そして4月から黒田日銀による「異次元緩和」の加勢を受けると「アベクロ円安」として、一気に100円の大台突破寸前まで広がりました。
 
この驚異の「アベクロ円安」なら、これまでの経験なんて通用せず、ドル高・円安の連続記録を8か月、9か月と伸ばしていくことになるのでしょうか。ただ、確かに「アベクロ円安」も驚異的ではありますが、そもそもこれまで7か月連続となったドル高・円安は、当時の感覚としては、それまでの経験では説明できない驚異的なものでした。
 
特に、1995年から1996年にかけて7か月ドル高・円安が続いたのは、「超円高」からの反転、異色の大蔵官僚、榊原英資氏が「ミスター円」と呼ばれて大活躍した「榊原円安」でした。この歴史的な円安大相場も、今から見ると7か月連続で一巡したのでした。では、「アベクロ円安」は、「榊原円安」を超えてしまうのでしょうか。


 
2.投機筋と本邦投資家の円売りを考察する
 
さて、「アベクロ円安」はドル高・円安の連続記録において「前人未到」の領域を拡大していくことになるのでしょうか。それを考える上で、誰がドル買い・円売りを行っており、それは持続するかについて考察してみたいと思います。
 
≪資料2≫はヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC統計の円ポジションです。これを見ると、昨年秋以降、投機筋の円売り越しはここ数年になかった規模を維持してきたことがわかります。投機筋が積極的な円売りに動き、それを回転よく続けたことが「アベクロ円安」を支えた一つだったといえるでしょう。
 
≪資料2≫「CFTC円ポジション」(2010/1〜2013/5/23)

(出所:Bloomberg)
 
ただ≪資料2≫でわかるように、投機筋の円売り拡大は、ここ数年4-5月で一巡するパターンが続いてきました。これは、5月末がヘッジファンドなどの中間期末になっていることから、ポジション手仕舞いが入りやすいことがあったと考えられます。
 
くわえて、ここ数年は、春を境に景気楽観論から悲観論への転換が繰り返されてきました。その中で、リスクオンからリスクオフへ、ドル買い・円売りからドル売り・円買いへの転換が繰り返されてきたということではないでしょうか。
 
最近も、景気指標が期待を裏切る結果が続き、年初の景気楽観論見直し機運が浮上しています。こうした中で、投機筋のドル買い・円売りが、ここ数年のパターン通りに、この春を境に転換する可能性は注目されるところです。
 
ところで、ここに来て、いわゆる「黒田緩和」を受けて、新年度に入った日本の機関投資家が外貨運用を拡大し、為替市場での米ドルなど外貨買いを積極化する可能性も注目されています。
 
ただ、中長期の投資家が米ドル建て運用商品への投資を考える上で目安になる日米長期金利、10年債利回り差は、確かに今年に入り、一時昨年のドル優位最長を上回るまで拡大しましたが、むしろ4月の「黒田緩和」以降は急縮小しています≪資料3、4参照≫。
 
≪資料3≫「ドル円と米-日10年債利回り」(2012/1〜現在)

(出所:Bloomberg)
 


≪資料4≫「ドル円と米-日2年債利回り」(2013/1〜現在)

(出所:Bloomberg)


 
これは「黒田緩和」以降、日本の長期金利は上昇し、一方さっき見てきたように米景気楽観論見直し機運が広がる中で、米長期金利はむしろ年初来最低水準へ低下しているためです。こういった中で、すでにこの7ヶ月で大幅に上昇した米ドルなど外貨を、日本の機関投資家が積極的に買っていくのでしょうか。
 
経験則での説明が難しい記録的な円安、それが「アベクロ円安」です。ただ同じように記録的な円安だった「榊原円安」は、7ヶ月連続で一息つくところとなりました。「アベクロ円安」だけは特別で、これまでの最長を大きく更新していくことになるか、それが試されるのがこの5月以降ということになるわけです。
 
「アベクロ円安」も、過去の記録的円安と同じように、さすがに7ヶ月程度の連続で一息ついたらその後はどうなるでしょうか。あれだけG7やG20から、為替を政策目標にしないと釘を刺されている以上、90円台での円売り介入は難しいのではないでしょうか。
 
では、もしも急激な円高が起こったら、「異次元の緩和」第二弾発動となるのでしょうか。意外に、「アベクロ円安」はそれが円高に変った時に、絶対的な阻止策を持たないといった弱みもあるのではないでしょうか。(了)

(各種資料より筆者作成)

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