今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/12/03 18:2612月の為替を予想する

◆要約◆
・11月までの投機主導の円安は、背景に日銀の新貸出制度という制度的変化の影響がある。
・この円安持続の鍵は米金利大幅上昇。「財政の崖」問題楽観派の専門家の中には、12月FOMCの金融緩和強化を受けて、米金利大幅上昇が起こるがとの見方がある。
  

1.投機円売り急拡大をもたらした制度的変化
 
為替相場では11月にかけて、ドル高・円安が一段と広がりました。ではこの動きがさらに続くことになるか、それが12月の最大の焦点です。
 
11月にかけて82円台に突入したドル高・円安を主導したのは、ヘッジファンドなど投機筋のドル買い・円売りだったでしょう。≪資料1≫は、投機筋の取引を反映しているCFTC統計の円ポジションですが、11月27日現在で円売り越しは7.9万枚となり、2008年以降では初めて7万枚を大きく超える拡大となりました。
 
≪資料1≫「CFTC円ポジション」(2005/1〜2012/11/27)
 
  (出所:Bloomberg)

このように投機筋が、5年ぶりのドル買い・円売り拡大へ動いたのは、安倍自民党総裁の金融緩和強化発言などがきっかけだったでしょう。ただ、それにしても金融緩和強化はこれまでもあったことですが、今回投機筋が敏感に反応しているのはなぜでしょうか。安倍発言が過去5年間になかったほど強烈だということでしょうか。

そういう見方が一般的に多いのかもしれません。ただ、投機筋の円売りを巡る制度的な変化があったことも事実です。それは日銀が10月末に決めた新貸出制度です。これについて、11月6日付けブルームバーグの報道は以下のように解説していました。

『日銀は先月30日の金融政策決定会合で、金融機関の貸出増加額に応じて0.1%の長期固定金利で最長4年の貸し出しを行う「貸出増加を支援するための資金供給の枠組み」を決定した。資金供給の総額に上限は設けず、無制限。』

新制度により超低利で円資金を調達し、外貨で運用する円キャリー取引が増えるとの見方が出ていることについて、同理事は「結果としてそうなる可能性はある」と言明。』

改めて報道を読み直すと、5年ぶりの投機円売り拡大となっているのは、新貸出制度を受けた円キャリー取引が増えるとの見方を裏付けた結果ということになるでしょう。つまり、投機円売り拡大による今回の円一段安は、「安倍発言」の影響とともに制度的変化が背景にあるといった視点は重要ではないでしょうか。

それにしても、新たな拡大局面に入った投機筋の円売りはどこまで続くのでしょうか。≪資料1≫のように、2007年にCFTC統計の円売り越しは18万枚まで拡大したことがありました。これは日米政策金利差ドル優位が5%以上といった具合に大幅に開いていた中でドル買い・円売りが急拡大した結果でした。
 
≪資料2≫「CFTCユーロポジション」(2005/1〜2012/11/27)
 
(出所:Bloomberg)
 

一方で、金利差が必ずしも大幅に開いていなかったものの、≪資料2≫のように、ユーロ売り越しは今年一時20万枚以上に拡大しました。欧州債務危機の中で投機筋はユーロ売りのリスクテークを拡大させた結果だったわけです。
 
以上からすると、何らかの条件があれば、投機筋は主要通貨の売り越しが10万枚を大きく超えて「売られ過ぎ」拡大に動くことはありうるようです。では12月にかけてもそのような動きになるでしょうか。それはこれまで見てきたことからすると、「条件」次第ということになるでしょう。



2.米長期金利、年末2%接近という予想

ところで、上述の11月6日付けブルームバーグの記事にあった、日銀の早川理事による以下のような発言はそのヒントになるかもしれません。

『(早川理事は)「米国の長期金利は、時間軸政策や長期の債券の買い入れによって抑え込まれている傾向があり、一時期より上がってはいるが相当低い水準にあるので、経済情勢の好転がはっきりしてくれば、大幅に上がる可能性はないとは言えない」と指摘。そうした場合は、「円安も起こり得るし、日本の長期金利が上昇する可能性がある」という。』

≪資料3≫のように、ドルは今年対円での上限目安となってきた米2年物金利が示唆する水準を大きく超えた動きになっています。これが、今まで見てきた投機主導の円売りの結果ということですが、この円売りがより持続性を確かにするためには、上述の早川理事の指摘のような米金利の大幅上昇が起こることが必要でしょう。

≪資料3≫「ドル円・米2年債利回り・米日2年債利回り差」(2005/1〜現在)

 (出所:Bloomberg)


では、果たしてそんな米金利の大幅上昇が起こるのでしょうか。一つの鍵は、いわゆる「財政の崖」問題が握っているでしょう。この問題はまだまだ予断を許せませんが、ただ、この「崖」回避が年内にも決着するといった楽観的な見方をとる専門家は、年末までに現在1.6%台の米長期金利が2%に接近する可能性があると考えているようです。そんな米金利大幅上昇が起こるかが、投機円売り拡大が持続するかの鍵といえるでしょう。

≪資料4≫のように、12月のドル円値幅平均は一年で2番目に大幅となっています。その意味では、12月は「一年で2番目にドル円がよく動く月」ということです。
 
≪資料4≫
 
そんな12月は、クリスマス休暇前後は極端な薄商いとなり全く動かなくなることが普通ですから、よく動くのは12月半ばまでと、そしてクリスマス明けの年末の時期に集中します。こういったことから、12月中旬に行われる年内最後のFOMC前後は、「年内最後の波乱」となることが少なくありません。
 
さて今年の12月FOMCでは、いわゆるツイストオペが年内で終了となることから、新たに国債購入を決める、つまり9月に決定したQE3の拡大、またはQE4に動くとの見方が有力なようです。
 
ところで、これまでQE2、ツイストオペなどFOMCが金融緩和強化を決定した後は、景気回復期待から米金利は上昇に向かうことが基本でした。このため上述のように「崖」問題に楽観的な専門家は、この12月FOMCの金融緩和強化の決定も、むしろ米金利が一段と上昇に向かうきっかけになる可能性を注目しているようです。
 
ドル円の値幅は11月には4円近くまで回復してきました。「一年で2番目に大きく動く12月」に、そんな値幅拡大の動きが続くとして、その方向性は12月FOMC前後の米金利の動きが一つの鍵になりそうです。
 
 
11月までのドル高・円安の動きが、米金利上昇により12月に引き継がれるとして、かりに4円程度の値幅になるなら、81円前後をドルがサポートするようだと、3月に記録した84円台の高値更新が射程内に入ってくる計算になるわけですが、果たしてどうでしょうか?(了)

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