今月の特集

2014年05月GPIFの運用見直しとは?その為替相場への影響を徹底考察!

GPIFって何?

GPIFとは、年金積立金管理運用独立行政法人(略称「管理運用法人」)のことです。厚生労働省の所管により、厚生年金と国民年金の積立金、約130兆円を運用する世界最大規模の年金基金です。

世界第2位のノルウェー政府年金基金の運用資産は約5兆ノルウェークローネ(=約85兆円)、米国最大の公的年金基金であるCALPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)の運用資産は約2,800億ドル(=30兆円弱)ですので、GPIFの資産規模は群を抜いていると言えそうです。

GPIFの運用は、日本の国債中心に行われていますが、国際分散投資の観点から、国内株式、海外債券、海外株式などにも投資しています。

GPIFの運用見直しとは?

GPIFは、運用する各資産の比率を定めた基本ポートフォリオを策定しており、実際の運用において既定の許容幅での変動を認めています。そして、基本ポートフォリオが「安全・効率的かつ確実」であるかを「定期的に検証し、必要に応じて見直す」としています。

GPIFの基本ポートフォリオ・運用状況

昨年6月の運用見直しでは、国内債券の比率を下げて、主に外国債券と外国株式の比率を引き上げました。また、昨年11月の公的年金運用に関する有識者会議の最終報告でも、デフレからの脱却を踏まえて、国内債券を中心とする現在のポートフォリオを見直す必要があるとされました。

今年4月には、麻生財務大臣が「GPIFの(運用見直しの)動きが6月にも出てくる」と語り、国内株式の運用額増大の期待から、日経平均株価の大幅上昇をもたらしたのは記憶に新しいところです。やはり同じ4月に、先の有識者会議で座長を務めた伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授は、「(GPIFは)約25兆円の保有国債を売却すべき」との見解を示しています。

GPIFの運用見直しの為替市場へのインパクトは?

仮に、伊藤教授の提言通り、25兆円の保有国債が売却され、その代金が国内債券以外の資産に、現在と同じ比率で振り向けられるとすると、約14兆円が外国株式と外国債券に向かうことになります(国内株式に約10兆円)。

財務省の統計によると、日本の投資家による対外証券投資は、2005年度以降の平均で年間約10兆円です。したがって、14兆円の資金が対外証券投資に向かうならば、為替相場にもそれなりの影響が出そうです。

ただし、前出の有識者会議の最終報告では、「海外資産運用比率を高めることは、分散投資を進める効果があるほか、積立金の取崩し時に国内市場への影響が小さいというメリットがある反面、国内運用資産の減少が国内経済に影響を与える可能性がある」として、外貨建て資産運用には適切な判断が必要との見解が示されています。保有する国内債券の売却により、国内市場金利が大幅に上昇して、景気に冷や水を浴びせる可能性を懸念したものとみられます。

GPIFの動きは氷山の一角?

もっとも、運用の見直しを進めているのは、GPIFだけではありません。これまで、国内債券を運用の中心としてきた銀行や生命保険会社などの多くの機関投資家が、運用の多様化や外貨資産への投資の増加を検討しているようです。大手生命保険会社の数社は、2014年度の資産運用計画において、外債投資を増やす意向を表明しています。

いうまでもなく、国内の低金利が国内債券での運用を困難にしているからです。長期金利とも呼ばれる10年物国債の利回りは、足もとで0.6%程度しかありません。これはジリジリと上昇する日本の物価上昇率(3月の消費者物価上昇率は前年比+1.6%)を大きく下回っています。

4月以降は、1年程度の「期間限定」とはいえ、消費税率引き上げによって消費者物価上昇率は一段と押し上げられます。つまり、安全とされる10年物国債に投資をしても、インフレによる資産価値の目減りを防ぐことはできないのです。

そのため、日本の機関投資家は外貨建て資産、とりわけ外国債券への投資を積極化させる可能性があります。かつてのように「円高恐怖症」が強ければ、外債投資は為替ヘッジつきで行われ、為替相場への影響は限定的かもしれません。しかし、円の先高感が後退している昨今、為替差益にも期待して為替ヘッジなしの外債投資が増えるのであれば、円安の流れをサポートすることになりそうです。

日本の機関投資家が動き出せば、GPIF以上のインパクトも!?

日銀の資金循環表によれば、2013年末時点で銀行全体が保有する国債(財投債を含む)は287兆円でした。保険会社(生命保険や損害保険など)全体が保有する国債(同)は190兆円でした。いずれも、GPIFの運用資産規模を上回っています。それらの国債のごく一部が外国証券に振り替えられるだけで、GPIFの運用見直し以上のインパクトがあるかもしれません。

2014年度が始まった今年4月に、日本からの対外証券投資はとくに増えていません。今後、多くの機関投資家の運用計画に沿った形で、対外証券投資が増えていくのか、注目したいところです。

日本の対外証券投資

(市場調査室)

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