今月の特集

2014年06月安倍政権の成長戦略、為替相場への影響は?

成長戦略とは?

安倍政権の成長戦略とは、アベノミクスの3本の矢のうち、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」に続く、第3の矢にあたります。最初の2本が短期的な景気対策の色合いが濃いのに対して、成長戦略は構造改革によって経済の成長力そのものを高めていこうとするものです。

これまでの成果は?

安倍政権の成長戦略は、2013年6月14日に、「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」として閣議決定されました。その柱は、(1)産業基盤の強化、(2)新たな市場の創造、(3)国際市場の獲得の3つでした。

そして、安倍首相が成長戦略実行国会と位置付けた昨年の臨時国会において、11-12月にかけて、産業競争力強化法、国家戦略特別区域法など9つの関連法案が成立しました。

ただ、雇用・人材、医療・介護、農業分野での規制、いわゆる「岩盤規制」の改革や、法人税減税などへの踏み込みが足りないとの批判もありました。

安倍政権は、「岩盤規制」を含む残された課題に対応するため、今年1月に「産業競争力の強化に関する実行計画」を閣議決定し、また産業競争力会議において、「成長戦略進化のための今後の検討方針」を取りまとめました。そして、今年6月に改訂版成長戦略(以下、新成長戦略)を発表する予定です。

金融市場の反応は?

日経平均株価は、2012年12月の安倍政権誕生の前後から、アベノミクスに対する期待で上昇しましたが、2013年5月下旬をピークに急落しました。FRB議長がQE(資産購入)の終了に初めて言及した、いわゆる「バーナンキ・ショック」が背景です。その後、日経平均株価は、成長戦略が閣議決定される前日の6月13日に底打ちしましたので、成長戦略への期待があったと言えるかもしれません。

ただし、昨年末から今年初の短い期間を除いて、日経平均株価は昨年5月のピークを越えていません。米国株(S&P500)が早々に「バーナンキ・ショック」から回復し、最高値を更新し続けているのとは対照的です。今年4月には、新成長戦略に含まれるであろうGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直しの観測が、日経平均株価を大きく押し上げる場面もありましたが、その効果は長続きしませんでした。

為替市場では、アベノミクスを囃してドル高円安が進行しましたが、やはり昨年5月以降は総じて方向感のない展開が続いています。昨年11-12月にはドル高円安の展開となり、ドルが一時105円を超えましたが、これは成長戦略関連法案の成立というより、米長期金利(10年物国債利回り)の上昇が背景にあったとみるべきでしょう。

新成長戦略の中身は?

 今年5月23日、自民党の日本経済再生本部は「日本再生ビジョン」を発表しました。「日本再生ビジョン」は、「強い健全企業」、「公的資金改革」、「人間力強化」などの7つを柱とし、具体的に、法人税減税、GPIF運用見直し、外国人雇用促進、女性の就業支援など、様々な提案を行っています。安倍政権は、それらの多くを新成長戦略に盛り込むものとみられます。

成長戦略で為替相場はどうなる?

成長戦略によって、安倍首相の目指す通りに「日本経済が復活する」のであれば、長い目でみれば、円の実力が見直されることで円高要因になるはずです。

個々の政策をみても、それが日本経済の成長力を高める、あるいは日本企業の国内回帰や外国企業の対内投資を促すものであれば、やはり円を買う材料になるでしょう。

敢えて円売り材料とみなすことができるのは、GPIFの運用見直し(外貨資産増)、外国人雇用促進(労働力の輸入増)などごく一部の政策です。

もっとも、最近は日経平均株価とドル円相場が強い正の相関関係にあるので、新成長戦略を好感して日経平均株価が上昇するようであれば、短期的には「リスクオン」によるドル高円安の反応がみられるかもしれません。

また、やや停滞感のあるアベノミクスが再び前進し始めるとの期待が高まれば、日銀が追加緩和によって援護射撃するとの見方も強まり、ドル高円安を後押しするかもしれません。

成長戦略は主に、企業や労働力など供給サイドの構造改革であり、着実に進められるとしても、実を結ぶのに相当の時間がかかることでしょう。仮に、「成長戦略の実行=日本経済の復活=円の実力見直し」のシナリオが為替相場に織り込まれるとしても、まだまだ先だということでしょうか。

(市場調査室)

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