今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/07/30 15:4852週移動平均線が示すドル円の行方

◆ドルと金利と欧州の関係
今週から8月になります。その中で、3月には一時84円までドル高・円安となったドル円相場は、78円台のドル安・円高水準での推移となっています。
ところでこの84円までのドル高・円安の動きは、ドル円の過去一年間の平均値、52週移動平均線を大幅にブレークしたものであり、経験的にはドル高への基調転換を確認するものでした≪資料1参照≫。
 
≪資料1≫
 
≪資料2≫は今回と同じように、52週線をドル高方向へ大きくブレークし、実際にドル高への基調転換が再確認された2000年と2005年において、52週線をブレークして以降のかい離率の推移を見たものです。両者はとてもよく似た展開となっていたことがわかります。
実は、今回、2月中旬に52週線をドルが上抜けてから、今週は25週目になります。では、2000年と2005年、同じ25週目にドル円は52週線とのかい離率がどうなっていたかというと、ともに52週線を10%程度も大きく上回っていました。
 
≪資料2≫
 
足元の52週線は78.6円程度ですから、それを10%ドルが上回っているなら86円程度での推移となっている計算になりますから、今回の場合、過去の似たようなケースに比べて、大きくドル高・円安が出遅れた形になっているといえるわけです。


ではなぜ、ドル高・円安への動きが鈍い状況がなかなか変わらないのでしょうか。それは一言でいうと、ドル円と一定の相関関係にある米金利の低下傾向が変わらないためということになるでしょう。


≪資料3≫のようにドル円は今年に入ってから、米2年物金利をドル上限に、日米2年物金利差をドル下限にした範囲内でおおむね推移してきました。そんなドル円の「安定レンジ」の決め手になってきた米2年金利は、先週は一時2月初め以来の水準まで低下したのです。その中で、ドル安・円高の動きとなってきたわけです。
 
≪資料3≫
 
ではなぜ、米金利低下傾向が続いているのでしょうか。米2年物金利は金融政策を反映する金利ですから、FRBによる追加緩和観測を受けた動きということになります。それではなぜ、FRB追加緩和観測が続いているのでしょうか。


≪資料4≫は、米金利と米景気の関係を考えるために作ったグラフです。これを見ると、最近のような米景気で説明できない米金利低下は、過去10年間でもきわめて異例のものであることがわかるでしょう。米景気との関係で見ると、最近の米金利低下は異常な動き、「バブル」の可能性があるわけです。
 
≪資料4≫
 
そんな米景気から見ると「バブル」かもしれない米金利低下を数ヶ月にわたって実現させてきた要因は何かというと、それは欧州不安でしょう。≪資料5≫のように、欧州債務危機の代理変数となっているスペイン金利と米金利は3月以降、基本的に逆相関関係となってきました。
 
≪資料5≫
 
以上のように見ると、ドル高・円安が過去のパターンに比べて大きく出遅れているのは、米金利の低下が続いているためで、ただその米金利低下は「バブル」の可能性もあり、そんな「米金利低下バブル」を演出してきたのは欧州不安ということになるでしょう。
 
◆ECB「最後の貸し手」宣言と循環的反転の可能性
その欧州不安について先週、ECBドラギ総裁が、「ユーロを守るためには何でもやる」と宣言しました。これは、ECBが「最後の貸し手」になる意思を確認したものといった受け止め方もあります。


欧州債務問題とは簡単にいうと財政赤字の問題です。この赤字はもちろんすぐに消えることはありえないため、だから一朝一夕に解決することは不可能です。ただ、だからといってユーロや金利、株価などが下がり続けるということではなく、循環的な上下動はあるでしょう。


≪資料6≫はECBの金融政策を反映する独1年物金利の90日線からのかい離ですが、かつて経験したことのないほどの下がり過ぎとなっていた可能性があったことがわかります。ECB「最後の貸し手」宣言が、この独金利下がり過ぎの可能性に象徴される動きの、循環的な反転をもたらす可能性は注目されます。
 
≪資料6≫
 
おりしも8月第1週となる今週は、FOMC、ECB、そして米景気に関する重要指標の発表も予定されていることから、「欧州不安→米金利低下バブル→ドル高・円安の出遅れ」といった構図の修正が本格化するかを見極める重要なタイミングとなるのではないでしょうか。(了)

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