今週はこう動く! マーケット羅針盤

2011/12/26 17:382012年の為替を予想する・前編

今回は2012年の為替展望について述べてみたいと思います。最初に結論を述べると、私は、2012年は新たな円安・ドル高が始まる年、「ドル高元年」になるのではないかと考えています。キーワードは、「バーナンキの豹変」だと思っています。
 
◆円高・ドル安はいつ終わってもおかしくない
今回の円高・ドル安は、2007年6月124円から始まったので、すでに4年半も続いています。過去20年余りについて調べてみると、円高・ドル安基調は3回あったのですが、その平均持続期間は3年1ヶ月で、最長は5年でした。その意味では、今回の円高はすでに平均を大きく上回るものになっているわけです≪資料1参照≫。
 
≪資料1≫
 出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
また、今回の円高は75円台を記録していますが、124円からのドル下落率を計算すると約40%にも達したことになります。ちなみに、過去3回の円高・ドル安基調において、ドル下落率は平均35%、最大50%でした。
このように、今回の円高・ドル安は、持続期間、ドル下落率ともに、過去の平均を大きく上回っているわけですから、その意味ではいつ終わってもおかしくないし、かりに過去最大の円高・ドル安記録に並ぶとしても、2012年半ばで終わる計算になるわけです。このように考えると、2012年は、新たなドル高・円安基調が広がっていく年になる可能性が高いといえるでしょう。
 
◆「間違えるなら緩和」、確信犯のバーナンキ
ただこういう話を聞いても、なかなか新たな円安・ドル高が始まっていく気になれないという人は少なくないかもしれません。そしてその最大の理由は、米景気が大きく回復し、利上げができる状況が、この2012年中に実現すると思えないということでしょう。

確かに、円売り・ドル買いが継続的に、そして本格的に拡大する上では、FRBの利上げは不可欠の要素のようです。≪資料2≫は、日米政策金利差と円のポジションのグラフを重ねたものですが、これを見ると、円売り・ドル買いが継続的かつ本格的に拡大するためには、日米政策金利差ドル優位が、大幅に拡大することが必要だったことがわかります。
 
≪資料2≫
出所:BloombergよりMarket Editors作成
 
これに対して、FOMCは、2013年半ばまで、現行の超低金利政策を続けると述べています。つまり、2012年中には、基本的には利上げをしないと言っているわけですから、そうすると、2012年中に新たな円安・ドル高が始まることに対し、懐疑的に思う人が多いのも当然ではあるでしょう。ただ本当にそうでしょうか。

こんな資料をご覧いただくと、ここに来て突如、「利上げ前夜」のような状況になってきたようでもあるのです。≪資料3≫は、米国の失業率と政策金利であるFFレートを重ねたものです。失業率は、失業率の名目値から過去10年平均を引いて計算したいわゆる「修正失業率」ですが、それにしても両者はとても相関性が高いことがわかるでしょう。

それとともに、この≪資料3≫を見ると、失業率がもう少し改善すると、FFレートは引き上げ、つまり利上げが可能な状況になっているように見えませんか。細かい計算をすると、失業率が8.25-8.5%程度まで低下してくると、FFレートは引き上げが可能な状況になってくるのです。

12月初めに発表された11月失業率は一気に8.6%まで大幅に低下する「ポジティブ・サプライズ」の結果となりましたが、じつはこれにより、これまでの経験からすると、俄然「利上げ前夜」のような状況になったのです。
 
≪資料3≫
 
ただその割に、一般的にはほとんどそんな「利上げ前夜」の感じはなく、むしろ2012年中の利上げはまず無理だろうとの見方が多いのは、主に2つの理由があるのではないでしょうか。

第一の理由は、FRBが利上げが可能となる8.5%を大きく下回る失業率の低下が、2012年中に実現するとそもそも予想しておらず、それは2013年末までかかると考えているからということです。

≪資料4≫は、米国の金融政策を決める会合であるFOMCが11月に公表したFOMCメンバーによる失業率見通しをまとめたものです。これを見ると、失業率は2012年末でも8.5%以上で推移しているというのがFOMCの中心的な見方になっています。その上で、利上げが可能となる8.2%を失業率が下回ってくるのは2013年末という見方になっているわけです。

こういった失業率見通しだからこそ、FOMCは2013年半ばまでの超低金利政策継続という考え方を示しているということでしょう。ただ私からすると、このようなFOMCの見通しがどれだけ当てになるかなとも思います。

≪資料4≫のように、FOMCも今年6月時点までは、2012年末までに失業率が利上げが可能な8%前後まで低下するといった予想が中心だったのです。それを過去半年で大きく修正してきた結果が、失業率の大幅な改善は2012年中は期待できず、2013年以降になるというものなのです。
 
≪資料4≫

嫌味な言い方をすれば、そもそも失業率の見通しが外れたFRBが、見通しを変えたから当たるかは微妙ではないでしょうか。ただそれは、バーナンキ議長も承知の上なのかもしれません。バーナンキは、ある意味では確信犯的に、金融政策判断で間違うなら、早過ぎる引き締めではなく、緩和し過ぎることと腹をくくっているようにも見えます。

≪資料3≫のように、失業率との関係でみると、じつは「利上げ前夜」のような状況になっている割に、マーケットの見方はそれとは正反対に、利上げはまだまだ先で、2012年中はまず無理、それどころか追加の緩和、QE3の可能性すら十分あるとの見方が少なくない2つ目の理由は、今述べたようにバーナンキが「間違えるなら緩和し過ぎ」と覚悟を決めていることを薄々感じているということではないでしょうか。(後編に続く)

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