今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/01/30 14:052月の為替を予想する

1.「脱・小動き」のXデー
 
ドル円は、昨年7月頃から、76-78円を中心とした非常に狭いレンジでの小動きが、延々とすでに半年も続いてきました≪資料1参照≫。ところで、同じように、2-3円といった狭いレンジでの小動きが半年以上も続いた例は、1994年後半から1995年初めにかけてもありました≪資料2参照≫。その意味では、最近の「異常な小動き」も、決して前例のないものではなかったようなのです。
 
≪資料1≫
 
では、今回の前例となるかもしれないその「異常な小動き」はどのように終わっていったのでしょうか。年が明けたところから、にわかにレンジ・ブレークを試す動きが出始めると、2月に入ってついにレンジのドル下限を完全に割り込んで大波乱の展開に向かっていったのです。

さて、こんなふうに過去の似たケースを参考にすると、今回の場合も、延々と半年も続いてきた「異常な小動き」からの突破を試す動きが、年が改まったことをきっかけに徐々に出始め、それがいよいよ相場の本格動意再開につながる可能性は注目されるところです。
 
≪資料2≫
 
2.FOMC金融緩和強化の「真相」
 
ところで、いよいよそんな「脱・小動き」となるなら、それはドル安でしょうか、それともドル高でしょうか。≪資料3≫は円のポジションですが、これを見ると、投機筋はかなり円買い・ドル売りに傾斜した状況にあるようです。その意味では、本来的にはさらなる円買い・ドル売り拡大には限界があると思います。
 
≪資料3≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
また、日本政府は、昨年3回円高阻止介入を行いましたが、それは市場が円買い・ドル売りに大きく傾斜し、さらなる円買い・ドル売りに限界がありそうな状況を狙うというのが基本でした。そういった日本の円高阻止介入に、欧米諸国はこのところ批判的な立場を明確にしていますので、介入を続けられるかは一つの鍵になるでしょう。

ただ野田政権は、そのような欧米からの介入批判の中でも、現在審議中の第四次補正予算で、さらなる介入資金枠の拡大を盛り込んでいます。これは、国内から反発の強い消費税法案を成立させるまでは、単独でも円一段高回避を続ける準備ととれなくありません。
 
さて、もう一つ、「脱・小動き」の方向を考える上での焦点は米金利の動きでしょう。≪資料4≫のように、ドル円は日米金利差との相関性が基本的に高いということがありますから、ドルの市場金利が大きく上昇する見通しとならないと、ドル高・円安は期待しにくいわけです。
 
≪資料4≫
 
そういった中で、先週行われたFOMCでは、現行のゼロ金利政策を2013年半ばまで続けるとしていたところを、さらに2014年末まで続けると延長しました。FRBは、今後2年以上利上げをしない見通しとなったわけです。こうなると、ドルの市場金利も上昇は期待できず、むしろさらに低下する可能性もあるのでしょうか。

ところで、今回のFOMCの決定は、株価との関係で見ると違和感がありそうな話です。≪資料5≫のように、FOMCが最初にゼロ金利の2013年半ばまでの継続を決めたのは昨年8月の株価急落を前後したタイミングでした。つまり、株価急落も含めた、景気の先行きへの見方が急悪化したことを受けた政策判断だったでしょう。

その株価は、すでに急落前の水準に戻ってきました。それには、「時間軸効果」と呼ばれる、このゼロ金利の長期継続を具体化した政策の効果もあったと思います。それにしても、株価の急落は収拾されたわけですから、「時間軸効果」も役割を果たしたとして取り止めてもおかしくなさそうなところ、むしろ逆に一層強化してきたわけです。
 
≪資料5≫
 
その原因は、株価こそ、急落前の水準に戻ったものの、一方で依然としてまったく元に戻っていないものもあるからでしょう。それは金利です。≪資料6≫は、米株と米金利を重ねたものですが、米株が急反発してきた中でも、米長期金利は2%前後といった史上最低水準近辺での推移が大きく変わっていません。
 
≪資料6≫
 
米株の上昇は、最近の米景気指標改善などを受けた、米景気回復期待に対する素直な反応ということでしょう。そういった状況の中で、なぜ米金利は上げ渋る展開が続いてきたのでしょうか。その謎をとく鍵は、≪資料7≫にありそうです。
 
3.欧州危機とドル円の関係
 
これは、米長期金利と、欧州債務危機の象徴的な動きの一つであるイタリア国債利回りを上下逆にして重ねてみたものです。これを見ると、両者は昨年11月頃から高い相関関係が続いてきたことがわかるでしょう。
 
≪資料7≫
 
要するに、米景気指標の改善を受けて、本来なら米金利も上がっておかしくないところ、欧州債務危機に足を引っ張られる形で、それは実現せずに今に至ったということでしょう。その意味では、FOMCが米株急落が収拾され、米景気指標も改善が目立ってきたにもかかわらず、「時間軸」延長で金融緩和を強化に動いた理由は、雇用を含めた景気回復がまだ物足りないということとともに、欧州債務不安が続いているということがあったでしょう。

このように見てくると、ドルの行方を考える上で重要な鍵を握っている米金利は、かなりの割合で欧州債務危機次第といった構図になっているようです。では、その欧州債務危機はどんな状況にあるのでしょうか。

≪資料8≫は、欧州全体の信用リスクを示す欧州CDS指数ですが、昨年10月初めを大底として、昨年11月下旬が「二番底」の形で、信用回復が着実に広がってきたことを示しています。では、これをもたらしたのは何かというと、米景気回復を受けた米株上昇の役割も大きかったようです。≪資料8≫のように、両者は高い相関関係で推移してきたのです。

ギリシャやポルトガルなど、欧州債務問題は、依然として部分的には危険な問題も抱えています。ただ、ECBの流動性対策なども一定の効果を発揮し、そしてグローバリゼーションの時代だけに、米景気回復を受けた世界景気の回復は、欧州債務問題にとっても支援効果を発揮してきたようです。
 
≪資料8≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
さきほどご覧いただいた≪資料7≫からすると、イタリア国債利回りが6%を大きく下回ってくると、逆相関の関係にある米10年債利回り、長期金利は2%を大きく上回ってくる見通しになります。

欧州では、3月にかけて国債入札を無事乗り切れるかが注目されていますが、その影響は米金利の動きを通じ、いよいよ「脱・小動き」が起こることになった場合のドル円において、それがついにドル高・円安への転換となるか、それとも「最後の円高」波乱に向かうかを決める重要な鍵を握っている可能性があるのかもしれません。(了)
 

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