今週はこう動く! マーケット羅針盤

2013/01/07 15:022013年の為替を予想する

◆要約◆
・ドル高・円安「2年目」は過去の実績を参考にすると85-100円中心で推移する見通し。
・鍵は、欧州危機、財政の崖懸念などを受けた「異常な米金利低下」の変化。
・120円までは「普通の円安」、それを大きく超えるようなら「悪い円安」の危険。
 
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今回は、2013年の為替を予想するといったテーマで述べてみたいと思います。
 
1.異例のドル高・円安への基調転換
 
ドル円は昨年3月に84円まで、そして昨年末、今年初めにかけてはついに88円台まで大きく反発してきました。では、これでいよいよ2007年6月124円から続いてきたドル安・円高は終わり、中長期トレンドはドル高・円安へ変わったのでしょうか。
 
≪資料1≫は、そんな2007年6月からのドル円のチャートです。これを見ると、ドル安・円高トレンドが展開した中でも、ドル円が10円を大きく上回る反発となったことはこれまで何度かありました。ただ、それも一時的な動きにとどまり、再びドル円の安値更新となってきたのです。そういった一時的なドル円の反発と、昨年以降の動きは何が違うのか。
 
≪資料1≫

(出所:Bloomberg)
 

≪資料1≫は、ドル円のチャートに52週移動平均線を重ねて見ました。このように見ると、昨年以降のドル円の反発は、2007年からのドル安・円高トレンドの中では、この52週線を大きくドル円が上回ったといった点で、初めての動きだったことがわかるでしょう。ではそれはどんな意味があるのでしょうか。
 
≪資料2≫は、2000年以降のドル円のチャートに、今回と同じように52週線を大きくブレークした局面をマークしたものです。これを見ると、この現象は中長期のトレンドが転換した直後にあらわれる傾向があることがわかります。その意味では、昨年以降のドル円の反発は、ドル高・円安への中長期トレンド転換の始まりだった可能性が高そうです。

≪資料2≫

 (出所:Bloomberg)

 
それにしても、今回のドル高・円安への転換は、これまでとは異質のものではないでしょうか。≪資料3≫は、1990年以降に起こった3回のドル高・円安への基調転換について調べたものです。これに日米政策金利差のグラフを重ねて見ると、ドル高への転換は、金利差ドル優位が2%以上といった具合に大幅に開く中で起こってきたことがわかります。
 
≪資料3≫

(出所:Bloomberg)
 

日本が貿易黒字大国、経常黒字大国だった時代、為替相場は円高になるのが自然でした。この黒字を吸収し、ドル高・円安になるためには、金利差が大幅に拡大し、資本流出が拡大することが必要だったのでしょう。
 
その観点からすると、足元の日米金利差は依然としてほぼゼロです。金利差ドル優位の大幅な拡大が未だ起こっていない中でドル高・円安に転換したなら、それは過去に前例のない異例の基調転換ということになるでしょう。この背景には、経常黒字も異例の急減となるなど、「黒字大国ニッポン」が急速に変化している影響があるのでしょう≪資料4≫。
 
≪資料4≫

(出所:Bloomberg)



2.ドル高・円安「2年目」以降の基本シナリオ

昨年以降のドル高・円安が中長期のトレンド転換であるなら、この先はどんな展開になるのでしょうか。≪資料5≫は、1988年以降に起こった4回のドル高・円安トレンドについて調べたものです。これを見ると、ドル高・円安は、最短でも1年5ヶ月続き、平均では2年4ヶ月続いていました。その中でのドル上昇率は、最低でも22%、平均42%でした。
 
これを参考にすると、2011年11月75円台から始まった今回のドル高・円安は、この2013年にかけて継続し、平均シナリオで展開するなら、2014年にかけて100-110円程度になるといった見通しになるわけです。

≪資料5≫

(出所:Bloomberg)
 

