今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/01/18 14:11欧州債務危機相場の「標準シナリオ」

欧州債務危機相場は、結局、「この1-3月の欧州諸国の国債大量償還を乗り切れるかが焦点で、そのためにECBが債務国債券購入を拡大、実質的に「ECB版QE(量的緩和)」に踏み切るところまで一段落しないのだろう」。あるユーロの専門家、ECBウォッチャーはそんな見方を示しましたが、これがマーケットの「標準シナリオ」ではないでしょうか。

一方で、ユーロ売りが、円キャリー「バブル」並みに拡大している中で、また、悪材料が当たり前の欧州債務危機の中で、数少ないながらも出てきた好材料で、その「標準シナリオ」がどのように修正される可能性があるのかも一つの注目点だと思います。
 
◆「ECB版QE」の催促相場
欧州債務危機は根の深い問題です。それを象徴するのがギリシャでしょう。ギリシャの場合は、自然にまかせたらデフォルトになる状況と理解されているわけです。ただそうなると、それはギリシャにとどまらず、他の欧州諸国にも波及する可能性が高い。そうすると、ユーロ崩壊に繋がる惧れが出てくるわけです。

そんな最悪シナリオを回避するためには、ギリシャも無秩序なデフォルトを阻止し、あくまでも秩序あるデフォルトに収めたい。ただ、そのためにはこの景気低迷の中でも財政再建を進めることが大前提になります。

景気低迷の中で、財政政策が使えないとなると、金融政策へのしわ寄せが一段と強いものになります。金融政策が財政政策も肩代わりするということで、その典型が中央銀行が直接国債を購入する、「国債引き受け」、「量的緩和」ということになります。

これは、一線を越えたら通貨の信用を失墜させかねない政策であり、一定の範囲内にとどまっているにしても金融緩和政策ですから通貨安を指向する政策です。以上のように考えると、この欧州債務危機相場は、ECBの国債購入拡大、「ECB版QE」登場となるまでは基本的に終わらず、その間ユーロ売りは不変というのが「標準シナリオ」であることは理解しやすいでしょう。
 
◆「標準シナリオ」が修正される鍵とは?
ただ、そんな「標準シナリオ」が展開する中で、小さいながらも予想よりも良い材料が全く出ていないわけではないようです。たとえば、ギリシャ、アイルランドは、国債利回りが「危険ライン」を突破してから一定期間内に支援不可避に追い込まれました。この「危機パターン」は、昨年暮れにかけてイタリアについても注目されましたが、じつはイタリアはその期間を過ぎても支援に追い込まれることとはならず、「危機パターン」は変化してきました。

S&P格下げにしても、独を含むすべてのユーロ圏諸国が格下げの対象とされましたが、独などは結局格下げとはならず、最大の焦点となった仏も、2段階一気に引き下げられるとの見方も一部にあったようですが、結果的には一段階の格下げにとどまりました。

こんなふうに、「想定の最悪より良い結果」も少しずつ出てきたようです。それにしても、結局ECB版QEが実現しない中では、大勢に影響なしということでしょうか。

ユーロは、そもそも昨年12月頃から、欧州の信用リスク指標からかい離が目立っているので、ユーロ安が欧州債務危機のインデックスということではなくなっていると思います。それに、財政緊縮・金融緩和のポリシーミックスからすると、通貨安は整合的な動きです。最近、ファロンパイEU大統領などのユーロ安歓迎発言も一部で報道されました。

ユーロの適正価格の目安である購買力平価は1.2ドル程度ですから、「そもそもなぜこんなにユーロが高過ぎる水準で推移しているのだろうか」(ECBウォッチャー)といった意見もあるほどです。

ただ、このように「誰が見てもユーロ売りが当然」といった中でこそ、「バブル」が発生する危険は潜んでいます。売り買いについての見方が拮抗している時には「バブル」は発生しないので、それとは逆の環境といえるでしょう。

2007年6月にかけての投機筋の円売り越しは、円キャリーの全盛期で、後から振り返ったら、「円売りバブル」のピークでしたが、最近の投機筋のユーロ売り越しが、そんな2007年の円売り越しの規模に近付いてきたのはちょっと気になるところではあります。(了)

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