今週はこう動く! マーケット羅針盤

2011/12/28 14:242012年の為替を予想する・後編

2012年のドル円予想・後編です。来年のドルの行方において最大の鍵を握るのは2013年まで利上げはしないと宣言しているに等しいFRBが、その宣言を撤回するかであり、私はその可能性があると考えているのです。
 
◆「裏切りの景気回復」がついに変わる可能性
私が考えるように、バーナンキが、「間違える」なら、早過ぎる引き締め政策への転換ではなく、むしろ緩和し過ぎといった覚悟を決めているとしたら、その背景には、「100年に一度の危機」が一段落した後も、景気回復期待がことごとく裏切られてきたということが当然あるでしょう。
 
たとえば、覚えている人が少ないかもしれませんが、FRBは2010年春にかけていったん超低金利政策から「出口政策」、つまり引き締めへの転換を検討したことがありました。しかしそういった中で、欧州債務危機が広がり、2010年夏にかけて米景気も「二番底」懸念が浮上したわけです。
 
また、今年ECBは2回も利上げを行いました。それと関係があるかはともかく、その後は欧州債務危機が最近にかけて深刻化するところとなってきたわけです。こんなふうに、欧米とも、ここ1-2年の引き締め政策への転換は、「鬼門」のような結果をもたらしてきたわけですから、懲り懲りになっている面はあるでしょう。
 
ただ、だからと言って、それが2012年も続くかは微妙ではないかと私は考えています。そろそろ、景気回復期待が裏切られる構図が変わってくる、2012年はそんな年になる可能性があるかもしれないと思っています。
 
≪資料1≫をご覧下さい。まずこの青色のグラフは、日本でバブルが崩壊した1990年からのインフレ率の推移です。そしてこの赤色のグラフは、米国のバブル破裂、2000年のITバブル破裂後の米国のインフレ率の推移です。
 
こんなふうに、日米とも、バブル破裂後は同じようにインフレ率低下が続いたわけですが、日本ではそれがさらに続き、ついにはデフレへ転落となっていったのに対し、米国では、バブル破裂から4年過ぎた頃からインフレ率が底打ち、上昇へ転じていったわけです。
 
これに、2007年から最近にかけての米国のインフレ率のグラフ、緑色のグラフを重ねてみると、こんなふうに「バブル後日本」のそれより、「ITバブル後米国」のそれに良く似ていることがわかるでしょう。この似た状況がこの先も続くなら、米国ではこの先インフレ率がさらに上昇し、景気回復が広がっていく見通しになるわけです。
 
≪資料1≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
◆「米国は日本ではない」が試される2012年
ところで、もう一度話しを戻し、なぜバブル後の展開が、日米でこんなふうに違うところとなったのでしょうか。大きな要因の一つに為替の動きがあったと思います。
 
≪資料2≫は、バブル後の為替、つまり1990年からの円の対ドル相場、そして2000年からのドルの対円相場を比べたものです。これを見ると、バブル破裂後、株価が3年近くも暴落に向かっていったのに対し、通貨はむしろ上昇に向かっていたことがわかるでしょう。バブル破裂後は円もドルも上昇が続いたのです。
 
≪資料2≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
しかしそれは、バブル破裂から3年過ぎた辺りから変わってきました。円高はさらに続き、1995年には「超円高」となったことから、これが改めて日本経済に打撃を与え、バブル破裂第二幕のトリガーになったのに対し、米国ではドル安へ転換したのです。
 
このドル安がインフレ率上昇の一因になったと考えると、日米のインフレ率が、バブル後3-4年過ぎた頃から別々の方向に向かったのも理解できそうです。そして、最近の米国のインフレ率が、バブル後日本ではなく、ITバブル後の米国自身に似ていたのも当然のような気がします。
 
米国は日本に似ておらず、米国自身に似ている。そうであるなら、景気回復期待が裏切られ続け、インフレ率の低下が続いてきた局面はそろそろ転換に向かう可能性があり、2012年とはそんな年になる可能性があるわけです。
 
≪資料3≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
≪資料3≫のように、2007年から数えると、2012年は5年目になります。バブル後日本は5年過ぎた辺りから、バブル破裂第二幕へ向かい、金融危機、そして本格的なデフレへ突入するところとなったのです。これに対して、ITバブル後の米国では、4-5年経過すると利上げが始まりました。
 
最近の米国のインフレ率は、そんなITバブル後の米国と似ていることをさっき確認しました。そうであれば、2012年という年は、「間違えるなら緩和し過ぎ」と覚悟を決め、2013年まで超低金利を続けるとしているバーナンキが、その方針を変えずにいくかが試される年になるのではないかと私は思います。(了)
 

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