ところで、この過去4回のドル高・円安の「終点」は、≪資料6≫のように日米の卸売物価で計算した購買力平価前後とほぼ重なっていました。その意味では、ドル高・円安とは、購買力平価に回帰する動きだったわけです。その購買力平価は、足元で95円程度ですから、その意味でもこのドル高・円安は95円前後に向かっていく可能性が強いと考えられます。
 
≪資料6≫
 
(出所:Bloomberg)


≪資料7≫は、購買力平価からの乖離率のグラフです。これを見ると、ドルは前回、2007年6月にかけて展開したドル高・円安局面では、購買力平価を10%以上も上ぶれました。また、1980年代前半には、20-30%も大幅に上ぶれたことがありました。
 
≪資料7≫
 
(出所:Bloomberg)

 
1980年代前半は、FRBがインフレ対策で異例の高金利政策を行ったことに伴う異例のドル高・円安でした。購買力平価を10-20%程度上回るドル高・円安は過去にも経験したことがあったわけです。
 
ここに来て、一部で、「黒字大国ニッポン」が終わり、止まらない円安「行き過ぎた円安」が始まっているのではないかといった不安も早々と出てきたようですが、以上のようなことを参考にすると、120円程度までは、過去にも経験した円安、「普通の円安」であり、それを大きく超えるようなら、「行き過ぎた円安」を懸念する必要があるのかもしれません。

 
 
3.ドル高・円安「2年目」安定化と加速の条件
 
そういった「悪い円安」を警戒する前に、2011年11月から展開してきたドル高・円安は、ドル高・円安「1年目」としてはむしろ「史上最低ペース」が続きました。≪資料8≫は、過去4回のドル高・円安トレンドにおいて、1年目にドルがどのように上昇したかを調べたものですが、今回のドル上昇ペースはつい最近まで「最低ペース」だったわけです。
 
≪資料8≫
 
(出所:Bloomberg)
 

ところが、この年末年始で88円台までドル高・円安が進んだことで、一気に「平均ペース」に追い付くところとなりました。これはどのように理解したら良いのでしょうか。
 
≪資料9≫の赤色のグラフは米金利(実質長期金利)ですが、歴史的な低水準で推移していることがわかります。このような歴史的な米金利の低下がドルの足を引っ張った形で、ドル高・円安も、この1年は「史上最低ペース」で展開してきたと考えてきました。
 
≪資料9≫

(出所:Bloomberg)

 
そうであれば、その歴史的な米金利低下の変化が、ドル高・円安トレンドの安定化、そして加速には必要でしょう。ではその歴史的な米金利低下の原因は何だったか。≪資料9≫を見る限り、それは米景気で説明できないほど異例な結果だったようです。
 
≪資料10≫は、その米金利にスペイン金利を反転させて重ねたものです。このように見ると、米景気で説明できない歴史的な米金利の低下は、欧州債務危機を象徴したスペイン金利との逆相関関係が昨年秋頃まで続いてきたことがわかるでしょう。
 
≪資料10≫
 
(出所:Bloomberg)
 

ただ、昨年秋以降は、欧州危機への懸念後退に伴うスペイン金利低下の割に、米金利は上げ渋り、両者の乖離は拡大しました。これは、いわゆる「財政の崖」を警戒した動きだったのではないでしょうか。
 
以上のように見ると、ドル高・円安の足を引っ張ってきた歴史的な米金利低下は、景気では説明できない「異常現象」であり、それをもたらしたのは第一に欧州危機、そして「財政の崖」への懸念だったと思います。
 
 
そうであれば、欧州危機が一段落の様相となり、「崖」懸念も山を越えるなら、「異常な米金利低下」が変化し、ドル高・円安トレンドの安定化、加速の条件が整うことになるでしょう。
 
≪資料11≫は、過去4回のドル高・円安トレンにおけるドル上昇が2年目以降どのように推移したかを比較したもの。これを見ると、ドル高・円安「2年目」のドル上昇率は10-30%程度で推移するのが基本でした。今回のドル高の起点を2011年11月76円とすれば、ドル高「2年目」は、85-100円を目処に展開するといったシナリオになりそうです。(了)
 
 ≪資料11≫
 
(出所:Bloomberg)

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