今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/12/12 18:55「財政の崖」と米金利上昇・ドル高のリスク

いわゆる「財政の崖」を巡る動きが大詰めを迎えています。年明けからついに「崖」から転落してしまうのか、それとも土壇場で転落は回避されるのか。いずれにしても、金融市場への影響はどうなるかについて今回は考えてみたいと思います。
 
◆株と「崖」は無関係
オバマ米大統領が再選すると、一時米株は急落に向かいましたが、最近は再選前の水準まで株価も戻してきました≪資料1≫。
 
再選直後に株急落が起こると、政権と議会のいわゆる「ねじれ現象」が変わらなかったことで、「崖」からの転落を懸念した結果との解説が一般的でしたが、それではなぜその後、元の水準まで株価は戻してきたのでしょうか。「崖」からの転落回避への期待が強まったということでしょうか。
 
≪資料1≫「NYダウ」(2012/1〜現在)

 (出所:Bloomberg)

 
株価の動きを「崖」との関係だけで説明しようとすると、そういった話になってしまうのも仕方ないかもしれません。ただ、≪資料2≫のように、そもそも昨年までも11月は株安でのスタートとなっていました。このため、今年の場合も、そんな例年通りの動きに過ぎず、基本的に「崖」とは無関係だった可能性もあったわけです。
 
≪資料2≫「NYダウ」(2008/1〜現在)

 (出所:Bloomberg)

 
≪資料2≫のように、11月は例年株安となるものの、それは感謝祭前までに一巡するパターンが繰り返されてきました。これは、ヘッジファンドの解約通告「45日前ルール」など、期末要因の影響が大きかったと見られ、今年の場合も同じ可能性が考えられるでしょう。
 
これまでのところ、NYダウは11月15日が安値で、その後はオバマ再選前の水準まで戻ってきたわけです。例年通りの動きと考えると、全く辻褄の合う結果でしょう。
 
そもそも、オバマ再選と、それに伴う「ねじれ」継続は、投票日が近付く中で可能性が高いものとの見方が一般的になっていました。それなのに、そんな予想通りの結果を確認してから、あらためて「ねじれ」継続に伴う崖からの転落への懸念が強まるというのも、冷静に考えたらおかしな話でしょう。
 
 
◆米国債「買われ過ぎ」の逆流というリスクシナリオ
 
私が言いたいのは、これまでのところ、米株は「崖」とは基本的に関係ない動きではないのかということです。では、金融市場が「崖」問題と全く無関係で動いているかといえば、そうではないでしょう。「崖」を意識した動きの一つは≪資料3≫ではないでしょうか。
 
≪資料3≫「CFTC米10年債」(2001/1〜現在)

(出所:Bloomberg)

 
この≪資料3≫は、CFTC統計による投機筋の米国債ポジションです。これを見ると、投機筋の米国債買い越しは2008年以来の20万枚という大台に乗せてきました。これは、ヘッジファンドなどが、リスク回避で安全資産の米国債購入を続けてきた結果であり、まさに「崖」への警戒が最大の理由でしょう
 
≪資料3≫を見ると、「崖」からの転落を警戒した結果、リスク回避で米国債へシフトする動きは大統領選挙の前から続いてきた結果、最近ではすでに買い越しが4年ぶりの高水準になってきたわけです。
 
2007年前後には、この買い越しは最大で60万枚にまで達したこともあったので、いよいよ「崖」から転落となると、買い越しはまだまだ一段と拡大するのでしょうか。しかし、ここ数年の買い越しは10万枚が上限で、足元はそれをすでに大きく上回っているわけです。
 
これは米国債の利回り、つまり金利水準などとの関係が考えられます。2007年前後に比べて、ここ数年の米国債利回りは大幅に低下しています。このため、リスク回避での米国債シフトも2007年前後に比べると限度があるということではないでしょうか。そうであれば、足元の金利水準などからすると、「崖」警戒の米国債買いも行き過ぎ圏に入っている可能性が考えられるわけです。
 
以上からすると、金融市場は「崖」を警戒し、米国債シフトを進めてきた結果、すでにそれは行き過ぎ圏に入っている可能性がありそうです。そうであれば、実際に「崖」から転落の可能性が強まっても、ある程度のパニックはあるでしょうが、基本的にさらなる反応には自ずと限界があるのではないでしょうか。
  
むしろ、米国債が「買われ過ぎ」になっているようですから、「崖」からの転落回避といった見通しになり、それが逆流した場合、つまり米国債売りが殺到する場合の方が、金融市場の反応としては大きくなるのではないでしょうか。それは米金利急騰、そして普通ならドル高ということになると思います。(了)

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