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2011/09/07 13:52スイスフラン高阻止策は成功するのか

スイスが、自国通貨フランの対ユーロ上限を決めるといった異例の通貨高阻止策を発表しました。この異例の政策は成功するのかについて今回は考えてみたいと思いますが、直感的には成功するかもしれないと思っています。

◆2割の急落は経験的には基調転換
今回のスイスフラン急落で、この間の高値からの反落率は、対米ドル、ユーロでともに20%以上となってきました。これをドル円にたとえると、76円程度から90円程度の円安・ドル高になった意味になります。

ドル円が90円までドル高・円安に戻ったら、あなたはもう円高基調が終わって円安基調へ転換したと思いますか、それともまだ円高基調は続いており、「綾戻し」に過ぎないと思いますか。

経験的には、20%程度逆方向に振れる動きは、「綾戻し」ではなく、基調転換の可能性が高いようです。たとえば、2007年6月124円から展開してきた今回のドル安・円高基調の中でも「綾戻し」であるドル反発、円反落は何度かありましたが、せいぜい15%程度だったのです。

その意味では、20%程度のドル反発、円反落は、感覚的に「綾戻し」ではなく、基調転換が始まっていると感じさせる可能性が高いのではないでしょうか。今回の場合、ドル円ではなく、スイスフランの話ですが、あくまでドル円の感覚を参考にすると、スイスフラン高基調は終わった可能性がありそうなのです。


◆G7特定水準コミット成功例との共通点
今回のスイスの政策は自国通貨高阻止策です。一般的に通貨安阻止策と通貨高阻止策では、通貨安阻止策の持続性が困難であり、限界があるといえるでしょう。通貨安阻止策は、自国通貨を買い、外貨を売る介入を行うわけですが、売るための外貨の保有には自ずと限界があるからです。これに対して、基本的に自国通貨売り介入は無制限に近く可能でしょう。

それでも、歴史的にはそんな通貨安阻止で、今回のスイスのように特定水準にコミットし成功した例がいくつかありました。1987年12月、G7(7カ国財務相会議)のクリスマス合意であり、そして1995年4月のG7リバーサル合意はその例でしょう。

1987年12月G7クリスマス合意は、「これ以上のドル下落を望まない」として、120円をドル下限にするドル安阻止合意でした。結果的にこの120円はその後5年以上ドル下限として機能したのです。

また、1995年4月に、G7は「為替相場を反転させる」といったリバーサル合意を決めました。ここでドルは80円で底を打つと、この80円はまさに最近まで15年以上ものドル底値となったわけです。

なぜこのように、基本的には困難で、政策の持続性に限界のある通貨安阻止策が成功したかといえば、当該通貨、この場合は米ドルですが、それが「異常な割安」になっていたからということは一つの理由だったと思います。

≪資料≫は、ドル円の適正水準の目安である日米生産者物価で計算した購買力平価からのかい離率です。これを見ると、購買力平価より3割前後割安になったところから、ドルは下がり過ぎの限界の可能性があり、今見てきた1987年12月、1995年4月は、この≪資料≫では1位、2位のドル下がり過ぎとなっていました。

特定水準にコミットした通貨安阻止策が一定の成功をおさめたのは、このようにそもそもその通貨が下がり過ぎだったからということが一因だったと思います。スイスフランは、2010年にも対ユーロでの通貨高阻止策を行い失敗した形となりましたが、その当時から比べて最近はかなり割高(ユーロ割安)になっているようですから、その意味では成功の可能性が高くなっていると思います。


◆大恐慌後の米国債「無制限介入」
今回スイスは、通貨高を阻止するために外貨を無制限で購入する「無制限介入」の方針を発表しました。この外貨は基本的にユーロと見られますが、そのユーロの政策当局であるECB(欧州中銀)が「スイスの方針を留意する」といったコメントを出したとの報道もあるようですから、一定の合意を得た動きの可能性が高そうです。

ところで、「無制限介入」で思い出すのは、為替ではなく債券であり、かつて米国で行われた例です。1930年代の大恐慌から抜け出すため財政政策を大盤振る舞いしたツケで、インフレリスクが高まり、債券が暴落しかねなくなった局面で行われたのが米国債の「無制限介入」でした。

この時は、米財政当局である財務省と、FRB(米連邦準備制度理事会)の間で、債券利回り2.5%を目安に、それより利回り上昇、価格下落となることを回避するべく無制限でFRBが債券を購入することで合意、それは「アコード」と呼ばれました。これも一定の成功をおさめたのですが、さて今回はどうでしょうか。(了)

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