今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/04/03 16:15「アベクロ」でドル円決定要因が変わったのか?!

昨年秋以降、78-79円から一時96円まで一気にドル高・円安となった「安倍円安」は、日米金利差での説明が難しいものとされます≪資料1≫。これは黒田新日銀総裁が大胆な金融緩和に踏み切ることを期待した動きということで、安倍総理と黒田総裁という「アベクロ」の登場でドル円の決定要因が資金供給量に変わったということなのでしょうか。
 
≪資料1≫「ドル円と米‐日2年債利回り差」(2012/1〜現在)
 
(出所:Bloomberg)
 


◆為替は資金供給量と金利のどちらで決まるのか
 
≪資料2≫は、日米の中央銀行の資金供給量の差、「ベースマネー比率」とドル円の関係を2009年以降で見たものです。この「ベースマネー比率」は、ヘッジファンドが一時、為替との関係に注目したことがあったため、ヘッジファンドの有名人、G.ソロスの名前から「ソロス・チャート」とも呼ばれます。
 
≪資料2≫「ドル円とベースマネー比率」(2009年〜現在)
 
(出所:Bloomberg)


 
≪資料2≫からは、2008年のリーマンショック以降、FRBがゼロ金利政策、そしてQE(量的緩和)に踏み切り、異例の資金供給拡大に動いたことが、その後のドル安・円高をある程度説明できそうです。
 
ただし、そんなソロス・チャートで見ても、85円を大きく超えるドル高・円安は説明できません。その意味では、一時96円までのドル高・円安となった動きは、黒田新総裁の大胆な金融緩和、「レジームチェンジ」により、ソロス・チャートが大きく変化することを先取りしたものといえるでしょう。
 
ただ、そもそもこのソロス・チャートという中央銀行の資金供給量と為替の関係は、細かい水準を考える上でどれだけ参考になるかは疑問です。≪資料3≫は1988年まで遡って両者の関係を見たものですが、そもそも2000年以前と以降では、ソロス・チャートとドル円の水準の間には連続した関係が確認できません。
 
≪資料3≫「ドル円とベースマネー比率」(1998年〜現在)

 (出所:Bloomberg)
 


以上のように見てくると、黒田新総裁の「レジームチェンジ」による日米中央銀行の資金供給量差の変化で95円のドル高・円安が正当化されるかどうかを考えるのは、そもそも無理があるのではないでしょうか。
 
ドル円と日米2年債利回り差の関係を、2013年以降で見ると≪資料4≫のようになります。
 
≪資料1≫で見たように、昨秋からの「安倍円安」の始まりで、両者の連続的相関性は大きく崩れましたが、今年に入ってからは新たな一定の相関性を回復しているようです。
 
≪資料4≫「ドル円と米-日2年債利回り差」(2013年1月〜現在)

(出所:Bloomberg)
 


ただし、そんな新たな相関性で見ても、3月以降のドル高・円安は行き過ぎで、金利差が正当化する足元のドル円は90円程度ということになりそうです。この「行き過ぎ」が、黒田新総裁への期待先取り分ということになるでしょう。
 
今回は、ソロス・チャート、資金供給量とドル円、金利とドル円の関係をそれぞれ見てきましたが、どちらも中長期的な連続的相関性では限界があります。基準をかえて、一定期間で見ることにより、その相関性はある程度参考になるということです。
 
「アベクロ」登場でドル円の決定要因が変わったということではないでしょう。短期的な為替水準の正当性を考える上での目安としては、依然として金利差の方が参考になると私は考えています。(了)

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