今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/03/19 13:06円安へ転換か一時的か、次の目安はこれ

◆金利差、需給は円高支えた構図に変化なし
ドルは先週まで5週連続で52週移動平均線を上回り、とくに先週の終値は、52週線を5%以上大きく上回りました≪資料1参照≫。経験的には、このように52週線を長く、また大きくブレークした動きが「一時的」だったことはほとんどなかったようです。その意味では、値動き的には一時的ではなく、ドル高・円安へ転換している可能性が高まっているといえそうです。
 
≪資料1≫

 ただ、仮にドル高・円安へ転換したとしても、それはファンダメンタルズでの確認には未だ至っていません。たとえば、この間代表的なファンダメンタルズでのドル安・円高理由は、金利差と米国の超金融緩和を受けた需給があったと考えられますが、それは最近にかけても顕著な変化は見られません。
≪資料2≫は、円のポジションと日米政策金利差のグラフを重ねたものです。これを見ると、ドル買い・円売りが継続的かつ本格的に拡大するためには、金利差ドル優位の大幅な拡大が必要だったことがあらためてわかるでしょう。
 
≪資料2≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
≪資料3≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
そんな日米の政策金利差は、2008年末にFRBもゼロ金利政策に踏み切ってからほぼゼロの状況が続き現在に至っています。≪資料2≫を見ると、そういった金利差がない中でも2010年5月、2011年4月など、ドル買い・円売りが拡大した局面はありましたが、それは「短命」に終わり、継続的かつ本格的拡大とはなりませんでした。

政策金利差ではなく、市場金利差はドル優位が徐々に拡大してきました。ただこれも、最近のように80円を大きく上回っているドル高・円安を正当化できるまでにはまだまったく至っていません≪資料3参照≫。
 
今回、ドル高・円安が加速するきっかけになったのは、2月に日銀がインフレ目標を決定し、追加緩和したことでした。では、これによってこれまでドル売り・円買いに大きく傾いていた需給が変わり始めたということがあるかといえば、それもかなり懐疑的です。

≪資料4≫は、ドル円のグラフに、日米の中央銀行が供給する資金、それをベースマネーと呼びますが、そのベースマネーの比率を重ねたものです。両者に一定の相関関係があることを、かつてヘッジファンドが注目して話題になったことから、ヘッジファンドの代表的な人物の名前をとって「ソロスチャート」と呼ばれています。
 
≪資料4≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
これを見ると2月の日銀による追加緩和以降も、これまでのところ記録的なドル余剰によってドル安・円高の可能性を示唆していた構図が、急にドル高・円安を示唆する方向に大きく変わり始めたといったことはまったくないようです。

ソロスチャートを見ると、2008年9月のリーマンショックを前後し、FRBの金融緩和が急拡大して以来、ドル余剰は空前のドル安・円高を示唆する構図となり、それは最近にかけてほとんど変化ないといえそうです。

少し細かく見ると、2010年にこの日米ベースマネー比率が示すドル余剰は縮小し、ドル高・円安への可能性を示す時期がありました。これはFRBが一時出口政策を検討したことが主因でしょう。ただそれも、2010年11月の量的緩和第二弾、いわゆるQE2を始めるとあらためてさらなるドル安・円高を示唆する動きに向かいました。

こんなふうに見ると少なくともここ数年間は、ドル円において日銀の金融政策の影響はほとんどなかったいうことになるのではないでしょうか。ドル円の需給は、FRBが現在の超金融緩和政策の終了、そして見直しに動かない限り、ドル高・円安へ本格的に転換するのは難しそうです。

以上のように、最近のドル高・円安は、最初に述べたような値動きからすると「一時的」ではない可能性が高くなっているのですが、金利差や需給といったファンダメンタルズからすると、これまでのドル安・円高を支えた構図の変化が確認できたわけではないので、ドル高・円安が「一時的」の可能性もまだまだ十分ありそうだということになるわけです。
 
◆円安への転換「先取り」か「先走り」かが試される
金融市場、相場の動きは、ファンダメンタルズの変化を先取りすることが少なくありませんので、私は今回の場合もそうではないかと今のところ考えています。特にこの間述べてきたように、FRBの超金融緩和政策の大転換がこれから起こるのではないかと私は考えているので、それを先取りしたドル高・円安への転換ではないかと思っているわけです。

そうではなくて、ファンダメンタルズ変化の「先取り」ではなく、「先走り」に過ぎなかったのか。それを試す動きが起こる可能性はつねに抱えているのではないでしょうか。
 
≪資料5≫

たとえば、≪資料5≫はドル円の90日移動平均線からのかい離率ですが、同かい離率は一時プラス7%まで拡大しました。経験的には、かい離率がプラス10%前後まで拡大すると、短期的に上がり過ぎ懸念が強くなります。その意味では、一本調子で展開してきたドル高・円安も、そろそろスピード調整が必要になってきた可能性がこの資料からもわかります。

ちなみに、足元の90日線は78.2円程度です。したがって、かい離率がプラス10%を超えるのは、ドル高・円安が85-86円程度になっている計算になります。経験的には、短期の上がり過ぎを示すかい離率プラス10%突破は、中長期の上昇トレンドの中でしか原則的に起こらないものです。

つまり、このまま85円をドル高に超えて、90日線からのかい離率がプラス10%以上となり、中長期トレンドもドル高・円安へ転換していることを確認してから調整的なドル反落となるというシナリオが一つ。

もう一つのシナリオは、ドルが85円を越える前に反落に向かい、90日線からのかい離率がプラス10%の手前で拡大一巡となった場合。その場合は、あくまで経験則からすると、まだ中長期のトレンドがドル高・円安に転換していない可能性も出てくるわけです。

2月から続いてきた一本調子のドル高・円安は、遅かれ早かれいったんドル安・円高に転換することになるでしょうが、それが85円を超えてから起こるか、超えられずに起こるかによって、このドル高・円安が一時的なのか、基調転換を受けた動きなのかを巡る議論の再燃も左右する可能性があるのではないでしょうか。(了)

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