今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/08/22 14:55ユーロの長期の見方と短期の見方

今回はユーロの相場見通しの考え方について述べてみたいと思います。
 
◆長期の見方は意外に簡単?
 
ユーロドルの中長期的な見通しについては、比較的考えやすい通貨だと思っています。要するに一段とユーロ安・ドル高になるのではないかということです。
 
ユーロは欧州統一通貨として1999年に誕生した通貨ですが、その時は1.18ドルでした。つまり、最近のように歴史的なユーロ危機とされる中でありながら、まだ誕生した水準よりユーロ高で推移しているというのは興味深いと思います。
 
同じようなことが、適正価格、購買力平価との関係でも指摘できます。ユーロドルの購買力平価は1.2ドル程度ですから、最近も依然として適正価格よりはユーロ割高となっているわけです。
 
もし本当に「歴史的なユーロ危機」なら、ユーロは記録的な割安になっていそうなところですが、上記の点から逆に割高ということなのですから、中長期的には一段と下落するといった見通しになります。
 
ところが、それがユーロ円だと全く違った話になります。1999年にユーロが誕生した時のユーロ円は132円でした。つまり最近の100円を割れたユーロは、誕生した水準より大幅なユーロ安となっているわけです。
 
ちなみにユーロ円の適正価格、購買力平価は110円です。だから、最近の実勢相場は適正価格よりユーロ割安となっているわけです。
 
こういったことから、ユーロは対ドルと対円では全く異なる「別々の顔」を持っているといった言い方を私はします。ただそれは正確ではないのかもしれません。ユーロが2つの顔を持っているのではなく、ドルと円が、それぞれユーロに映る顔が違うということかもしれません。
 
つまり、ドルが下がり過ぎで、一方円が上がり過ぎの結果、ユーロドルはユーロ高過ぎる、ユーロ円はユーロ安過ぎるということではないでしょうか。以上から、私は、対ドルとは異なり、対円のユーロは中長期的に底値圏にあるのではないかと思っているわけです。

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◆短期の「教科書」的見方への違和感
 
一方、短期のユーロの見通しは難しいものです。最近なら、9月にかけてのECBによるスペインなどの債券購入政策が成功するか、失敗するか次第といった見方が混在しているからなのでしょう。
 
ただ、私はこの「政策次第」、「景気指標次第」といった解説に強い違和感を覚えてきました。これまでの経験で、そうならなかったことも少なくなかったからです。確かに、政策や景気指標が市場から失望される結果となり、相場が下がることはあったわけですが、一方で失望される結果であっても相場が上がることもありました。
 
失望される結果が出て相場が下がるなら「教科書通り」ですが、「教科書通り」にならないことも少なくない。ということは、この「教科書」は参考にならないのではないか。
 
このように失望される結果ながら、相場が上がったのは今年1月にもありました。当時は、イタリアを主役とした欧州不安対策で、ECBはLTRO(3年物オペ)などを決定しました。
 
ただ、一時的な効果しか期待できず、最終的にはECBがFRBのような量的緩和に踏み切るまで「危機」は終わらないといった見方が基本でしたが、少なくともイタリア危機はいったんの収束に向かったのです。これは、「教科書通り」にならなかった一例ではないでしょうか。
 
では今回は「教科書通り」になるのか、ならないのか。それを考える上の基本は今回が「教科書通り」にならなかった例との類似を検証することです。そこで私は今年1月にかけての「イタリア危機」でのイタリア金利と、最近の「スペイン危機」でのスペイン金利の類似性を検証しています。
 
両者の動きが類似しているなら、今回も「教科書通り」にならない可能性があると考えます。それはECBの政策が失望される内容でも相場が上がるのか、又は相場が上がったということは本質的には希望のある内容ということなのか。そこで、後者であるECBの政策は実は「希望」ある内容かもしれないとの見込みで検証するのです。
 
短期の見通しは「簡単ではありません」。ただ一般的に「教科書」とされている考え方が機能していないのを確認することによって、この「簡単ではない短期見通し」の意味も変わってくるのではないでしょうか。(了)

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