今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/08/20 14:38欧州危機一服なら為替はどうなる?

1.ECB対策で欧州危機は一服するのか?

欧州債務危機は、7月下旬にECBドラギ総裁が「ユーロを守るために何でもする」と宣言して以来、とりあえず小康状態となっています。9月には、いよいよスペインやイタリア国債購入などのECBによる欧州危機対策も具体化される見通しですが、これで欧州債務危機は一服するのでしょうか。
 
結論からいうと、債務危機は一服するのではないかと考えています。そこで仮にそうなった場合にユーロを始め、通貨全体にどのような影響が出るかについて、今回は考えてみたいと思います。
 
≪資料1≫
出所:Bloomberg
※イタリアは2011年11月9日を起点に前後100営業日
※スペインは2012年6月18日を起点に前後100営業日
 
まずは、ECBのスペイン国債購入案などが9月にかけて具体化される中、スペインやイタリアの国債が急落して利回りが急騰する事態などが一段落し、欧州債務危機も一服するのかどうかが焦点の1つとなっていますが、私は一服するのではないかと考えています。理由を一言でいうと、一服するような時期に入っているのではないかということです。
 
≪資料1≫は、イタリア10年物金利とスペイン10年物金利が「危険ライン」とされる7%に到達した時点をゼロとして重ねたものです。これを見ると、スペインの金利が「危険ライン」を突破した前後の動きは、イタリアの金利のそれと良く似ています。今後も似た動きが続くなら、スペイン金利は一段の低下に向かう時期に入っているというわけです。

イタリア10年物金利が「危険ライン」7%を突破したのは昨年11月〜今年1月にかけての局面でした。当時のイタリアは、欧州債務危機の主役でした。現在の欧州債務危機の主役がスペインです。
 
イタリアはユーロ圏で第3位の経済大国であり、本格支援をするとなると膨大なコストが発生します。このため、ECBはLTROや3年物供給オペといった「ECB版QE」と呼ばれる政策を実施し、それをきっかけにしてイタリアを主役とした欧州債務危機は一服となったのです。
 
さて、スペインはユーロ圏で第4位の経済大国です。よって上述のECBのイタリアへ行った事例は、スペインにも同じように当てはまりそうです。膨大なコストを伴う本格支援を回避するために、「ECBサプライズ」となった点も似ています。この同じような構図が背景にある中で、債券利回りの動きが似ているのも当然なのかもしれません。
 
一部報道によると、ECBは事実上、スペインなどの国債利回りに上限を設定し、それを防衛する形での国債購入を検討しているとされます。仮に、スペイン10年物金利の5-6%を上限とし、それ以上に国債利回りが上昇(債券価格急落)しないように、ECBが債券を買うなら、場合によっては事実上の「無制限介入」となる覚悟も必要かもしれません。
 
歴史上有名な債券の「無制限介入」はFRBでしょう。第2次世界大戦後のインフレ、債券急落を阻止するために行われた政策です。ただ、当時の米国と今回のスペインでは、冷静に考えればやはり違いは大きく、財政破たんの懸念を抱えたスペイン国債の「無制限購入」は、ECBの信用を著しく悪化させかねない不安もあります。
 
以上のことから、ECBによるスペイン国債の「無制限介入」は功罪の両面は共にあるものの、結局は行われないのでしょう。しかし、実質的には「無制限」ともいえるほど、ECBはスペイン、イタリア国債を購入する準備だけは進めているのではないでしょうか。
 
ECBはSMPという政策で、すでにスペイン、イタリア国債を1400億ユーロ購入しており、それを含めてユーロ圏の国債購入残高は2100億ユーロ程度に上っています。専門家の見方では、今回のスペイン、イタリア国債購入は、5000億ユーロ前後、つまり現在の残高の2-3倍を想定しているようです。
 
仮に以上のような政策が実施されれば、スペイン、イタリア国債の急落への歯止めとなり、是正策としてはかなりインパクトがあり、かつ実効的なものになるのではないでしょうか。根底にあるのは、昨年末〜今年初めのイタリア危機と同じように、ユーロ圏第4位の経済大国への本格支援は回避するということでしょう。
 
昨年末は「ECB版QE」を行うと、イタリアの金利は急低下しました。今回は「ECB版 無制限介入」をやるのかもしれません。そうなった場合は今回のスペイン危機も一服する可能性はあると私は期待しています。

2.欧州危機一服ならドル円、ユーロはどうなる?
 
では、仮に欧州債務危機が一服すれば、為替へはどう影響するでしょうか。結論からいうと、欧州発リスクオフの一服で、先進国中心に金利大幅上昇が起こる結果、ドル高・円安が広がりやすくなるのではないでしょうか。
 
≪資料2≫のように、ドル円と相関性の高い米金利は、この数か月スペイン金利と逆相関関係で推移してきました。これまで述べてきたような形でスペイン金利が一段の低下に向かうなら、それは米金利の一段の上昇をもたらす可能性があるわけです。
 
≪資料2≫
出所:Bloomberg
 
実際、今年1月にかけて、イタリアを主役とした欧州債務危機が一服すると、2月以降の米金利は大幅上昇となり、その中でドル高・円安が大きく進んだわけですが、それに近い構図となる可能性があるかもしれません。
 
では、ユーロはどうでしょうか。≪資料3≫のように、ユーロドルは米独2年金利差と一定の相関関係にあります。この金利差は独金利が上昇する一方で米金利も上昇するため大きく、現在のユーロ劣位、ドル優位が変わることは見込まれません。
 
実際に、1月にイタリア危機が一段落した後も、金利差は大きな変化はありませんでした。ただ、金利差が大きく変わらない中で、1月から2月にかけてユーロは1.26ドルから1.35ドル近くまでユーロ高・ドル安となりました。
 
これは、ユーロキャリーと呼ばれる取引の修正が入ったことが一因だったのかもしれません。低金利とユーロ安を前提に、安く調達したユーロを売って、高い利回りの先に投資する取引をユーロキャリーと呼びますが、それが急拡大し、ユーロは空前の売り越しになっていました。
 
このユーロ売り運用からすると、独金利の上昇は調達コストの悪化となるため、調達資金を返済するためのユーロ買い戻しが必要になったと考えられます。≪資料4≫のように、最近もユーロは大幅な売り越しの状態が続いているようです。金利差が大きな変化のない中でも、ユーロがこれまでの動き修正で買われる可能性はあるのでしょう。(了)
 
≪資料3≫
出所:Bloomberg
 
≪資料4≫
出所:Bloomberg

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