今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/01/23 14:59金融市場「ユーロ本位制」の変化

1.なぜ先週ユーロは反発したのか?
 
先週の為替市場は、S&Pによる欧州諸国の国債格下げの影響が注目される中での取引スタートとなりましたが、ユーロはむしろ急反発に転じる展開となりました。これはまず、格下げで懸念された入札に伴う資金調達が、無難に終わったためでした。

ただそれはある意味で当然だったでしょう。たとえば、今回、最も注目されたのは仏国債が最高格付けを失うということでしたが、同じように、昨年8月、米国が最高格付けを失った後も、入札などへの影響はありませんでした。

それでも、今回の格下げが、そういった昨年8月の米国のそれを上回るほど厳しいものだったら影響も違ったかもしれません。たとえば、仏国債格付けについても、一部には一気に2段階の格下げになるといった予想もあり、また独についても格下げされるとの予想もあったのですが、結果的にはそこまで深刻なものにはならなかったわけです。≪資料1参照≫
 
≪資料1≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
このように入札が順調に進む中で、欧州の金利、株式市場は安定した展開になると、すでに空前の売り越しとなっていることから、前代未聞のユーロ売りリスクをとった形になっている為替市場が、持続するのは微妙になったということでしょう。≪資料2参照≫

ユーロが先週、急反発に転じたのは、そういったふうに理解するのが基本になると思います。
 
≪資料2≫

2.「不思議のユーロ高」の理由
 
ではこの先もユーロ反発は続くのでしょうか。もしも続くとしたら、それは売られ過ぎの修正圧力がそれだけ強いということに尽きるでしょう。上述のように、格下げは予想ほど深刻ではありませんでしたが、かといってポジティブに受け止められる結果でもありませんでした。

それに、あまり目立っていないかもしれませんが、予想通り深刻な結果もありました。具体的にはポルトガルのケースです。ポルトガルは一気に2段階の格下げとなった結果、ジャンク債並み格付けとなってしまい、デフォルト懸念が浮上し、年内の支援は不可避との見方になっています。

欧州を取り巻く材料は、全体的には悪材料の方が依然として圧倒的に多い状況に変わりありません。その意味では、ユーロ安とならず、ユーロ高になる方がよほど不思議なのですが、そんな「不思議のユーロ高」を説明できるのは売られ過ぎの反動といった市場メカニズムの影響ということになるでしょう。

たとえば、ユーロはとても動く通貨として知られています。ユーロドルの月間値幅平均は、過去3ヶ月で800ポイントを超えています。ドル円の感覚でいえば、一ヶ月に8円の値幅で動いているようなものですから、凄い動きといえそうです。

そんなユーロドル、この1月は20日までの段階で値幅が450ポイント程度にとどまっています。この数ヶ月のユーロドルの値幅は800ポイント程度になっても普通だし、最低でも600ポイント以上になってきたことからすると、この1月もまだ値幅拡大余地を残している可能性はあるでしょう。

値幅を600ポイント以上に拡大するとして、それがユーロ高方向なら1.32ドルに届く計算になり、ユーロ安方向なら1.25ドル割れの可能性を残している計算になるわけです。それは、債務問題を巡る材料とは関係ない、市場メカニズムからのヒントということになるでしょう。
 
3.「ユーロ本位制」から「特殊のユーロ」
 
ところで、そんなユーロは、よく動くということもあって注目を集めがちですが、金融市場全体、そして為替市場での他の通貨への影響といった点でも、実は決して主役ではなく、むしろ「脇役」になっている可能性もあるのかもしれません。

たとえば、≪資料3≫は、欧州の信用リスクを示す欧州CDS指数とユーロドルのグラフを重ねたものですが、かつては欧州の信用リスクを反映するように、重なり合って動いていたユーロが、最近はほとんど関係ない動きになっているのがわかるでしょう。
 
≪資料3≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
むしろ、≪資料4≫のように、欧州の信用リスクは、ユーロより米国の株、NYダウとの相関性が高くなっています。そして、そんなNYダウは、≪資料5≫のように、豪ドル円もうまく説明できそうなのです。

こんなふうに、世界の金融市場でこの間最も影響が大きかったのは、米景気回復を受けた米株の動きだったでしょう。つまり、米株を「主役」として、リスクへ資金が回帰する動きが最近にかけて展開してきたわけです。

その中では、止まらないユーロ安はむしろ、全体的なリスクへの回帰の流れとは一線を画した特殊な動きだったのではないでしょうか。しかし、このユーロ安が「主役」だとすると、金融市場全体もリスク回避が続いているような印象になるため、見誤る可能性があったのかもしれません。

≪資料4≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
≪資料5≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
ところで、株や資源国通貨といったリスク資産が上昇することとユーロ安の共存を説明できるのはユーロキャリーという考え方です。ユーロは欧州債務不安から売られているのではなく、資金調達通貨となって、ユーロを売って、より利回りが高く、キャピタルゲインが期待できる先での運用が拡大しているということです。

そうであれば、ユーロとリスク資産はむしろ逆相関の関係になる可能性すらあるのかもしれません。株や豪ドルなど資源国通貨が下落するとユーロ高になるといった関係です。

欧州債務危機が世界経済の関心の中心で、ユーロが世界の金融市場に影響を与えるといった「ユーロ本位制」の構図が変わり、ユーロは金融市場全体の動きからすると「脇役」だったり、むしろ逆相関のシグナルになっている可能性もあるといった認識は一つ大事なのかもしれません。(了)

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