今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/06/18 15:11「ギリシャ危機」回避後のシナリオとは?

◆ヒントは危機回避前の「謎の独金利上昇」
世界の金融市場が固唾を飲んで見守ったのかもしれない17日のギリシャ再選挙は、財政緊縮推進派とされる前連立与党が過半数を得たことから、最悪の場合はギリシャのユーロからの離脱に向かいかねないといった危機は回避されたとの見方が強まっているようです。


そこで今回は、「ギリシャ危機」回避後の展開について考えてみたいと思います。


「ギリシャ危機」回避後の展開を考える上でのヒントが、実は「危機」回避前にあったかもしれないと私は考えています。具体的には、独長期金利の大幅上昇に注目しています。


最初に述べたように、今回のギリシャ再選挙は、結果次第では大変なことになるかもしれないとして「世界の金融市場が固唾を飲んで見守った」ものでした。その意味では、警戒感から比較的安全とされる債券が買われ金利は低下するとか、少なくとも結果がわかるまで取引は手控えられて小動きになるのが普通でしょう。


≪資料1≫
 
独長期金利(10年債利回り)は≪資料1≫のように、6月1日の1.1%台から、ギリシャ再選挙の直前までに一時1.5%近くまで最大0.4%程度の大幅上昇となったのです。


ギリシャ以外でもスペイン支援が「失敗」のようになるなど不安材料があったことを考えるとこれは「謎の独金利上昇」といえるでしょう。


なぜ独金利はユーロが崩壊しかねないような中で上昇したのでしょうか。ついに、ユーロ崩壊を警戒し、ユーロ圏一の安全資産とされる独国債も売られ始めたということだったのでしょうか。そうでなければ、ユーロ崩壊に向かいかねない危機を回避するべく、独が政策転換に動き出す可能性を織り込み始めた結果だったのではないでしょうか。


独メルケル首相は、財政規律重視の路線を主導してきましたが、その軌道修正に動き始める可能性が一部で取り沙汰されています。今週はG20サミットや、ユーロ圏財務相会合などが予定されていますが、その中で独がユーロ圏の財政統合に踏み出すといったシナリオです。


そんなシナリオを先取りする形で独金利が上昇してきたとすれば、辻褄は合うでしょう。そもそも、そういった独の政策転換に伴う財政規律重視路線の緩和が、今回17日に行われたギリシャ再選挙で、財政緊縮推進派を勝利に導いた可能性もあるでしょう。


以上のように考えると、今回のテーマ「ギリシャ危機回避後の展開」は、実はすでに「危機回避前」から始まっているということになるのではないでしょうか。そうであるなら、この「ドラマ」の主役の一人は、独長期金利ということになるでしょう。


◆独長期金利1.7%超、ユーロ1.3ドルのシナリオ
これまで私が述べてきた「仮説」が正しいかの検証は、今週のG20などの政策当局者会合で、独の政策転換を受けたユーロ圏財政規律重視路線の緩和の見極めが焦点になります。キーワードの一つは、ユーロ圏財政統合の前進でしょう。私の「仮説」が正しければ、独金利は一段と上昇に向かうのではないでしょうか。


≪資料2≫
 
そもそも独長期金利は、異常な下がり過ぎになっていた可能性がありました≪資料2参照≫が、それが最近にかけて急ピッチで修正されてきたようです。経験的に、下がり過ぎの修正は、最低でも90日線を回復するまで続くので、足元1.7%程度の90日線を上回るまで独長期金利上昇は続く見通しになりそうです。


そんな独長期金利上昇により、米独長期金利(10年債利回り)差ドル優位は6月に入ってから急ピッチで縮小してきました。これを受けて、ユーロドルと相関性の高い米独2年金利差ドル優位も大きく縮小したのが、6月1日1.22ドル台から足元1.27ドル程度までのユーロ高・ドル安をもたらしたということでしょう≪資料3参照≫。


≪資料3≫
 
≪資料4≫
 
そもそもユーロは空前の売り越しとなっていました≪資料4参照≫。その大前提の一つが低金利だったと思いますが、それが変わるとなると、空前の売り越しを修正、ユーロ買い戻しが広がるのは当然でしょう。


経験的にユーロ売られ過ぎが本格化すると1か月で5-6%程度のユーロ高・ドル安になるのがこれまでのパターンでした。それを今回に当てはめると、6月末にかけて1.3ドルを目指す計算になりますが、果たしてどうでしょうか。


◆ギリシャ危機回避でFRB長期国債購入は終わるか
最後に少しドル円についても考えてみたいと思います。これまで述べてきたように、独金利上昇に伴うユーロ上昇となれば、それでなくとも経験的に記録的な下がり過ぎの可能性のある対円でのユーロだけに、その修正によりユーロ高・円安となり、そんなクロス円に主導される形でドル高・円安が進んでいく可能性はあるでしょう。


ただ本質的にドル高・円安本格再開は、やはり米金利上昇が鍵を握ると思います。独金利と同じように、米金利も異常といっていい下がり過ぎとなっているため、その修正で一段と上昇に向かう可能性はあるでしょう。その意味では、今週予定されているFOMCがどのような役割を演じるかが見所でしょう。


今回の「ギリシャ危機回避」が本物かは重要でしょう。FOMCでもすでに未踏の領域まで金利が低下したことで、追加の金融緩和、とくにQE3や現行のツイストオペによる長期国債購入策の継続に対して慎重論も増えていました。「ギリシャ危機回避」なら、そういった慎重論はいよいよ勢い付くのではないでしょうか。


そういったことから今週のFOMCが予定通りツイストオペに伴う長期国債購入をこの6月末で終了するようなら、それが空前の米長期金利下がり過ぎ修正本格化のきっかけになる可能性は注目されます。それこそが、ドル高・円安の鍵を握るのではないでしょうか。


最近にかけてのドル安・円高気味の展開により、円のポジションも小幅にドル売り・円買いに傾斜しているようです。ただヘッジファンドなどは、足元79.7円程度の120日線よりドル高になるとドル買い・円売りに戦略転換する傾向があるため、FOMCを受けた米金利上昇とともに、この120日線を巡る動きが、ドル高・円安が本格再開するかを考える上での最大の焦点になるでしょう。(了)

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