今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/02/25 15:12「ニュー日銀」で為替はどうなる?

◆要約◆
・日銀新体制決定で新たな円売りが一段と進むことはないのではないか。
・新体制の「最初の一手」は「買い入れ国債の期限延長」か。それで円金利が一段と低下するかが、円相場への影響を見極める鍵。
 
 
1.新総裁と円売りの関係を考える
 
日銀総裁、副総裁といった新体制が近く決定する見通しとなっています。ではそれを受けて、為替相場にどのような影響があるかについて今回は考えてみたいと思います。
 
日銀の新体制は、これまでの報道によると、新総裁が黒田東彦氏(ADB総裁、元財務官)、副総裁は岩田規久男氏(学習院大学教授)、中曽宏氏(日銀理事)が有力のようです。ではこのような顔ぶれとなったら為替へどう影響するかといえば、結論的にはこれで一段と円売りが進むということでもないのではないでしょうか
 
そもそも、この日銀新総裁については、かねてから安倍総理が持論の金融緩和路線を支持してくれる人と述べていたので、金融緩和派が選ばれることは既定路線だったでしょう。つまり金融緩和派か、反金融緩和派かということでは、そもそもなかったわけです。
 
その上で、強力な緩和派か、穏やかな緩和派か、つまり「スーパー・ハト」か「マイルド・ハト」かといった対立軸でも、すでになくなっていたのでしょう。その対立軸は、一つには今月のG7、G20までだったのではないでしょうか。
 
G20声明では、「為替レートを目標にしない」、「為替相場は市場で決まるもの」といった「反介入主義」を確認しました。一般的に当面において一番の「スーパー・ハト」政策と見なされているのは外債購入策でしょうが、ドル高・円安がすでに大幅に進んでいる中で、日銀が外貨を買うといった「擬似・為替介入」は、このG7声明で事実上見送りが決まったということでしょう。
 
今回の日銀新総裁人事が、追加緩和の強弱が争点になっていたなら、誰が新総裁になるかによって新たに円売りといったこともあったのかもしれませんが、これまで見てきたように、すでにそういった争点ではなくなっていたと思います。そうであれば、この決定を見極めて新たな円売りが進行するということではやはりないのではないでしょうか。
 
 
2.新体制の「最初の一手」は何か?
 
では、日銀新体制は、どんな追加緩和を行うのでしょうか。そのヒントは、2月19日に公表された1月22日の日銀金融政策決定会合の議事録にあったのかもしれません。この中では、「資産買い入れ基金で購入する国債の期限を、現在の満期3年までから5年までに延長する案」(日経新聞、2月20日付け)が議論されていたのです。
 
「これを受け、19日の債券市場では5年債利回りが0.130%と過去最低を記録。10年債利回りも下がり、次の一手を先取りする取引が進んでいる」(同)とされます。
 
≪資料1≫は、ドル円と日本の2年債利回りのグラフを重ねたものです。これを見ると、安倍総理の金融緩和強化発言に反応する形で円相場の下落が昨年11月以降大きく進むのを尻目に、当初、日本の2年債利回りは横ばいが続きましたが、それも年明け以降大きく変わってきたことがわかるでしょう。
 
≪資料1≫「ドル円と日2年物利回り」(2012/1〜現在)
  
(出所:Bloomberg)
 

1月22日が、世界中から注目を集める中で、日銀が2%のインフレ目標採用を決定した会合が行われた日でした。それを期待する形で、ついに日本の2年債利回りも新たな低下に向かったということでしょう。
 
ただ、そんな金利低下は、22日を境に一旦反発に転じました。2%のインフレ目標を決定したものの、いわゆる「バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト」という反応になったといえそうです。
 
ところが、すぐに金利低下が再燃すると、2月12日には0.02%まで、そして19日にも0.03%まで大幅な低下となったのです。この19日とは、上述のように1月22日の会合で、買い入れ基金で購入する国債の期限延長の議論があったことを示した議事録が公表された日でした。
 
以上のように見てくると、一つのキーワードは「買い入れ国債の期限延長」でしょう。金利市場には、1月22日の金融政策決定会合に向けて、それが決定されるとの観測があり、それで市場金利も一段の低下に向かったのでしょう。だからこそ、それが議事録公表で確認されたことで、「バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクト」の展開になったのではないでしょうか。
 
これまで見てきたことからすると、日銀新体制で行われる4月以降の会合で、最初に決定される追加緩和は、買い入れ基金で購入する国債の期限を5年まで延長することで、より国債の購入を進めるといった内容になるのではないでしょうか
 
問題は、それが一段の円売りを後押しするものなのかということです。それを判断する上では、≪資料1≫の2年債利回りなどの動きが目安になるでしょう。少なくとも、年明け以降、2年債利回りは一段の低下となり、先行していた円の下落を追認する形となりました。さらに円売りが起こるかは、2年債利回りが上述のような追加緩和決定で、一段と低下に向かうかが鍵でしょう。
 
ただ、これまでも指摘してきたように、円相場自体はかなり「スピード違反の限界」といった動きになっているようです。≪資料2≫は、円の総合力を示す実効相場の90日移動平均線からの乖離率ですが、これを見るとすでに円の総合力は、95年9月に次ぐ、「史上2番目の下がり過ぎになっています。
 
日銀新体制での追加緩和が見極められる4月以降となるまで、円の市場金利が一段と低下に向かうようなことがないようなら、いつ急激な円の下落の「息継ぎ」が入ってもおかしくない状況にあるのではないでしょうか。(了)
 
≪資料2≫

(出所:Bloomberg)

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