今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/02/20 15:35基調転換の「審判」は今週中に下る可能性

1.基調転換か「ダマシ」かを見極める目安とは?
 
久しぶりにドル高・円安となってきました。とくに、79円を超えるドル高・円安とは、≪資料1≫のように、2010年春以来の52週移動平均線のドル上放れを試す動きということになるわけです。
 
≪資料1≫

ところで、この52週線は、≪資料1≫でわかるように、いわゆる「ダマシ」が少ないという特徴があります。≪資料1では、ドル高基調の中での一時的なドルの52週線下ぶれ、またはドル安基調の中での一時的なドルの52週線上ぶれといった「ダマシ」に○印をつけてみましたが、それは最大でも4%以上かい離せず、最長でも1ヶ月以上続きませんでした

さて、これを参考にするならもしもまだドル高へ基調転換しておらず、この動きがドル安・円高基調の中の一時的なドル高、つまり「ダマシ」に過ぎないなら、週末終値で80.5円よりドル高になるのも難しく、ましてや82円以上になるのはまず無理、そして3月中旬までの間に再び79円を大きく割り込んでいくといった計算になります。

逆に言えば、もしもすでにドルが大底を打ち、ドル高への基調転換が始まっているなら、今述べてきたような条件が、ことごとく否定されていくことになります。つまり、週末終値でドルが80.5円を大きく上回り、ましてや82円も超えて、3月中旬以降にかけ1ヶ月以上、52週線を上回るなら、経験的にはそれは「ダマシ」ではないわけです。

さて、すでに5年目に入っていたドル安・円高は、あの75円台で終了し、ついにドル高・円安へ転換したのでしょうか。それともそれはまだなのでしょうか。もう一度、≪資料1≫を見ると、そもそも52週線の大きな「ダマシ」は一つの基調の中でそう頻繁に起こるものではなかったようです。

その意味では、今回の場合、「ダマシ」の見極めは早く決着しそうです。つまり、今週末の終値でドルが80円を大きく上回るようなら、それは「ダマシ」ではない可能性が高まるし、逆に言えば、「ダマシ」なら、今週末終値で早速ドル高は伸び悩みが鮮明になる可能性が高いのではないでしょうか。

つまり、まだドル安基調が続いているのか、それともドル高へ基調転換したか、その「審判の時」は、それほど遠い話ではないのではないかと私は考えているのですが、いずれにしてもどんな「審判」が下るかの鍵を握っているのは、米金利ではないでしょうか。
 
≪資料2≫
 
≪資料2≫は、日米の2年債利回り差とドル円のグラフを重ねたものですが、2年債利回り差ドル優位拡大に比べて、ドル高・円安の進み具合がちょっと早過ぎる感じに見えます。この52週線をドルが完全に上ぶれる動きを、日米金利差が正当化するためには、具体的には米2年債利回りが0.3%を大きく上回り、それを受けて、金利差ドル優位が0.2%を大きく上回っていくことが必要でしょう。

ちなみに、もう一度≪資料1≫に戻り、前回、ドルが一時的ながらも52週線を上ぶれた局面を見てみましょう。それは2010年4-5月でした。この時は、FRBが出口政策を模索したものの、それがギリシャ危機拡大などにより白紙化に追い込まれた局面だったのです。

52週線攻防でドル高への基調転換を試す局面では、FRBの利上げへの転換を試し、ドルの市場金利も上昇見通しが広がる必要があったわけです。今回の場合も、そのような条件がこれからどれだけ追随できるかが鍵になると思います。
 
2.HF「円売り仕掛け」の舞台裏
 
それにしても、昨年夏から、約半年もドル円は76-78円といった僅か2円のレンジを中心とした異常なほどの小動きが続いてきました。そんな異常な小動きから抜け出す動きが、「あれよ、あれよ」といった具合に広がり始めた感じがあります。その意味では、「不意の円安」ということになるでしょうか。

この「不意の円安」のきっかけは、客観的にはやはり日銀が2月14日にインフレ目標を明確化するとともに、追加緩和を決めたことだったでしょう。ただ、日銀がインフレ目標を明確にしたことと、円安になったことの因果関係はよくわかりません。

そもそも、日米のインフレ格差は2%程度といった状況が続いているため、日本のインフレ率は米国との関係で決まるもので、日銀が目標を決めたからそうなるというものではないでしょう。

その意味では、日銀がインフレ目標を明確化したから円安になったというより、この材料や日本の長期的な経常収支赤字転落説などの材料により、ドル買い・円売りを本格化させた動きが、ドル高・円安をもたらしたということだと思います。そのリード役はヘッジファンドでしょう。
 
≪資料3≫
 
≪資料3≫は、ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC統計の円ポジションですが、円買い越しが2月7日の5.5万枚から、14日には2.9万枚へ急減しました。ヘッジファンドが円買い・ドル売りを大幅に減らした、つまり14日の日銀の決定に向けて、円売り・ドル買いを急拡大させた可能性が、この統計から確認できるでしょう。

そもそも、円買い越し6万枚前後は、≪資料3≫でもわかるように、経験的には円買いの限界圏でした。その意味では、円買い・ドル売りの限界に直面し、ヘッジファンドが円売り・ドル買いへの転換を模索していたところで、日銀のインフレ目標や日本の経常赤字転落論は材料にしやすかったのかもしれません。

また、そんなヘッジファンドの取引は、120日移動平均線との関係でこれまではうまく説明できる状況が続いてきました。その120日線は、足元77.2円程度ですから、ドルはそれを大きく上回っていたわけです≪資料4参照≫。その場合のヘッジファンドは、ドル買い・円売り戦略が基本になるので、日銀インフレ目標などは材料にしやすかったと思います。
 
≪資料4≫

ヘッジファンドは、120日線をドルが上回っていると基本的にドル買い戦略になります。その意味では、77.2円よりドル高・円安で推移している間は、ヘッジファンドのポジションが、円買い越し、ドル売り越しから、円売り越し、ドル買い越しへ転換しても、ドルが買われ過ぎの限界に達するまではドル買いを続ける可能性はあります。

その意味では、ドル買い・円売りはまだ余力が残っているともいえるでしょう。その間に、現行のゼロ金利政策を2014年まで続けるといったFRBの方針が変わる兆しが出るなどによって、ドルの市場金利が明確に上がる、具体的には米2年債利回りが0.3%を大きく上回り、そして日米2年金利差ドル優位が0.2%を大きく上回ってくるでしょうか。

それによって、いよいよ円高は終わったのか、それともそれはまだで、「最後の円高」がまだ残っているかが見極められてくることになるのではないでしょうか。

ところで、今回と似たように、半年以上も異常な小動きが続いた1995年にかけてのドル円は、異常な小動きが2月に終わると、約1ヵ月半で20円近いドル急落の大波乱相場が起こりました。今回は、同じ方向か、逆方向かはともかく、「異常な小動き」で蓄えられたエネルギーの発散が波乱相場につながる可能性もちょっと気になるところではあります。(了)

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