今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/03/12 13:53「QE3なし」で株、金利、そして為替はどうなる?

◆3月FOMCを予想する
9日発表された米2月雇用統計で、注目のNFP、非農業部門雇用者数は3ヶ月連続の20万人を超える増加となりました。このような結果も受けて、13日予定のFOMCで、現行の超金融緩和方針がどうなるかは注目されるところとなりそうです。
FOMCは前回1月の会合で、現行のゼロ金利政策を2014年末まで続ける方針を発表するとともに、量的緩和第三弾、いわゆるQE3の可能性など追加緩和を示唆しました。

この1月会合の時点で、すでにNYダウは昨年10月初めの安値から約2割もの大幅高となっていました。にもかかわらず、それまで2013年半ばまでゼロ金利を続けるとしていた時間軸をさらに大幅に延長し、その上QE3も示唆するなど緩和姿勢を一段と強化したのは、依然として雇用情勢の「完全回復にはほど遠い」状況が続いているといった認識を踏まえた判断との理解が基本です。

この「完全回復にはほど遠い」といった認識が、前回会合から1ヶ月半程度で「急変」するのは考えにくいでしょう。ただ、2月末、3月初めに行われたバーナンキFRB議長の議会証言などから、QE3など追加緩和姿勢については後退したとの見方が強まっています。

これはある意味で当然でしょう。昨年までに行われた追加緩和、2010年のQE2や、2011年のツイストオペは、NYダウが高値から15%前後もの反落となった中で決まったものでした。要するに、QE政策は米景気不安が再燃する中での「切り札」のような出番だったわけです≪資料1参照≫。

これに対して最近のNYダウは高値更新が続いています。ここ数年の「切り札」的な出番で考えるなら、QE3はNYダウが1万1千ドルに迫る形での反落となった時に現実味を持ってくるものであり、最近のような状況の中でも判断するなら異例なことで簡単ではないでしょう。
 
≪資料1≫
 
そもそも、雇用情勢は「完全回復にはほど遠い」状況とはいえ、QEのような非伝統的金融緩和を正当化する状況は変わりつつあるのではないでしょうか。≪資料2≫はFFレートと修正失業率(失業率-10年平均)の関係を見たものですが、このところの失業率改善で、非伝統的金融緩和の必要性はほぼ解消しつつあることがお分かりになると思います
 
≪資料2≫

以上のように見てくると、今回のFOMCでは先のバーナンキFRB議長の議会証言と同様に、追加緩和、QE3の可能性は後退するのではないでしょうか。もしもそうなったら、マーケットへの影響はどうなるでしょうか。
 
◆超金融緩和と株、金利、為替の関係
最近にかけての株高は、世界的な金融緩和を受けた過剰流動性相場の結果であるとの見方があります。そうであれば、QE3の可能性が後退するなら株価が反落に向かうことになってしまうのでしょうか。

≪資料3≫は、代表的な景気指標であるISM製造業景況指数とNYダウを重ねたものです。これを見ると、ここ数年間のNYダウの動きは、おおむね米景気で説明できるものといえそうです。細かく見ると、この数ヶ月の1万3千ドル絡みの動きは、景気での説明範囲を超えた株高の可能性もありますが、あくまで誤差の範囲内ではないでしょうか。
 
≪資料3≫
 
≪資料4≫

これに対して、≪資料4≫は、同じISM指数と米実質長期金利(10年債利回り-インフレ率)のグラフを重ねたものです。これを見ると特に昨年後半以降の米金利低下は、異例なまでに景気での説明を超えた動きのようです。

昨年後半以降とは、米景気二番底懸念の再燃と、欧州債務危機深刻化などを受けて、FOMCがゼロ金利の長期化にコミットするいわゆる「時間軸効果」を決定し、さらにツイストオペに踏み切るなど超金融緩和政策を一段と強化した時期です。

そういった中で、景気などファンダメンタルズでの説明範囲を超える動きになったという意味では、超金融緩和の影響は株高以上に金利低下の方が俄然大きかったのではないでしょうか。
 
さて、雇用情勢などが「完全回復にはほど遠い」状況の中で、1月に決めたばかりの「時間軸」は、今回のFOMCでも急に変わるとの見方はほとんどないようです。6月末に期限が予定されているツイストオペについても、いわゆる「不胎化QE」といった代替策で継続することが検討されているようです。

あくまでQE3の可能性後退を再確認するといった結果なら超金融緩和の中での株高、「異常な金利低下」といった構図は大きく変わらないのでしょうか。

「異常な金利低下」を昨年11月頃からうまく説明してきたのは欧州債務危機でした。≪資料5≫のように、欧州債務危機の目安である伊国債利回りと米国債利回りは逆相関、つまり欧州危機が悪化(伊金利上昇)すると米金利低下、欧州危機が改善(伊金利低下)すると米金利上昇となってきました。

しかしイタリア金利はこのところ急激に低下し、すでに昨年夏に欧州債務危機が再燃する以前の水準まで戻ってきました。その意味では、欧州危機も、すでに「異常な米金低下」を説明するものではなくなっているわけです。

このように見ると、「異常な米金利低下」の外堀は徐々に埋まりつつあるのではないでしょうか。完全に外堀が埋まり、「異常な米金利低下」の修正が今回のFOMC後に始まるかは注目されるところです。

為替市場では、2月からドル高・円安が続き、ついに先週は82円台に到達してきました。このような値動きは、今回のドル高・円安が一時的なものではなく、新たなドル高・円安基調が始まっている可能性を期待させるものです。

ただそれを裏付けるような、日米金利差ドル優位の拡大は、≪資料6≫のようにまだまだ不十分です。これまで見てきた「異常な米金利低下」の修正がいつ始まるかは、ドル高・円安への基調転換がより確からしくなるかを考える上でも重要な要因といえそうです。(了)
 
≪資料5≫

≪資料6≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成

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