今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/05/21 16:23ユーロ「ギリシャショック」が終わる理由

◆試されるユーロ安の持続力
 ユーロは、5月上旬に行われたギリシャ総選挙の結果を受け、ギリシャのユーロ離脱懸念などを理由に一段安となり、≪資料1≫のように、対米ドルでは1月に記録した最近の安値更新寸前まで続落してきました。


≪資料1≫
 
ただこのようなユーロ安の動きは過去半年ほど、ユーロの動きをうまく説明してきたユーロ圏の中核金利である独の短中期金利の動きとは微妙にずれたものです。≪資料2≫のように、独1年金利などは最近にかけてもほぼ横ばいとなっており、必ずしも1.3ドルを大きく割り込むユーロ安を正当化するものではないようです。


ではなぜ独1年金利は最近も横ばいが続いているかといえば、これはECBの金融政策を反映する傾向のある金利ですから、ECBが第三次利下げなど追加緩和に動く可能性がないという意味になるでしょう。


≪資料2≫
 
ではなぜギリシャのユーロ離脱といったある意味では破滅的ともいえるシナリオがくすぶり、それが第二、第三のユーロ離脱不安として、スペインなどにも波及しかねない不安すらくすぶる中で、ECBの追加緩和の可能性が出てこないのでしょうか。それはやはり、今年初めにかけてのECBの講じた対策の効果の影響でしょう。


≪資料3≫は銀行の資金調達コストの目安であるTEDスプレッド(米3ヶ月物利回りと3ヶ月物ユーロドルLIBORとの金利差)です。これは、銀行の資金調達コストが悪化すると、銀行間取引金利上昇でスプレッドが拡大する仕組みになっているわけですが、今年1月初めがピークで最近は比較的安定した動きになっていることがわかるでしょう。


≪資料3≫

今年1月にかけて欧州債務不安は銀行の資金調達コスト悪化をもたらしていたので、ECBも3年物オペに象徴される流動性対策、そして金融緩和に動きました。ただそれらの政策の効果ということでしょうが、最近は銀行の資金調達環境が、比較的落ち着いているわけです。


これが今年1月までと今回とで欧州債務問題を巡る大きな違いの一つでしょう。このような違いを踏まえて、ECBの追加対策の可能性は出てこないわけです。そうであれば、それを反映する独金利が大きく低下しないのも理解できます。にもかかわらず、ユーロ安になっている動きが持続可能か、試される局面ということではないでしょうか。


◆ギリシャ騒動の短期収拾の可能性
それでもギリシャのユーロ離脱といったことになれば、ユーロは崩壊しかねないわけです。そんな「爆弾」を抱えた中で、ユーロ続落リスクが心配だという気持ちは理解できるものです。


ただ本当にギリシャのユーロからの離脱といったことが現実になるのかといえば、基本はやはり懐疑的ではないでしょうか。そう思う最大の理由は、それはほとんど誰も望んでいないシナリオだからということです。


5月6日に行われたギリシャ総選挙の結果で私が最も印象的だったのは、ユーロからの離脱を主張したのは共産党だけで、その得票率は8%に過ぎなかったということです。別な言い方をすると、9割以上は、ユーロ残留を望んでいたということです≪資料4参照≫。


≪資料4≫

金融市場からの関心はギリシャでどのような政権が誕生するかより、ユーロ離脱があるかないかということでしょう。それに対してのギリシャの「民意」は、9対1以上といった具合に圧倒的に離脱反対なわけです。


このように、ユーロ残留支持が圧倒的多数の民意ということなら、ギリシャでは6月中旬に再選挙を行うこととなっていますが、ユーロに残るか、出て行くかということについては再選挙の結果を待つことなく決着する可能性が十分あるのではないかと私は思います。


18日の海外市場でユーロは久しぶりに比較的目立つ反発の動きになりましたが、そのきっかけの一つはユーロ離脱を巡る国民投票実施の可能性が出てきたこととされました。これは今まで述べてきたように、国民投票をやったらユーロ残留が圧倒的多数で確認され、それこそ、金融市場が最も見極めたい点であることを示したのではないでしょうか。


こういった中でユーロはとりあえず1月に記録した1.262ドル程度の安値更新を回避した形となっています。それにはもう一つ、やはり「売られ過ぎ」の影響もあったのではないでしょうか。


≪資料5≫は、CFTC統計のユーロ・ポジションですが、足元で過去最大のユーロ売り越しを僅かですが更新してきました。これを見ても、ユーロ売りの持続は簡単ではない局面に入りつつある可能性は考えられます。


≪資料5≫
 
ユーロドルの適正価格の目安である購買力平価は、足元でも1.2ドル程度です≪資料6参照≫。したがって、1.2ドルを大きく上回っているユーロは、ギリシャのユーロ離脱による崩壊論などがくすぶっている割には、割高圏にあるわけです。


≪資料6≫

このギリシャに限らず欧州債務問題は簡単には解決しないでしょうから、ユーロも中長期的には適正価格よりむしろ割安を拡大する流れだと思います。その意味では数年スパンで、1.2ドルを大きくユーロは下回っていくのではないでしょうか。


では今回の局面でそうなるかというと、これまで見てきたように独金利との関係、ギリシャのユーロ残留の可能性、ユーロ売られ過ぎなどから微妙ではないかと私は思います。1月安値更新をユーロが回避し、「二番底」を確認するかが目先の最大のポイントではないでしょうか。


ところでユーロは対円でも100円の大台割れ含みとなってきました≪資料7参照≫。ただ、このようなユーロ安・円高は、中長期的に見るとかなりユーロの下がり過ぎ限界的な動きだと思います。


≪資料7≫
 
≪資料8≫はユーロ円の中長期的な行き過ぎをチェックする5年移動平均線からのかい離率ですが、経験的にかい離率がマイナス20%を大きく超えてくると下がり過ぎの限界で反転する傾向があったことがわかるでしょう。


今年1月に100円を大きく割り込んだユーロが、その後3月にかけて「まさか」のような110円まで反発したのも、このような経験的にはこれ以上のユーロ安・円高が難しい段階に入っており、その反動が入ったと考えると辻褄は合います。


さてその5年線は4月末で130円程度ですから、ユーロ円が100円になると、かい離率はマイナス23%程度に拡大する計算になります。以上からすると、ユーロが100円を大きく割り込む動きが長く続く可能性は低いのではないかと私は思います。(了)


≪資料8≫

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