今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/04/08 15:50「アベクロ円安」の行方を考える

◆要約◆

・「黒田QE
」で日米ベースマネー比率は2013年末110円、2014年末125円の円安示唆に。

・一方「黒田QE
」後、一時円金利は急上昇。円金利上昇が続く中でも、ドル高・円安がこのまま続くかが焦点。
 
 

1.日米ベースマネー比率が示唆する2013年末110円
 
黒田新日銀総裁による4月4日の最初の金融緩和決定を受けて、円安が大きく進んでいます。昨年秋の78-79円から今年2-3月にかけて96円まで一本調子で進んだ「安倍円安」から、今度は「黒田円安」が引き継ぐような構図となってきました≪資料1参照≫。そこで今回は「安倍・黒田円安」、「アベクロ円安」の行方について考えて見たいと思います。
 
≪資料1≫「ドル円」(2012/1〜現在)
 
(出所:Bloomberg)


 
「黒田円安」になっている最大の要因は、黒田新総裁が量的・質的緩和と説明した大胆な金融緩和による円安見通しの急拡大でしょう。≪資料2≫は、日米の中央銀行の資金供給量の差、ベースマネー比率とドル円の関係をグラフ化したものです。これを見ると、今回決定した日銀のベースマネー拡大計画から、2013年末には110円、2014年末には125円を超えるドル高・円安が進む見通しになっています。
 
これはあくまで、2009年以降の日米ベースマネー比率とドル円の関係を前提にした見方ですが、ちなみにさらに古く遡った両者の関係を見た場合でも、今回の決定は日米ベースマネー比率が急激にドル高・円安見通しを変化させるものだったことがわかります≪資料3参照≫。その意味では、確かに「レジームチェンジ」といっても大げさではないかもしれません。
 
≪資料2≫「ドル円とベースマネー比率」(2009/1〜2015年/1)
 
(※2013年4月以降は推定値)
(出所:Bloomberg)


 
≪資料3≫「ドル円とベースマネー比率」(1988/1〜2015年/3)

(※2013年4月以降は推定値)
(出所:Bloomberg)

 

マーケットでは、この日米ベースマネー比率の示唆する2013年末110円を、あたかも前倒しで実現するかのように、4月4日の日銀決定前の92円台から、8日には一気に98円台を記録、100円の大台突破も時間の問題といった様相になっています。では、「アベクロ円安」は、2013年末110円を前倒しで実現していくのでしょうか。

 
 
2.円金利上昇が続くかもしれない理由
 
気になる一つは、円金利の動きです。4・4、黒田サプライズ」以降、日本の2年債利回りはむしろ急上昇となりました≪資料4参照≫。この結果からすると当然ですが、日米2年債利回り差とドル円の動きは、ここ数日ほとんど逆方向に向かいました≪資料5参照≫。
 
≪資料4≫「ドル円と日2年債利回り」(2012/1〜現在)

(出所:Bloomberg)


 
≪資料5≫「ドル円と米-日2年債利回り」(2013/1〜現在)

(出所:Bloomberg)


 
黒田新総裁の大胆な金融緩和は量的緩和(QE)、つまり日銀による債券購入の拡大でした。にもかかわらずなぜ債券価格は急落、利回り急上昇となったのでしょうか。とくにそれは、日銀が新たに購入対象の年限を延長する、つまりより長期の国債を購入するとしたものの、その長期国債にもついても、4月5日、価格急落、利回り急騰という形となりました。
 
日米ベースマネー比率のドル高・円安示唆が広がっても、円金利が短中期も長期も下がらず、むしろ上がるようなら、それでもドル高・円安はこのまま進むことになるのでしょうか。
 
そこで注目されるのは、「黒田QE」でも円金利が上がる可能性はあるのかということです。ただ、米国の場合はQE後にむしろ長期金利がしばらく上昇に向かうパターンだったのです。その意味では、「黒田QE」でも、4月5日のような日本の長期金利急上昇、債券急落は一時的ではない可能性があるでしょう。
 
では、QEとは債券を購入する政策なのに、なぜ債券価格が急落、利回り上昇へ向かうきっかけになるのか。それは、QE実施前に、すでにそれを織り込む形で債券価格が上がり過ぎ、利回りが下がり過ぎる結果、その反動が入るということはあったでしょう。
 
≪資料6≫
 
(出所:Bloomberg)


 
≪資料7≫「米10年債利回りと90日移動平均線」(1991/1〜現在)

(出所:Bloomberg)


 
その観点で見ると、ちょっと気になるのは、日本の10年もの債券利回りもすでに記録的な下がり過ぎになっている可能性があるということです。≪資料6≫のように、90日移動平均線からのかい離率で見ると、最近は、1998年10月、2003年6月に匹敵するような下がり過ぎになっているようです。
 
ところで、今回と似たような形で90日線からのかい離率が記録的拡大となった1998年10月と2003年6月は、その後金利の急上昇がしばらくの間続きました≪資料7≫。その意味では、今回の場合も、「黒田QE」後に、むしろ円金利の上昇が起こる可能性は注目されるでしょう。
 
そして、もしそんなことで、金利差縮小となったら、それでも日米ベースマネー比率が示唆するように2013年末110円を前倒しで実現する「アベクロ円安」がこのままノンストップで展開することになるかが、当面の最大の焦点ではないでしょうか。(了)

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