今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/06/25 15:05「円安2幕」を正当化する米金利上昇を考える

ドル円は先週、久しぶりに80円の大台を回復してきました。これにより、かなりドル高・円安が広がりやすい見通しになってきたと思います。後述しますが、7月に82円程度、そして9月にかけて87円を目指す「円安第2幕」が始まっている可能性もあるのではないかと私は考えています。


ではそんなドル円と相関性の高い米金利は果たして、一段のドル高・円安を正当化するほどに上昇するのかといったことについて今回は考えてみたいと思います。


1.米独長期金利上昇が始まった背景と今後の見通し


金利の中でも、長期金利についてはすでに目立った形での上昇が始まっています。特にそれがわかりやすいのは米長期金利より独長期金利でしょう。≪資料1≫は独10年金利ですが、6月に入ってから1.1%台一時1.6%超までの急上昇となりました。


≪資料1≫
 
ではこのような独10年金利の急上昇はなぜ起こったのでしょうか。それは、異常な下がり過ぎの修正ということだと思います。≪資料2、3≫は、独10年金利の90日移動平均線からのかい離率ですが、一時かい離率がマイナス30%といった空前の状況まで拡大していたところ、その修正が最近にかけて急ピッチで展開してきたことがわかります。


≪資料2≫
 
≪資料3≫
 
異常な下がり過ぎの修正は、勢い余って逆に上がり過ぎ気味になるところまで続く傾向があります。独10年金利の90日線は足元1.65%程度ですが、それより10%程度上回るまで金利上昇が続くなら1.8%程度まで、独10年金利は上昇する見通しになります。


ところで米10年物金利も、90日線からのかい離率が一時マイナス30%近くまで拡大していたので、その意味ではこれまで見てきた独10年金利に劣らないほどの下がり過ぎだったと思います≪資料4、5参照≫。


 これまでのところ、独10年物金利に比べて米10年物金利の下がり過ぎ修正の動きは鈍いといえます。ただ、独に続き、米10年金利でも下がり過ぎ修正が本格化するなら、足元1.91%程度の90日線を越えて米10年物金利は上昇する見通しになるわけです。


このように、金利、特に長期金利については「異常な下がり過ぎ」といった状況が続いていたことが確認できるし、その修正ですでに独金利は大幅上昇となっており、それがいずれ米長期金利大幅上昇といった展開になっていく可能性も十分考えられるところでしょう。


≪資料4≫

≪資料5≫
 
そんな「異常な下がり過ぎ」の修正がなぜこの6月に入ってから始まってきたのでしょうか。結論から言うと、それは「金融緩和一辺倒の限界」ということではないでしょうか。


先週FOMCは、「長期金利の低下を促すため」との理由でツイストオペの延長を決定しましたが、むしろ逆に長期金利は上昇気味の展開となったことは、小さいながらも象徴的だったと思います。すでに金利が歴史的低水準に達したことで、追加緩和でも金利が下がらず、そして金利低下をもたらさない追加緩和への疑問も強まっているということでしょう。


欧州の財政危機が象徴的ですが、他の先進国も巨額の財政赤字を抱え、景気対策での財政発動は「タブー扱い」として、金融緩和一辺倒としてきた結果が、歴史的な金利低下をもたらした大背景でした。ただその中で、これまで見てきたように、米独の長期金利は「異常な下がり過ぎ」になっていたわけです。


6月に入ってから、そんな異常な金利下がり過ぎの修正が始まったのは、金融緩和一辺倒の限界を織り込む動きということではないでしょうか。そのように考えると、6月に入り、まず「米雇用統計ショック」があり、ギリシャ、スペインなど欧州情勢もむしろ懸念が強まる中で、それを尻目に米独金利が上昇に転じたことも辻褄は合うのではないでしょうか。


つまり、追加的景気対策の焦点が、金融政策から財政政策に移り始める可能性が出てきたということです。これは、債券需給的には正反対の意味になります。金融緩和なら債券「買い」ですが、財政発動なら債券需給悪化、つまり「売り」です。


このような構図の中では、最初に見てきたように長期金利の「異常な下がり過ぎ」修正が本格化するのも当然ということになるでしょう。


2.「円安2幕」7-9月82-87円の鍵握る米超金融緩和見直し


それにしても、このところ為替の動きに強い相関性のあるのは長期金利より2年物金利などの中期金利です。たとえば、米2年物金利は今年に入ってから対円でのドル上限となってきました≪資料6参照≫。


≪資料6≫
 
ドルがしっかり82円を超えていくためには、米2年物金利は0.3%を大きく上回っていく必要があり、さらに85円よりドル高になるためには、米2物年金利は0.4%を大きく上回っていく必要がありそうですが、それは果たして可能でしょうか。


≪資料7≫は米2年物金利の90日線からのかい離率です。これを見ると、さっき確認してきた米10年金利とは状況がかなり違うことがわかります。要するに、米2年物金利は90日線との関係で見るとほぼニュートラルな状況にあり、さらなる上昇は上がり過ぎを拡大することによって起こるということになるわけです。


米10年物金利が上がるのは、「異常な下がり過ぎ」の修正によるものでした。これに対して、米2年物金利の上昇は「上がり過ぎ」拡大によって起こるわけですから、同じ金利上昇でも位置付けは大きく異なるわけです。


≪資料7≫
 
米2年物金利は金融政策を反映する金利ですから、それが「上がり過ぎ」拡大に向かうのは、FRBの現行の超金融緩和見直しが必要になるといった理屈になるでしょう。


6月FOMCで現行のツイストオペ延長を決めたばかりですから、超金融緩和見直しの手掛かりは正直に言って見出しにくいところではあります。ただ、為替のテクニカルな見方からすると、冒頭にも述べたように「円安第2幕」が始まった可能性があるので、それを正当化する米2年物金利上昇をもたらす米超金融緩和見直しの可能性も予断を許せないでしょう。


先ほども述べたように、米2年物金利は足元でも、ドルが81円台後半まで続伸してもおかしくないところまで上昇しました。ところで、この米2年物金利が示すドル上限にドルが接近したのは、ドルが120日線を上回り、ヘッジファンドがドル買い戦略を本格化した2-4月の局面でした。


その120日線は足元79.85円程度で、それをドルが上回っている中では、ヘッジファンドがドル買いをリードし、米2年物金利の示唆するドル上限に再接近する可能性はあるでしょう。


またドルは2月中旬から52週移動平均線を大きく上回ってきたわけですが、すでに今週で20週目に入ります。経験的に、52週線を上回り始めてから20-30週経過したところで、ドルは52週線を5-10%上回る一段高局面を迎える可能性が高まります。


足元の52週線は78.65円程度ですから、7-9月にかけてそれをドルが5-10%上回るということは82-87円を目指す局面に入っているといった見通しになるわけです。さて、今回見てきたように、それを正当化するための金利上昇は、特に超金融緩和見直しの可能性が出てくるかが最大の焦点になるのではないでしょうか。(了)

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