2012/08/13 17:16豪ドルとユーロの行方を考える
1.豪ドルはどうなる?
今回は米ドル以外の主要な通貨、とくに豪ドルとユーロについて考えてみたいと思います。まずは≪資料1≫をご覧ください。これはその豪ドルとユーロの対円相場のグラフを重ねたものですが、同じクロス円ながら、過去一年近く両者の水準は大きな差が広がってきたことがわかるでしょう。
≪資料1≫
このように豪ドル円とユーロ円の差が広がったのは、主に2つの局面だったと思います。一つは昨年暮れ、そしてもう一つは今年7月前後です。この2つの局面は、ともにECBが、ユーロ危機対策で金融緩和を強化した局面でした。
ECBの金融緩和強化で金融市場は全体的にリスクオンに向かい、この結果リスク資産とされる株、そして資源国通貨の豪ドルも選好されたのに対し、ユーロ自体は金融緩和を受けて下落に向かった結果、豪ドルとユーロのかい離は拡大したということでしょう。
≪資料2≫はそんな豪ドル円とNYダウのグラフを重ねたものです。豪ドル円は同じクロス円のユーロ円より、むしろNYダウの方との相関性が高いように見えますが、それはこれまで述べてきたことからある程度納得できるでしょう。
≪資料2≫
以上からすると、豪ドル円の先行きを考える上ではNYダウの先行きもある程度参考にする必要がありそうです。そのNYダウについて、米景気との関係を見たのが≪資料3≫です。代表的な米景気指標との関係で見ると、2008年、いわゆるリーマンショックなど金融危機が起こる前、住宅バブルと呼ばれた局面は確かに株が上がり過ぎ、「バブル」の可能性があったことがわかります。
最近の状況はそんな「リーマンショック前夜」ほどではないものの、景気に比べて株価が上がり過ぎ気味になっているようです。これを見ると、一段と株高が大幅に広がるかはさすがに微妙ではないでしょうか。
ではなぜ、米株は景気で説明できる以上に上昇しているのでしょうか。同じ米景気指標のグラフに、今度は米金利(10年物金利-インフレ率=実質長期金利)のグラフを重ねたのが≪資料4≫です。米株とは正反対に米金利は景気で説明できないほどの大幅な低下となっているわけです。
以上からすると、景気で説明できないほどの米金利低下を受けて、米株は景気で説明できる範囲を超えた上昇となっているのではないでしょうか。そうであれば、下がり過ぎ修正で米金利が大幅上昇になるなら、それを嫌気する形で米株は下落する可能性があるのでしょう。
さて私が米株について述べてきたのは、それと豪ドル円が一定の相関関係となってきたからです。この相関関係からすると、これまで見てきたように米株の上昇余地が今後限られ、むしろ反落する可能性があるということは、豪ドル高にも限界があって、反落リスクが懸念されるということになるのでしょうか。
≪資料3≫
≪資料4≫
ただこれまで見てきたように米株の反落リスクは、米金利上昇リスクとほとんど一体のものであり、その米金利上昇は欧州債務危機といった欧州発リスクオフや、FRB超金融緩和の見直しがきっかけになると考えられます。
そういったリスクオンの局面でもすでに上がり過ぎとなっている可能性のある米株は意外に続伸余地が限られ、反落する可能性もありそうですが、豪ドルもそれと同じになるかといえば違うのではないでしょうか。
欧州発リスクオフ、FRB超金融緩和などが修正に向かうリスクオンにおいては、米株安・豪ドル高といった具合に、これまでの相関関係が崩れてくるのではないでしょうか。
2.ユーロはどうなる?
