今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/10/09 15:25「失業率サプライズ」は円安をもたらすか?

◆要約◆

・過去2
ヶ月の雇用統計の結果から、現在は経験則的に「過剰な米金融緩和」の可能性も。

・欧州などグローバル要因次第で、米ドル金利の上昇圧力が強まる可能性に注目。


・それらを見ながら、79
円を突破できるかどうかが、ドル高とドル安の重大岐路。


1.失業率7.8%とQE3の関係は「異例」

5日発表の9月米失業率は、8月の8.1%から7.8%へと大幅に低下しました。事前予想は8.2%でしたから「ポジティブ・サプライズ」ともいえるでしょう。
 
米失業率は、経験的に米国の政策金利であるFFレートと強い相関関係があります≪資料1≫。資料からは失業率が7.8%まで低下してきたことで、FFレートを2%近くへ引き上げてもおかしくないように見えます。
 
≪資料1≫「米失業率(10年移動平均)とFFレート」(1987/1〜現在)
  
  (出所:Bloomberg)
 
ただ、FRBは現行のゼロ金利政策を2015年半ばまで続ける方針をとっています。その上で9月FOMCでは量的緩和第3弾、QE3を決めました。
 
政策金利を変更する「伝統的金融政策」に対し、量的緩和は「非伝統的金融政策」と呼ばれます。≪資料1≫のように政策金利をゼロまで引き下げても失業率が悪化したことから、QE1、QE2、ツイストオペという「非伝統的金融緩和政策」を実施してきましたが、今回のQE3はかなり構図が違うようです。
 
つまり、失業率は更なる金融緩和の必要性を示唆していないどころか、むしろ利上げをしてもおかしくない状況の中にあるのに、今回QE3が行われたことになります。
 
そのQE3決定に影響したとされる8月NFP(非農業部門雇用者数)は、事前予想の前月比12万人程度の増加に対し、9.6万人の増加にとどまったことで、QE3決定を後押ししたとの声もありましたが、先週5日の発表では8月の数値を14万人増と上方修正しました。
 
エコノミストの間では、仮に最初から8月NFPが14万人増加だったとしても、9月FOMCでのQE3決定という結論は変わらなかったとの意見もあります。
 
ただ、このQE3が債券購入を無期限に続けるという強力な内容になったのは、8月NFPが予想よりも悪い結果になった影響もあったのではないかと思っています。
 
以上のことから≪資料1≫を見ると、現在は必要以上の「過剰な金融緩和」になっている可能性がありそうです。その視点で見ると≪資料2≫も理解しやすくなります。
 
これは米景気と米株の関係を比較したものですが、資料からは最近の米株高は米景気で説明できる範囲を超えた動きをしています。ただ、上述した「過剰な金融緩和」が主因ということなら辻褄が合います。

≪資料2≫「ISM製造業指数とNYダウ」(2002/1〜現在)

 (出所:Bloomberg)

では、なぜFOMCは「過剰な金融緩和」を行っているのでしょうか。
 
それについて、FOMCは「グローバル市場の下押しリスク」という表現で説明してきました。これは一般的に欧州債務危機を指した言葉だと理解されています。その意味では、欧州不安が続く中では、「過剰な緩和」は継続される可能性が高いでしょう。
 
では、その欧州不安はまだ続くのでしょうか。≪資料3≫は、現在の欧州不安の主役であるスペインとイタリア10年物金利の利回りが、直近において7%を越えた時点を起点(0日)にしたグラフです。
 
≪資料3≫「伊・スペイン10年物金利の7%越え達成前後の動き」
 
 ※イタリアは2011年11月9日を起点に前後100営業日をグラフ化
※スペインは2012年6月18日を起点に前後100営業日をグラフ化
※共に利回り7%を突破した日を起点(0日)
(出所:Bloomberg)
 
青線はイタリアを主役にした欧州危機の時のイタリア10年物金利の動きです。資料からは、スペインもイタリアも危機の時の金利の動きは、これまでのところ非常に良く似ており、それが今後も続くなら、スペインを主役とした危機も一段落へ向かうとの見通しになります。
 
話を戻すと、FOMCの金融緩和策と失業率の関係から、現在は「過剰な緩和」である可能性があります。ただ、それは欧州不安というグローバルな要因からやむをえなかったのかもしれませんが、それも落ち着いてくるようであれば、「過剰な緩和」について改めて問われることになるのではないでしょうか。
 
「過剰な緩和」ならば、その修正の動きが出てくるのが常ですから、一つには市場金利の上昇によってそれが試されるというシナリオが考えられます。仮に米ドルの市場金利が上昇すれば、基本的には米ドル高・円安を後押しする要因となります。
 
以上から今回の米雇用統計の結果は、現状の「過剰な緩和」の可能性を再認識させる意味があり、それは今後の欧州不安が落ち着いてくれば、米市場金利の上昇という形で「過剰な緩和」が修正されてくる可能性を示した意味があったのではないでしょうか。
 
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2.ドル高とドル安の重大岐路は79.1円
 
ただ、その割にドル円は9月の米雇用統計発表直後に79円台をトライしたものの、その後は反落してしまいました。なぜでしょうか。
 
79円前後というのは、現在はテクニカル的に重要な分岐点になっているからだと思います。
 
≪資料4≫のように、ドル円の120日移動平均線は足元79.1円程度で推移しております、120日線は過去ヘッジファンドなど投機筋のドル買い、ドル売りの一大転換点となってきました。
 
≪資料4≫「ドル円と120日移動平均線」(2012/1〜現在)

(出所:Bloomberg)

そして≪資料5≫は、ヘッジファンドなどの投機筋の円ポジションを示したものですが、2010年以降でドル買い・円売りが本格化し始めたタイミングは、120日線をドル円相場が本格的に上回った局面とほぼ重なっていました。
 
特に今年2〜3月にかけて、ドルが84円まで上昇した局面などは、まさにその典型でした。
 
≪資料5≫「CFTC円ポジション」(2010/1〜現在)
 
 (出所:Bloomberg)
 
このように見ると、今回の雇用統計発表後のドル買いが79円の突破に失敗して反落したのも、重要な分岐点のクリアーが未遂に終わった影響と考えられます。
 
冒頭で記したように米金利の動向を眺めつつ、かつ120日線を越えられるか否かが、ドル高・円安の本格的な再開となるかどうかの目安になるといえるのではないでしょうか。(了)

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