今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/09/10 14:24FOMCでもドル安・円高にはならない?

◆ジャクソンホールと雇用統計で何が違ったか
注目された米8月雇用統計は、失業率こそ8.1%へ低下しましたが、NFP(非農業部門就業者数)は前月比9.6万人の増加にとどまりました。これを受けて、今週のFOMCで追加緩和が決定される、量的緩和第3弾が決まる可能性も高まったとの見方が広がっています。

ただこれを受けた米金利の低下は、今のところ小幅にとどまっています。ドル円と相関性の高い米2年物金利は、前日の0.258%から0.25%の低下にとどまりました≪資料1参照≫。これは、8月31日のバーナンキFRB議長による「ジャクソンホール発言」の後、同金利が0.254%から一気に0.22%まで大幅低下となったことと比べると違いがよくわかるでしょう。
 
≪資料1≫
出所:Bloomberg

では、なぜジャクソンホールと今回の雇用統計で米2年物金利低下にこのような大きな差が出たのでしょうか。それは欧州情勢の変化の影響が大きいでしょう。

欧州債務不安の現在の代理変数となっているスペイン10年物金利は、ジャクソンホール発言があった8月31日には6.59%から6.85%へ大幅上昇となりましたが、雇用統計が発表された9月7日は6.03%から5.63%へ大幅低下となりました≪資料2参照≫。
 
≪資料2≫
出所:Bloomberg

≪資料2≫のように、この数か月、スペイン10年物金利と米10年物金利は逆相関関係が続いてきました。その意味では、ジャクソンホールの際に、1.62%から1.54%へ比較的大幅に低下した米10年物金利が、今回は1.67%から1.65%へ小幅な低下にとどまったのは、スペイン金利との逆相関関係が影響したと考えるのが普通でしょう。

そしてスペイン金利との逆相関関係からすると、米金利は下げ渋るだけでなく、むしろ大幅に上昇する可能性もありそうです。単純にこの間の関係を当てはめると、米10年物金利はむしろ2%を超えて上昇に向かう可能性があるのです。

では、そんな米金利の先行きを考える上で一つの鍵を握りそうなスペイン金利低下はまだ続くのでしょうか。≪資料3≫は、今年初めかけてイタリア危機が回避に向かった際のイタリア10年物金利の動きと、最近のスペイン10年物金利の動きを重ねたものです。
 
≪資料3≫
出所:Bloomberg

両者はこれまで基本的に似た展開が続いてきたことがわかります。この似た状況がこの先も続くなら、スペイン10年物金利は今月後半から来月にかけて一段と低下していく見通しになります。

そうであれば、この間のスペイン金利と米金利の逆相関関係に大きな変化がない限り、米金利は低下が限られ、むしろ10年物金利など長期の金利は大幅な上昇に向かう可能性がありそうです。

ところで、QE2を行ったのは2010年11月でしたが、この時も米金利はむしろ大幅上昇へ向かいました。すると、ドル円もドル高・円安へ向かうところとなったのです。これまで見てきたように今回も米金利が上昇に向かうなら、今週のFOMCでQE3など追加緩和が決まっても、ドル安・円高に振れる動きは限られ、むしろドル高・円安へ向かう可能性もあるのではないでしょうか。
 
◆FOMCの見通し
今回の雇用統計の結果を受けて、今週のFOMCで追加緩和はほぼ確実との見方が強まっているようです。QE3が実施される可能性も一段と高まったとの見方が多いようです。

ただ、米金融政策と失業率の関係からすると、2010年のQE2や2011年のツイストオペのケースと最近ではかなり違いがあります。QE2直前の失業率は9.5%、ツイストオペ直前の失業率は9.1%だったのに、今回は8.1%であり、≪資料4≫からすると、これまでの経験則からみた場合、量的緩和を強化する状況にはなさそうです。

今回のFOMCでは、ゼロ金利の継続、いわゆる「時間軸」を、現在2014年末までとしているところを、2015年以降へ延長するのはほぼ間違いないとの見方か一般的のようです。ただ、この時間軸設定に影響してきたと見られる欧州情勢はとりあえず改善に向かっています。

昨年9月、今年1月に、FOMCが「時間軸」を決定する直前、当時欧州債務不安の代理変数となっていたイタリア10年物金利は6%前後での推移となっていましたが、上述のように現在の代理変数、スペイン10年物金利は先週末には5.6%まで低下となっているわけです。

2010年11月に、QE2を実施した前後で最も顕著な動きになったのはコモディティ相場の一段高でした。それは2011年に入ってから、中東・北アフリカの民主化、「アラブの春」が広がる一因になったと理解されています。こういったこともあって、「QE2は政治的には失敗だった」との評価もあります。

今週のFOMCまで欧州情勢の安定が続くようなら、失業率などと合わせ、追加緩和に踏み切る客観的根拠は、これまで以上に強くはなさそうですが、それでも政治的に賛否両論のあるQE3に踏み切るかは大いに注目されるところではないでしょうか。(了)
 
≪資料4≫
出所:Bloomberg

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