今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/06/20 14:10「オバマ発言」の円売り介入とQE3への「含意」

米オバマ大統領が「通貨切り下げを行わないことで合意した」、「過小評価された水準に自国通貨を維持するための為替介入を行わないとの見解で一致した」とメキシコで開催されたG20で語ったことが報道されています。これを言葉通り受け止めるなら、日本の円売り介入を否定したのではなく、むしろ米国の追加緩和を否定したということになるのではないでしょうか。


◆ドルの過小評価、円の過大評価
≪資料1≫は、ドル円の適正水準の目安である日米生産者物価で計算した購買力平価からの実勢相場のかい離を見たものです。足元、ドル円の購買力平価は100円程度であるため、80円程度の実勢相場は、約2割のドル割安、円割高ということになります。


≪資料1≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成


その意味では、上述のオバマ発言にあった「過小評価された水準」にある可能性のあるのは対円でのドルであり、対ドルでの円はむしろ「過大評価」の可能性があるということになるでしょう。これは、少し前にIMFが表明した見解、「円はやや過大評価の可能性がある」といった評価と基本的に同じでしょう。


そうであれば、「過小評価された水準に維持するための為替介入を行わない」という対象はドル安維持のためのドル売り介入は入るかもしれませんが、円高阻止の円売り介入は該当しないのではないでしょうか。


◆実効的な景気対策、ドル安誘導の否定
もちろん米国もドル安維持のためのドル売り介入はやっていません。ただ実質的なドル安誘導として受け止められ、諸外国から猛烈な批判を浴びたのが2010年11月、いわゆるQE2を決定した局面でした。「通貨戦争」という言葉が流行語のようになったことからも明らかなように、量的緩和第二弾のQE2を、諸外国はドル安誘導策と受け止めたわけです。


最近もFRBの追加緩和が注目されています。欧州危機などの悪影響が懸念されていること、そして雇用統計に象徴されるように、景気先行きにも不透明感が再浮上し、それを受けて金利も未踏の領域まで低下してきたためです。
ただ、金利がすでに未踏域まで低下してきたことで、追加緩和の効果に懐疑的な見方も出てきました。さらなる金利低下、金利の低位安定の可能性が限定的な中で、実効的な政策の一つがドル安誘導です。


このような中で、仮に追加緩和に踏み切ったら、2010年11月のQE2決定の局面以上に通貨戦争といった批判が海外から上がるのではないでしょうか。その意味において今回、オバマ大統領が、「通貨切り下げを行わないことで合意した」と語ったということは、ドル安誘導と受け止められかねない追加緩和否定の「含意」ではないでしょうか。(了)

※当レポートは、情報提供を目的としたものであり、特定の商品の推奨あるいは特定の取引の勧誘を目的としたものではありません。

※当レポートに記載する相場見通しや売買戦略は、ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などを用いた執筆者個人の判断に基づくものであり、予告なく変更になる場合があります。また、相場の行方を保証するものではありません。お取引はご自身で判断いただきますようお願いいたします。

※当レポートのデータ情報等は信頼できると思われる各種情報源から入手したものですが、当社はその正確性・安全性等を保証するものではありません。

※相場の状況により、当社のレートとレポート内のレートが異なる場合があります。

バックナンバー

  • 2019.01.15 更新今週の注目通貨(米ドル/円)◆要約◆・米ドル/円は2015年8月チャイナ・ショック後の展開とこれまでのところ似ている。似た動きがこの先も続くなら、しばらく108-111円中心のもみ合いの可…
  • 2019.01.07 更新2019年の米ドル/円を予想する◆要約◆・米ドル/円は、2018年10月114円から米ドル安・円高トレンドに転換した可能性。きっかけは、9年間の米株高が終わり、株安へ転換したこと。・リスクオフ…
  • 2018.12.25 更新今週の注目(リスクオフの通貨選択)◆要約◆・リスクオフでは米ドル/円もクロス円もドルストレートも全て基本的には下落しやすいので、売りに適性のある通貨ペアを探す必要がある。・売りに適性のあるのは割…
  • 2018.12.17 更新今週の注目通貨(米ドル/円)◆要約◆・米ドル/円はこのまま小動きが続くと、値幅が2カ月連続の2円未満、年間値幅も10円を下回るといった具合に記録的な小動きにとどまる見通し。・19日のFOM…
  • 2018.12.10 更新今週の米ドル/円を予想する◆要約◆・米株安は大きな岐路に。2-3月との類似やアノマリーからするとそろそろクライマックスだが、逆にいえばさらなる株安なら、未体験の株安となる懸念が強まりかね…

「今週はこう動く! マーケット羅針盤」過去記事のタイトル一覧(月別)はこちら。

そのほかのマーケット情報

ページトップへ