今月の特集

2014年03月消費税 増税は円安をもたらす?景気・為替相場へのインパクトを検証!

消費税増税で何が起こる?

今年4月1日、消費税が5%から8%に引き上げられます。消費税増税によって、景気や為替相場にどのような影響が出るのでしょうか。考察してみました。

景気に与える影響は?

消費税が3%から5%に引き上げられた1997年には、景気に急ブレーキがかかりました。もっとも、それは消費税引き上げだけが原因ではありませんでした。97年4月には、消費税増税に加えて、健康保険料の負担増などで、10兆円分、GDP比2 %程度の景気押し下げ効果が生じました。さらに、同年7月にはアジア通貨危機が発生し、アジア諸国の景気が急激に落ち込んだこと、それらの通貨に対して円が大きく上昇したことも、景気を圧迫しました。

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消費税3%の引き上げは、約8兆円の増収効果があるとされています。それだけ家計の負担が増えるということです。ただし、平成26年度に限れば、納税のタイミングの差異などによって、増収は5兆円程度にとどまる見通しです。安倍政権は景気腰折れ回避のために5.5兆円の景気対策を準備していますので、景気への悪影響はほぼ相殺されそうです。ただし、景気対策の中身は、法人減税やインフラ投資が中心となるため、一般消費者はその恩恵を感じにくいかもしれません。

消費税増税は円安要因か!?

消費税増税は、主に2つのルートで円安要因になると考えられます。
一つは、増税前の駆け込みの反動で景気にブレーキがかかった場合、日銀が追加的な金融緩和を実施するとみられることです。昨年4月の「異次元の緩和」が円安を促したことは記憶に新しいところですが、今年2月に黒田総裁は「リスクが顕在化すれば躊躇しない」と明言し、いざとなれば積極果敢に追加緩和に踏み切る意向を示しました。

もう一つは、物価が上昇することです。今年1月の消費者物価は前年の同じ月と比べて+1.4%となっており、日本はすでに「デフレ」から脱却しています。消費税増税により、消費者物価はさらに2%程度押し上げられる見通しです。そうした中で、引き続き日銀が国債購入によって市場金利を低水準にとどめるならば、市場金利から物価上昇率を引いた実質金利は大きく低下することになります。実質金利と為替相場には強い相関関係があるので、実質金利が低下すれば、円は下落する可能性があります。ただし、消費税増税の物価押し上げ効果は、ほぼ1年間の期間限定です(物価を前年の同じ月と比べるためです)。

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消費税増税で円高になるシナリオとは?

消費税増税で円高になるシナリオを考えてみましょう。
ちょっと考えにくいですが、消費税増税によって景気が落ち込めば、デフレへ逆戻りするかもしれません。消費税増税の物価押し上げ効果が1年後にはく落した時点で気付いても、政策対応は手遅れになりかねません。株価は下落し、リスクオフの円高になるかもしれません。2015年10月に予定されている消費税10%へ の引き上げは見送られる可能性が高まり、財政再建は絵に描いた餅に終わるでしょう。「アベノミクス=円安」のイメージが強いだけに、アベノミクスの失敗は 市場から円高要因とみなされそうです。

逆のケースとして、「強い日本を取り戻す」と力強く宣言した安倍首相が、「社会保障と税の一体改革」や「成長戦略」を成功させれば、日本経済が劇的に復活を遂げるかもしれません。その時には「強い円」が戻ってくるでしょう。もっとも、それは何年も先の ことかもしれませんし、成功のためのハードルはかなり高そうです。

過去の消費税増税とドル円相場

過去の消費税増税とドル円相場を振り返っておきましょう。
3% の消費税を導入した89年4月、5%へ引き上げた97年4月、いずれのケースでも、その1年後にはドル高円安になりました。もっとも、89年のケースでは、平成バブルの崩壊によって、その後は95年まで円高が進行しました。また、97年のケースでは上述したように、直後にアジア通貨危機が発生したことが、日本経済の落ち込みと円安の大きな原因でした。消費税増税の影響だけを切り出すことは難しそうです。

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ところで、消費税の未来は?

最後に、消費税は将来どうなるかという点に、触れておきたいと思います。
「社会保障と税の一体改革」は、「社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すもの(内閣官房)」です。少子高齢化によって社会保障費の削減が困難であるほど、税収、とりわけ消費税増税への依存が高まることは想像に難くありません。
財務省の資料によれば、OECD加盟の先進国の多くが、欧州を中心に20%前後かそれ以上の消費税(付加価値税)率が採用されています。財務省はそれらと同程度の税率を視野にいれているのかもしれません。

ただし、同じく財務省の資料によれば、国民負担率(=租税負担率+社会保障負担率)に財政赤字を勘案した「潜在的な国民負担率」は、アメリカを大きく上回 り、ドイツやスウェーデンに接近します。したがって、単に消費税を上げるだけでなく、社会保障費を抑制して財政健全化を進めることが不可欠でしょう。
また、それ以前に、どのような社会を目指すのか。欧州型の福祉国家か、アメリカ型の夜警国家か。そして、それに見合った税負担であるかが重要だと思われます。

日本の財政関連の各種資料は、財務省の以下のサイトからご覧になれます。
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/index.html

(市場調査室)

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