今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/10/24 15:02株急落なら豪ドルも急落するのか?

最近、米株などの急落が目立っています。では普段、株価などと同じように動く傾向のある、FX投資家の人気通貨、豪ドルは大丈夫でしょうか。
 
◆米株と豪ドルの関係
≪資料1≫は今年のNYダウと豪ドル円のグラフを重ねたものです。これを見ると、両者は8月頃までは非常に良く似た動きが続いてきたことがわかります。このような相関関係が続いたままで、最近のようにNYダウ急落となったら、豪ドルも急落していた可能性が高かったでしょう。
 
ただ、幸か不幸か、両者の相関関係はこの2―3ヶ月大きく崩れていました。簡単な言い方をすると、米株一段高に豪ドルは追随しなかったわけです。ではなぜ、代表的なリスク資産である米株が上昇する動きに、代表的な資源国通貨で、相対的に高金利通貨である豪ドルが、この2-3ヶ月は追随高とならなかったのでしょうか。
 
≪資料1≫「豪ドルとNYダウ」(2012/1〜現在)
 
(出所:Bloomberg)
 
相次ぐ利下げで、豪ドルの高金利通貨としての立場が揺らいできたということはあったかもしれません。ただ、豪ドルが早々と「買われ過ぎ」になったことから、米株高にも豪ドル買いが追随できなかった影響も大きかったのではないかと私は考えてきました。
 
≪資料2≫は豪ドルのポジションですが、8月以降は買い越しが6万枚を大きく超え、一時は過去最大規模に肉迫する9万枚近くまで拡大しました。
 
そんな「買われ過ぎ」の状況のままで、米株急落などリスク回避が広がったら、やはり豪ドルは大きく売られる懸念があったかもしれません。ただ、≪資料2≫のように、この豪ドル「買われ過ぎ」は、すでに10月に入ってから大きく修正が進みました。以上のように見ると、株急落の割には、豪ドルの下落リスクは限られるのではないでしょうか
 
≪資料2≫「CFTC豪ドルポジション」(2010/1〜2012/10/16)
 
(出所:Bloomberg)
 
◆米株の暴落リスク
それにしても、株急落が一段と広がった場合はどうでしょうか。たとえば、NYダウは今月に入り13,600ドル程度から23日までに500ドル以上、3%を大きく超える反落となりました。それがさらに、13,000ドルを大きく割り込む動きに向かうことはないでしょうか。
 
≪資料3≫「ISM製造業景況指数とNYダウ」(2002/1〜現在)

(出所:Bloomberg)
 
≪資料3≫を見ると、そういった一段の株価急落シナリオもありえなくないかもしれません。これはNYダウと代表的な米景気指標のグラフを重ねたものですが、現在の1万3千ドルを大きく超えるNY株高は、米景気で説明できる範囲を大きく超えた動きといえそうです。
 
仮に、米景気で説明できる範囲までNYダウが下落するなら、1万3千ドルどころか、1万2千ドルすら大きく割り込んでいく可能性がありそうなのです。では、NYダウが1万2千ドル割れに向かうようなら、豪ドル円はどうなるでしょうか。もう一度≪資料1≫を見て見ると、豪ドルも今年の安値、75円割れ「逆戻りコース」に向かいかねないでしょう。
 
◆豪ドルの運命を決める金利
 
ただ、豪ドル円は米株だけで決まるわけではありません。むしろ今年の豪ドル円を米株以上にうまく説明できるのは日豪金利差です≪資料4≫。そんな金利との関係でいえば、豪ドルが80円を大きく割り込み、75円割れ「逆戻りコース」に向かうかは、日豪金利差の大幅な縮小、言い方をかえると豪州の金利大幅低下があるかが鍵でしょう。
 
≪資料4≫「豪ドル円と豪日金利差」(2012/1〜現在)

(出所:Bloomberg)
 
では、豪州金利は大幅に低下するのでしょうか。漠然と考えると、これまで見てきたように米株が一段と急落、かりにNYダウが1万2千ドル割れへ向かいかねないなら、それは、豪州はともかく米金利の大幅低下も不可避といった想像になるのではないでしょうか。
 
そしてもしそうなら、≪資料5≫のように、豪州も基本的に米独などと金利は水準こそ違うものの、方向性は同じようになるので、豪州金利の大幅低下も確かに要注意かもしれないという話になります。ただ、本当にそうでしょうか。
 
さっき、米株急落がまだ続くリスクがあるかもしれないと考えたのは、米景気との関係が理由でした≪資料3≫。ところで、同じく米景気と、今度は米金利との関係を見たのが≪資料6≫です。これを見ると、最近は米景気から見て米金利はかつて経験したことのないような、「異常な下がり過ぎ」になっている可能性がありそうです。
 
≪資料5≫「米独豪の10年債利回り」(2012/1〜現在)

(出所:Bloomberg)
 
≪資料6≫「ISM製造業景況指数と米実質金利」(2002/1〜現在)
 
(出所:Bloomberg)
 
その意味では、行き過ぎの修正、反動といった観点で考えると、米株に大幅下落リスクがあるのに対し、米金利は反対に大幅上昇リスクがありそうです。
 
私は、豪ドル円の先行きを考える上での鍵も基本は金利だと述べました。その金利は、豪州も米国も、基本的には同じ方向に動くわけですが、これまで見てきたことからすると、一段と上昇する可能性こそあれ、さらなる低下シナリオには疑問があると思います。そうであれば、豪ドルの急落リスクも自ずと限られるのではないでしょうか
 
◆金利は米株より欧州で決まる
もう一度、≪資料3≫をご覧下さい。最近のように、米景気で説明できる範囲を大きく超えた株高は、2008年リーマンショック前にもありました。その後株価は暴落したので、今では当時の株高は「バブル」だったと理解されています。
 
ところが、≪資料6≫を見ると、このリーマンショック前、米景気と米金利の関係は最近とは異なり、基本的に正常なものでした。この結果、バブル破裂で株価暴落、景気急悪化になると、それと連動し米金利も急激な低下となったわけです。
 
しかし、そんな米景気と米金利の関係が、今回見てきたように、リーマンショック前と最近では大きく異なるわけです。その意味では、リーマンショック後のように米株と米金利が同じ方向に動く必然性は今回必ずしもないでしょう。むしろ米株が下落しても、米金利は上がる可能性があり、そして為替は株価以上に、金利の決定力が普通は大きいのです。
 
さて、その金利は、リーマンショック前後と異なり「異常な低下」が起こっている可能性がありました。それをもたらしたのは、≪資料7≫のように、欧州債務危機との関係でしょう。その意味では、「異常な金利低下」が続くか、変わるかは欧州次第ということになります。
 
その欧州、現在の主役スペイン金利は、今年初めまで主役だったイタリア金利の動きとこれまでのところ似た動きが続いてきました≪資料8≫。その関係がまだ続くなら、スペイン金利低下はクライマックスを迎えるタイミングにありそうです。それとも、「スペインの裏切り」となってしまうのか。豪ドル円の運命も、それが最大の鍵ではないでしょうか。(了)
 
≪資料7≫「スペインと米国の10年債利回り」(2012/3〜現在)

(出所:Bloomberg)
 
≪資料8≫「伊・スペイン10年物金利の7%越え達成前後の動き」
 
※イタリアは2011年11月9日を起点に前後100営業日をグラフ化
※スペインは2012年6月18日を起点に前後100営業日をグラフ化
※共に利回り7%を突破した日を起点(0日)
(出所:Bloomberg)

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