今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/02/06 14:29「大変なこと」が起こるまで「もう一息」?

雇用統計は改善しましたが、ドル高・円安が限られたのは、米金利上昇が不十分だからだと思います。ただ、その大背景にあるFRB超低金利政策の「最後の砦」ともいえそうな欧州危機も変化し、為替でも「大変なこと」が起こるまでもう一息のところかもしれません。
 
◆雇用統計で為替はどうなる?
3日発表された米1月雇用統計は、事前予想よりとても良い結果となりました≪資料1参照≫。これを受けて、米長期金利は0.1%程度もの大幅上昇となり、それに連動する形でドルも一時76円台後半まで上昇しました。
 
≪資料1≫
 
ただ、76円台後半では、ドルも上げ渋る結果となりましたが、これは≪資料2≫からするとしょうがないのかもしれません。≪資料2≫のように、ドル円と日米金利差は一定の相関関係がありますが、それからすると、日米金利差は、ドルが大きく上昇できるほどに、まだ再拡大となっていなかったわけです。
 
≪資料2≫

今回の雇用統計に限らず、米景気指標は、この間予想より良いものが増えています。にもかかわらず、なぜ米金利はなかなか上がらないのでしょうか。≪資料2≫は、米2年債利回りですが、それは政策金利を反映する金利ですから、それがなかなか上がらないのは、もちろんFOMCが現行のゼロ金利政策を2014年まで続けると表明しているためでしょう。

こんなふうに見てくると、そもそもなぜFOMCは、景気指標が改善しているのに、ゼロ金利政策を2014年まで続けるとしているのだろうかという話になります。そして、これを説明することができたのが、欧州債務危機ということだったわけです。
FOMCは、昨年9月の会合から、欧州債務危機など米国外の要因を、超低金利政策の判断理由の一つとしてあげてきました。しかし、ある意味ではそんなFOMC超低金利政策の「最後の砦」ともいえそうな欧州債務危機も、最近にかけて徐々に改善してきました。

≪資料3≫は、欧州債務危機を象徴する動きの一つであるイタリア国債利回りですが、1月に入ってから低下傾向が続き、最近では6%を大きく下回り、昨年10月以来の水準まで低下してきました。
 
≪資料3≫
 
上述のように、FOMCが超低金利政策の判断理由の一つとして、欧州債務危機を取り上げるようになったのは昨年9月からで、それはイタリア国債利回りが5%を大きく上回るようになってきてからのことでした。じつは、そんな欧州債務危機再燃、イタリア国債利回り急騰開始となる以前の状況へ、最近は戻りつつあるわけです。

仮に、イタリア国債利回りが5%以下に戻る見込みとなったら、FOMCは超低金利政策の「最後の砦」が崩れ、2014年までゼロ金利政策を続けるとしている方針見直しに動く可能性はないでしょうか。

イタリア金利だけで、そのような金融政策の大転換となるかはともかく、2014年までゼロ金利政策を続けるとしている方針が「公約」ではなく、経済情勢次第で見直しがありうるということは、FOMC関係者自身が確認しています。 

FOMCメンバーの中で、「タカ派」の代表格とされるフィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は、1月末に報道されたインタビューの中で、次のように語っていました。

・2014年終盤というのは経済の展開次第だということを声明はかなり明確にしている
・これは約束ではないし、約束として解釈されるべきではない。経済がどう展開するかに左右される
・政策金利を年内に引き上げる必要があるかもしれない
 
それにしても、FOMCが金融政策を大転換する可能性が出てくるだけでも、金融市場は「大変なこと」になると予想されます。たとえば、政策金利を反映する米2年債利回りは、5年移動平均線からのかい離率が、マイナス80%前後といった未曾有の領域での推移が、実質ゼロ金利政策が採用された2008年12月から続いています≪資料4参照≫。

その中で、長期金利の指標である米10年債利回りの5年線からのかい離率も、マイナス40%を大きく超えて拡大、経験的には異常な下がり過ぎの可能性を示しています≪資料5参照≫。
 
≪資料4≫

≪資料5≫

こんなかつてないほどの異常な金利下がり過ぎをもたらした主因が、FOMCの超低金利政策でした。それを判断した根拠だった米景気先行き不安は後退し、米景気指標や米株から、異常な米金利下がり過ぎは説明できない状況となっています≪資料6、7参照≫。
 
≪資料6≫

≪資料7≫

その中で、異常な米金利低下を正当化してきた「最後の砦」ともいえそうな欧州債務危機も徐々に改善し、FOMCが要注意と指定した以前の状況に戻るまでもう一息といったところに、じつは変化しているわけです。

この「もう一息」がなかなか実現しなければ、異常な米金利低下は大きく変わらず、その中ではドル高・円安には限界があり、何かの拍子にドル安・円高が加速する危険も残っているのかもしれませんが、「もう一息」が実現し、異常な米金利低下の修正が本格化に向かうようなら、為替にも「大変なこと」が起こるのではないでしょうか。(了)

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