次にユーロについて。ユーロは、危機対策でECBが異例の金融緩和を続け、短中期金利がマイナス金利となる中で、記録的な売り越しとなってきました≪資料5参照≫。7月下旬に、ECBドラギ総裁が「ユーロを守るためには何でもする」と発言し、質への逃避の逆流で、独金利が低下一巡、反発する動きも出てきたため、そんな記録的な売り越しの修正でユーロ買い戻しも広がり始めているようです。
ただ内外金利差のユーロ不利が改善しているわけではありません。≪資料6≫のように、ユーロドルと相関性の高い米独2年物金利差は、独金利以上に米金利上昇が大きいため、むしろユーロ不利、ドル有利が8月に入ってからも拡大しました。
ユーロは記録的な売り越しを受けて、さらなるユーロ売り余力は限られ、むしろ買い戻しも入りやすいとは思いますが、とくに対ドルにおいては金利差ユーロ不利が急改善するのも難しいことから、当面ユーロが一方的に上昇するのも難しいのかもしれません。(了)
≪資料5≫
≪資料6≫
今回は米ドル以外の主要な通貨、とくに豪ドルとユーロについて考えてみたいと思います。まずは≪資料1≫をご覧ください。これはその豪ドルとユーロの対円相場のグラフを重ねたものですが、同じクロス円ながら、過去一年近く両者の水準は大きな差が広がってきたことがわかるでしょう。
≪資料1≫
このように豪ドル円とユーロ円の差が広がったのは、主に2つの局面だったと思います。一つは昨年暮れ、そしてもう一つは今年7月前後です。この2つの局面は、ともにECBが、ユーロ危機対策で金融緩和を強化した局面でした。
ECBの金融緩和強化で金融市場は全体的にリスクオンに向かい、この結果リスク資産とされる株、そして資源国通貨の豪ドルも選好されたのに対し、ユーロ自体は金融緩和を受けて下落に向かった結果、豪ドルとユーロのかい離は拡大したということでしょう。
≪資料2≫はそんな豪ドル円とNYダウのグラフを重ねたものです。豪ドル円は同じクロス円のユーロ円より、むしろNYダウの方との相関性が高いように見えますが、それはこれまで述べてきたことからある程度納得できるでしょう。
≪資料2≫
以上からすると、豪ドル円の先行きを考える上ではNYダウの先行きもある程度参考にする必要がありそうです。そのNYダウについて、米景気との関係を見たのが≪資料3≫です。代表的な米景気指標との関係で見ると、2008年、いわゆるリーマンショックなど金融危機が起こる前、住宅バブルと呼ばれた局面は確かに株が上がり過ぎ、「バブル」の可能性があったことがわかります。
最近の状況はそんな「リーマンショック前夜」ほどではないものの、景気に比べて株価が上がり過ぎ気味になっているようです。これを見ると、一段と株高が大幅に広がるかはさすがに微妙ではないでしょうか。
ではなぜ、米株は景気で説明できる以上に上昇しているのでしょうか。同じ米景気指標のグラフに、今度は米金利(10年物金利-インフレ率=実質長期金利)のグラフを重ねたのが≪資料4≫です。米株とは正反対に米金利は景気で説明できないほどの大幅な低下となっているわけです。
以上からすると、景気で説明できないほどの米金利低下を受けて、米株は景気で説明できる範囲を超えた上昇となっているのではないでしょうか。そうであれば、下がり過ぎ修正で米金利が大幅上昇になるなら、それを嫌気する形で米株は下落する可能性があるのでしょう。
さて私が米株について述べてきたのは、それと豪ドル円が一定の相関関係となってきたからです。この相関関係からすると、これまで見てきたように米株の上昇余地が今後限られ、むしろ反落する可能性があるということは、豪ドル高にも限界があって、反落リスクが懸念されるということになるのでしょうか。
≪資料3≫
≪資料4≫
ただこれまで見てきたように米株の反落リスクは、米金利上昇リスクとほとんど一体のものであり、その米金利上昇は欧州債務危機といった欧州発リスクオフや、FRB超金融緩和の見直しがきっかけになると考えられます。
そういったリスクオンの局面でもすでに上がり過ぎとなっている可能性のある米株は意外に続伸余地が限られ、反落する可能性もありそうですが、豪ドルもそれと同じになるかといえば違うのではないでしょうか。
欧州発リスクオフ、FRB超金融緩和などが修正に向かうリスクオンにおいては、米株安・豪ドル高といった具合に、これまでの相関関係が崩れてくるのではないでしょうか。
2.ユーロはどうなる?
次にユーロについて。ユーロは、危機対策でECBが異例の金融緩和を続け、短中期金利がマイナス金利となる中で、記録的な売り越しとなってきました≪資料5参照≫。7月下旬に、ECBドラギ総裁が「ユーロを守るためには何でもする」と発言し、質への逃避の逆流で、独金利が低下一巡、反発する動きも出てきたため、そんな記録的な売り越しの修正でユーロ買い戻しも広がり始めているようです。
ただ内外金利差のユーロ不利が改善しているわけではありません。≪資料6≫のように、ユーロドルと相関性の高い米独2年物金利差は、独金利以上に米金利上昇が大きいため、むしろユーロ不利、ドル有利が8月に入ってからも拡大しました。
ユーロは記録的な売り越しを受けて、さらなるユーロ売り余力は限られ、むしろ買い戻しも入りやすいとは思いますが、とくに対ドルにおいては金利差ユーロ不利が急改善するのも難しいことから、当面ユーロが一方的に上昇するのも難しいのかもしれません。(了)
≪資料5≫
≪資料6≫
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