今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/11/05 16:28NFPサプライズの株、金利、そしてドルへの暗示

◆要約◆
・10月NFPが良かったのに米株急落となったのは、米追加緩和の可能性後退が一因。
・追加緩和の可能性後退で米金利とドルの大幅高は、いよいよ今年3月と類似した構図。

 
1.雇用統計を受けて浮上する12月追加緩和なしの思惑
 
2日発表された10月米雇用統計で、注目のNFP(非農業部門雇用者数)は前月比17万人増加と、事前予想より良い結果となりました。ところが、この日の米株NYダウは100ドル以上の大幅反落となりました。
 
なぜ、雇用統計が「ポジティブ・サプライズ」ともいえそうな結果だったのに、なぜ米株は反落したのでしょうか。雇用統計の「ポジティブ・サプライズ」を受けて、12月FOMCでの追加緩和の可能性が後退したとの思惑が影響したとの見方はあるようです。
 
FRBは現在、QE3の決定を受けてMBS(不動産担保証券)を400億ドル、そしてツイストオペで短期国債を売却する一方で長期国債を450億ドル、合計で毎月850億ドルの債券を購入していますが、ツイストオペは年内一杯で終了する予定なので、そのままなら来年1月から債券購入額は400億ドルへ半減することになるわけです。
 
このため12月FOMCでは、ツイストオペ終了後もFRBは国債の購入を新たに始めるといった追加緩和を決定するとの見方が有力でした。ところが、10月NFPが予想以上に良い結果となり、また失業率も2ヶ月連続で7%台となったことで、そういった12月追加緩和の可能性が後退したとの見方も一部で浮上したようです。
 
 
2.いよいよ今年3月の84円シナリオ再現と似た構図に
 
それにしても、このFRB追加緩和の有無は、金融市場に大きく影響するものだと思います。最も影響が注目されるのはやはり債券相場、金利でしょう。上述のように、現在FRBは毎月850億ドルの債券を購入しているわけですが、それが半減以下になるなら、需給的に債券価格下落リスク、金利上昇リスクを試す思惑が浮上するのは当然でしょう。
 
≪資料1≫のように、米金利は昨年の途中から米景気で説明できない低下が続いています。その一因はFRBの債券購入といった需給要因でしょう。それが変わるということなら、金利下がり過ぎの修正が試されるのは当然でしょう。
 
≪資料1≫「ISM製造業景況指数と米実質金利」(2002/1〜現在)
 
  (出所:Bloomberg)
 
ただ、雇用統計が発表された2日、むしろ米金利は低下気味になりました。上述のようにNYダウが100ドル以上の大幅反落となった中では金利が低下気味になったのも仕方ないでしょう。
 
実際、その米株は≪資料2≫のように、米景気で説明できる範囲を大きく超えた上昇になっている可能性がありました。それは「バブル」のようにも見えなくありません。そうであれば、追加緩和の可能性後退といった悪材料に過敏に反応するのは理解できなくもありません。
 
≪資料2≫「ISM製造業景況指数とNYダウ」(2002/1〜現在)
 
  (出所:Bloomberg)
 
ただ、そもそもなぜ最近にかけて米株が「バブル」のようになっていたかといえば、その前提は金利の下がり過ぎがあったからではないでしょうか。つまり、≪資料1≫と≪資料2≫はセットだということです。そして主従関係は、「金利下がり過ぎ→米株上がり過ぎ」ということだと思います。
 
そうであれば、2日こそは、米株大幅反落に「ビックリ」して金利低下となったものの、本来は「金利上昇→株安」といった順番が基本になるのではないでしょうか。こんなふうに、「順番」にこだわるのは、為替への影響を考える上では金利が上がるか下がるかが決定的に重要だからです。
 
今年3月にかけて84円までドル高・円安となりました。≪資料3≫のように、それは米2年物金利が0.3%を大きく超えて、0.4%近くまで大幅上昇となった局面で起こったものでした。
 
≪資料3≫「ドル円と米2年物利回りと米日2年物利回り差」(2012/1〜現在)
 
 (出所:Bloomberg)
 
 では、なぜ今年3月にかけて米2年物金利が大幅に上昇したかといえば、当時イタリア危機を主役に展開していた欧州危機が一段落したことと、そして米雇用統計改善などを受けて、ツイストオペ終了後のFRB追加緩和思惑が後退したためでした。
 
今述べたことは、スペイン危機を主役とした欧州危機一段落の可能性が出てきて、その中でツイストオペ終了後の追加緩和の思惑も後退し始めた最近の構図と良く似ているでしょう。その意味では、3月に84円までドル高・円安が広がった局面と、今回の雇用統計の結果を受けた直近の値動きが一段と似てきたのではないでしょうか。
 
まだスペイン危機も火種が完全に消えたわけではありません。そして、12月以降のFRB追加緩和についても、FRBがそもそも雇用の回復後も現行の緩和方針をしばらく続けると表明していたこともあり、やはり追加緩和の方向性に変化はないとの見方も少なくありません。
 
今週の米大統領選挙の結果を受けて、政権とFRBの関係がどうなるか、そしていわゆる「財政の崖」への対策がどうなるかなどを見極めることで、3月と同じような米金利上昇、ドル一段高になるかが決まることになるでしょう。(了)

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