今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/01/28 17:17「押し目なき」ドル高・円安の理由とは?

◆要約◆
・最近にかけての「押し目なし相場」は、1995年「榊原円安」に類似した歴史的円高反転局面特有の現象か。
・短期的スピードの限界で一旦円安クライマックス局面にありそうだが、ドル反落はあくまで小幅、短期間にとどまりそう。
 

ドル高・円安は、昨年10月の78円程度からほぼ一本調子でついに90円の大台を超えてきました。とりわけ、昨年11月、安倍自民党総裁、現在の安倍総理が積極的な金融緩和発言を行う形で「旗振り役」となってからは、一段とドル高・円安に拍車がかかり、いわば「押し目待ちの押し目なし」といった言葉通りの展開が続いてきました。
 
そこで今回は、なぜこのような記録的なドル高・円安相場が展開しているかについて考えてみたいと思います。
 
1.歴史的円高の反転、「榊原円安」と「安倍円安」の類似
 
≪資料1≫は昨年以降のドル円と、日銀の金融政策を反映する日本の2年物金利のグラフを重ねたものです。これを見ると、昨年秋以降の一本調子の円の下落(ドル高・円安)に対して、日本の金利は決して大きく低下していなかったことがわかります。
 
≪資料1≫「ドル円と日2年債利回り」(2012/1〜現在)
 
(出所:Bloomberg)
 
 
大幅な円安だけを見ると、金融緩和強化への期待の結果と考えられなくありませんが、それならなぜ金利は金融緩和強化期待で低下していないのでしょうか。このように見ると、今回の大幅な円安が、金融緩和強化期待の結果かは微妙ではないでしょうか。それでは、なぜ一本調子のドル高・円安になっているのか?
 
今回のドル高・円安の最大の特徴は、「安倍円安」とも呼ばれるように、安倍総理の発言に敏感に反応する形でドル高・円安が大きく進んできたということです。さらに最近は、政治家や学者によるドル高・円安に関する具体的な目標水準も大いに注目を集めるようになってきました。そして、ドル高・円安の背中を押すような、切れ目のない政策発動。
 
このような今回のドル高・円安を巡る特徴は、1995年、「超円高」反転相場によく似ている気がします。今回に匹敵する歴史的な円高が反転に向かった1995年からのドル高・円安も、特定の人物が円高是正のリード役として「ヒーロー」視され、政治家などが具体的な目標水準発言を繰り返す中、息をもつかせぬ政策発動でドル高・円安は加速しました。
 
≪資料2≫は、そんな1995年から1996年にかけてのドル円のグラフです。ドル円は1995年4月に、G7が「ドル安を反転(リバーサル)させる」といった主旨の共同声明を発表し、同時にドル買い協調介入に出動したことから80円で大底を打って、反発に転じました。
 
≪資料2≫
 
(出所:Bloomberg)
 
ただそんなドル高・円安は2か月程度で一巡し、その後は一進一退の小康状態となりました。そんな相場が本格的なドル高・円安へ動意づくきっかけとなったのは、ある特定の人物の登場がきっかけとなりました。
 
派手な言動から「異色の大蔵官僚」とされた榊原英資氏が注目を集めた7月以降ドル高・円安は急ピッチで進み始めました。米通貨当局との親密な関係を活用したとされ、日米協調介入、金融政策の協調行動など、市場の意表をつく「サプライズ」を連発。政治家も100円、110円といったドル高・円安の具体的目標水準を発言するようになりました。
 
このような1995年からのドル高・円安を巡る動きと、今回のドル高・円安を巡る動きを比較してみたのが≪資料3≫です。「円高退治のヒーロー」が出現すると、ドル高・円安が一気に加速し、政治家の具体的目標発言などが注目を集める中で、途切れない政策発動がドル高・円安を後押ししていくといった構図は、よく似ているのではないでしょうか。
 
≪資料3≫
 
1995年からの「超円高」反転と今回で共通しているのは歴史的な円高の反転局面ということでしょう。歴史的な円高、つまり長く染み込んだ円高の記憶の中で、その反転が始まっても最初それは懐疑的な見方も少なくなく一気には進まない。
 
ただ、「ヒーロー」が出現し、歴史的な相場の転換が一般認識化されると、溜りに溜まったドル買い・円売りエネルギーが噴出する結果、理屈で説明しきれないドル高・円安がしばらく加速する。1995年に見られ、そして今回起こっている「押し目なき」ドル高・円安とは、そんな歴史的円高反転局面特有の現象ということではないでしょうか。



2.ドル高・円安はどこまで進むのか?
 
1995年の「超円高」反転のドル高・円安は、「ヒーロー」、榊原氏が注目を集めるようになった7月頃から加速し、9月中旬に100円を大きく超えたところで、最初の一休みとなりました≪資料2≫。
 
それでも、ドル反落は100円を僅かに割れたにとどまり、3か月程度のもみ合いを経たものの、年明けには再びドル高値・円安値更新の展開に向かったのでした。
 
ちなみに、1995年9月に、この「榊原円安」が一息ついたのは、円の総合力を示す実効相場の90日移動平均線からの乖離率がマイナス10%以上に拡大、短期的な円安限界に達していた局面でした≪資料4≫。その意味では、さすがに歴史的円高反転に伴うドル高・円安も、スピードの限界に達したところでは一時停止になったということでしょうか。
 
≪資料4≫を見ると、円の実効相場の乖離率は、この95年9月以来のマイナスに拡大してきたようです。その意味では、今回の歴史的円高反転に伴うドル高・円安も、短期的なスピードの限界により、最初の一休みを迎えてもおかしくないタイミングを迎えつつあるのかもしれません。
 
≪資料4≫
 
(出所:Bloomberg)

そうだとしても、1995年の例を参考にすると、ドル反落はあくまで小幅で、短期的なものにとどまるのかもしれません。では、一方でドル高・円安は今回の場合どこまで進むのか。
 
1995年80円から始まったドル高・円安は、最終的に1998年147円まで続きました。このドル高・円安が最初に問題になりかけたのは110円台前半でした。1996年は米大統領選挙年で、米自動車業界などから円安批判が出たためです。
 
次の大きなハードルは125円でした。これは、当時のクリントン政権が日米貿易摩擦開始用のためのドル安・円高誘導を開始した水準であり、摩擦の鎮静化とともに、その水準までドル高・円安に戻ることは容認するとの暗黙の了解があったようです。G7は、1997年に、まさにこの125円程度で、「ドル安の反転(リバーサル)終了」を宣言しました。
 
ところがそれでも止まらないドル高・円安は、上述のように1998年にかけて147円まで一段と進んだわけです。当時、日米の卸売物価で計算した購買力平価は145円程度だったので、そこまで戻ってドル高・円安は幕引きとなったわけです。
 
その購買力平価は、足元で95円程度です。ドル高・円安は購買力平価まで戻る動きといった意味では、今回の場合、これまで見てきた1990年代後半の「超円高」反転局面に比べるとドル高・円安の「天井」はそれほど高くはないのではないでしょうか。(了)

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