今週はこう動く! マーケット羅針盤

2012/01/04 14:312012年の為替を予想する・ユーロ編

ユーロは短期的に強気、中期的に弱気と考えています。短期的には1.4ドル程度までのユーロ高がありそうだと思っていますが、その後は1.1ドル目指すといったシナリオです。ただ対円では100円を大きく割り込むユーロ安は短期的にとどまると思っています。
このような見方になる理由の一つは、対米ドルで「割高」だが、対円では「割安」といった具合に、ユーロは全く別々の顔を持っているということです。
 
◆ユーロが1.1ドルを目指す理由
まずは≪資料1≫をご覧下さい。これは、ユーロドルの適正価格の目安である購買力平価からのかい離率のグラフです。ユーロドルの購買力平価は、現在1.2ドル程度ですから、これだけ欧州債務危機への懸念が強い中でも、1.3ドル程度でユーロが推移している中では、ユーロは適正価格より割高ということになるわけです。
欧州債務問題への、独仏を始めとしたユーロ圏各国の対応が強い批判を浴びていますが、そのような批判が正当かは別にしても、この問題が簡単には解決しない、解決にかなり時間のかかる問題であるといった点についてはほとんど異論がないと思います。
 
≪資料1≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
とくに、金融政策については、ECBが利上げを再開するのはかなり先になりそうです。米国、FRBも2013年まで利上げをしない、つまり2012年中には利上げをしない方針としていますが、債務問題の深刻さ、そして急落した欧州の債券の損失を受けた欧州の銀行の信用不安などを考えると、ECBの利上げはFRB以上に時間がかかりそうと考えるのが普通ではないでしょうか。

そういった金融政策の見通しなどからすると、ユーロが割高を維持するのは普通に考えて、まず難しいと思います。中長期的な悪材料である欧州債務問題を抱え、それに対して低金利などの政策対応を長期的に余儀なくされると予想されるユーロとしては、基本的には適正価格より割安へ向かう動きと考えるのが妥当でしょう。

適正価格の目安である購買力平価がさきほどお話したように1.2ドル程度ですから、基本的にはそれを割り込む流れということでしょう。ユーロは、2010年に世界経済を震撼させたユーロ危機第一幕で、一時1.18ドルまで急落しました。それを割り込むようだと、一段とユーロ安が加速する可能性も十分あると思います。

後で詳細に述べますが、私は一方で短期的にはユーロが1.4ドル程度まで反発する可能性もあると考えているのですが、それが当面のユーロ戻り高値の限度だろうと思っています。かりに、1.4ドルが2012年のユーロ上限になるなら、このところ一年間のユーロドルの値幅は、2000-3000ポイント程度が普通なので、2012年のユーロ下値目処は1.1-1.2ドルといった見通しになるでしょう。
 
◆それでも対円でのユーロ安は限られるのか
さて、こんなふうに数年スパンといった具合に中長期的な懸案である債務問題を抱えながら、依然として対米ドルでは適正価格より割高なユーロだけに、2012年は一段安が不可避と考えているわけですが、ほぼ同じような理屈で考えると、対円でのユーロ下値は対米ドルに比べて限られそうだと思います。
 
≪資料2≫
 
≪資料2≫は、ユーロ円の適正価格の目安である購買力平価からのかい離率です。ユーロ円の購買力平価は、足元で110円程度ですから、つまり最近は適正価格よりユーロ割安になっていることになるわけです。

さっき述べたように、1.3ドル程度のユーロの対米ドル相場は、適正価格より割高でした。だから、中期的に一段安見通しとなったわけです。これに対して、100円程度のユーロの対円相場は、適正価格よりすでに割安なのです。

中長期的な債務問題を抱え、それへの政策対応として低金利も長期化の見通しになっているユーロだけに、対円でも一段と割安を拡大していく可能性はもちろんあるでしょう。たとえば、≪資料2≫を見ると、かつてユーロは対円でも適正価格より2割以上の割安になったこともありました。今回も購買力平価より2割の割安になるなら90円を割れる計算になります。

ただし、まだ割高な対米ドルでのユーロ下落余地と、すでに割安となっている対円でのユーロ下落余地では差があるでしょう。つまり、対米ドルでのユーロ一段安見通しと異なり、対円でのユーロは意外と下落余地が限られるのではないかと思うわけです。

たとえば、ユーロ円は100円を大きく割り込む可能性も低く、かりに割り込んだとしてもそれは短期的な動きにとどまるのではないかと私は考えています。

≪資料3≫は、ユーロ円の5年移動平均線からのかい離率です。これを見ると、100円台前半を中心に推移してきたこの数ヶ月のユーロは、中長期的にかなり下がり過ぎ限界圏での動きだったといえそうです。

この5年線からのかい離率からすると、当面数ヶ月において100円を大きく割り込むユーロ安は、記録的なユーロ下がり過ぎということになります。以上からすると、ユーロは100円を大きく割り込む可能性が経験的には低いと思うし、それが起こったとしてもそのまま長期化するのではなく、短期的な動きにとどまるのではないかと考えているわけです。
 
≪資料3≫
 
◆短期的にはユーロ高がありうる可能性
このように中期的にはユーロは対米ドル中心に下落余地が大きいと思いますが、ただ短期的にはいったん戻す局面があるのではないかと私は考えていますので、それも最後に少し述べたいと思います。

ユーロ安がこのまま一本調子で広がるのではなく、いったんユーロ反発が起こる可能性があるのではないかと私が考えているのは、そもそも最近のユーロ安を巡る動きが一方的過ぎるのではないかと思っている点にあります。その一例として、最近の債務危機対策への批判について述べたいと思います。

独仏を中心としたユーロ圏の債務対策は、抜本的ではないとの批判が強いようです。ただ、欧州専門家の一部には、「それほど悪くない対策」と評価する見方もあります。このように評価が異なる原因の根本を辿ると、米英と欧州の金融システムの違いがありそうです。米英、「アングロサクソン流」は投資銀行、証券会社の直接金融が主役であるのに対し、欧州は間接金融が主役ということです。

欧州専門家の一部が、今回のユーロ圏の債務対策を「それほど悪くない」と評価しているのは、間接金融が主役の欧州の金融システムでは、銀行支援のための流動化対策が中心になるのが当然で、それは期待通り、ある意味では期待以上にできているという意味です。

ところが、債務対策が不十分と厳しく評価する見方は、流動化対策ではなく、FRBやBOEのように中央銀行が直接に債券を買い支える、QE、量的緩和をECBがやらないことが不満の中心になっているようです。

債券を発行したり株で直接資金を調達する直接金融の下では、確かに中央銀行が債券を直接購入する量的緩和になるところ、銀行を通じた間接金融での中央銀行の対策が同じでなければだめだというのも「一方的過ぎる」気がします。欧州は米英ではないし、もちろんECBもFRBではないから、合格の対策も同じではないと思います。

私は、そもそもECBが昨年2度も利上げを行ったことが、債務危機を再燃させた一因だと思っているので、その意味ではECBの政策的失敗はあったと思います。ただ最近にかけては、さすがに「欧州発世界恐慌」も懸念される中で、今述べてきたように、アングロサクソンとは異なる欧州金融システムの中では合格点に近い対応になっていると思います。

夏までのECB利上げはとくに批判せず、債務危機が再燃したら、とたんに抜本的対策を求める大合唱になっているような風潮にも一方的な行き過ぎたものを感じるので、これも目先的にユーロ下落がそのまま行くことにはならないのではないかと感じる理由の一つなのです。 (了)

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