今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/07/02 15:167月の為替を予想する

◆ユーロ危機対策の「隠し玉」
注目されたEUサミットを受けて、ユーロは急反発に転じました。今回で明らかになったのは、EU当局はその気になればユーロ危機説を反転させられる「隠し玉」を決して持っていないわけではないということではないでしょうか。


まずこれはかなり意識されているようですが、ECBは今週5日の理事会で、昨年11、12月に続く利下げを行う可能性が高そうです。それで十分なため、今回は温存されると見られているのが、「6か月物無制限オペ」です。


昨年12月、今年2月に実施されたECBの3年物無制限オペは、「ECB版QE(量的緩和)」と呼ばれ、いったんユーロ危機を反転させるきっかけになったと評価されました。その第3弾を期待する見方もありますが、専門家の間でより実現性の高いと見られているのは、より短い期間を対象としたこの6か月物オペなのです。


ユーロ危機を巡る解説を見ると、それを解決できるかは、債務の共有の象徴的な政策であるユーロ共同債発行以外ないといった話にすぐなってしまうようです。ただ、今回EUサミットで決まったスペインの銀行への直接的な支援も、広い意味では債務共有化の第一歩です。


そして、実はそれよりも、よほど債務共有化を印象付け、かつユーロ共同債よりは実現可能性の高い政策はまだあります。それはユーロ共同短期債、ユーロビルの発行や、償還基金構想です。


ユーロ共同債「ユーロボンド」は、実現するまで10年単位の時間のかかる話です。それをやるといわない限り、危機は解決しないということになると、絶望的な感じになります。
ただ、短期債、つまり「Bills」の発行ならもう少し現実味のある話でしょう。そして上述の償還基金構想は、債務共有化に最も強く反対しているとされる独の有力シンクタンクの発案です。


金融緩和を進めているユーロ当局にとって、ユーロの下落は政策的に整合的であり、あまり気にならないのでしょう。ただ、ユーロ圏の大国の一つであるスペインやイタリアまで支援に追い込まれかねない動きは歯止めをかけなければだめでしょう。


そのためには、ユーロボンド以外に対策がないということではないようです。それが確認されると、今回のようにスペインやイタリアの金利は急激に低下し、米独金利は急上昇となります。独金利上昇が確認されると、ユーロキャリー逆流でユーロはさらに上がるのでしょう。米金利上昇なら、それと相関性の高いドル円もドル高・円安が明確になりそうです。


◆欧州危機後退とドル円の因果関係
先週金曜日は、EUサミットを受けて、特にスペイン、イタリアといった「アブナイ欧州国債」の利回りの急激な低下が目立ちました。ところで、このようなスペイン等の金利は、この数ヶ月、米金利と逆相関となり、その米金利はそもそもドル円と相関性が高いだけに、この「EUサミット・ラリー」はドル円への影響も注目する必要が出てくるでしょう。


6月29日、EUサミットを受けてスペイン金利は低下したのですが、何と10年物金利は0.6%、2年物金利に至っては1.1%もの記録的な低下となりました。この「凄さ」、ゆっくりと、じっくりと確認する必要があるのかもしれません。


≪資料1≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成


ところで、そんなスペイン10年物金利は、この数ヶ月米10年物金利と逆相関となってきました≪資料1参照≫。米10物金利は一時1.4%まで低下しましたが、これはとても米景気で説明できるものではありませんでした。にもかかわらず、なぜそんな米金利低下となったかというと、欧州危機のせいというわけだったのです。


さてその欧州危機の代理変数が、3月以降はスペイン金利でした。そのスペイン10年物金利は、6月29日に6.3%まで記録的な低下となりました。さらにそれが6%を割り込むようだと、この数ヶ月の逆相関からすると、それは米10年物金利の1.8%以上への上昇に符合するのです。


そんな米10年物金利が1.8%を安定的に上回っていたのは5月上旬以前であり、その当時ドルは80円を安定的に上回って推移していました。米10年物金利の1.6%台はテクニカル的に重要なポイントですが、これまで述べてきたスペイン金利との関係などからすると、スペイン10年物金利が6%を割り込み、さらに低下すると、いよいよ米10年物金利も1.8%以上を回復し、それはドルがいよいよ安定的に80円の大台に復帰する条件が整うということではないでしょうか。


◆52週線の経験則が示す7月82円というシナリオ
ドルは過去一年間の平均、52週移動平均線を上抜けてから、20週を過ぎると、いよいよ52週線を5%以上も上回り、そしてそのまま30週目にかけて52週線からのかい離率はプラス10%へ一段と拡大に向かった―。


これは、現在のドルの話ではありません。今回と同じように、52週線をドルが上抜けて、ドル高基調が始まった可能性の高まった2000年と2005年の動きについて述べたものです。では今回も同じように展開していくのでしょうか≪資料2参照≫。


≪資料2≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成


ちなみに今回、52週線をドルが最初に大きく上抜け始めたのは2月中旬でした。因みに先週、6月最終週は20週目だったのです。そして30週目は9月初めになる計算です。また、肝心の52週線は足元78.6円程度です。


これで計算する準備が整いました。過去2回のドル高基調開始と同じように展開するという前提で、今回も52週線を軸に考えたら、この7月は、ドルが82円を大きく上回り始めるタイミングになりそうです。そしてそのまま9月にかけて87円を目指す、そんなシナリオを想定しています。 (了)

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