今月の特集

2016年04月Brexit(ブレクジット)に揺れる英国

Brexit(ブレクジット)って何!?

以前、財政破たんに陥ったギリシャが、支援を巡ってEU(欧州連合)やIMFと対立した際に、「ギリシャ(Greece)が、ユーロ圏から脱退する(Exit)」かもしれない事態が発生。
Grexit(グレクジット) = ギリシャのユーロ圏離脱問題」という造語が生まれました。

同様に、「英国(Britain)が、EUから脱退する(Exit)」かもしれない事態を、「Brexit(ブレクジット) = 英国のEU離脱問題」と呼びます。

英国では、6月23日にEU離脱の是非を問う「国民投票」が実施され、最終判断が行われることになっています。

なぜBrexitしたいのか?

英国がEU離脱の可能性を模索していることには、いくつかの背景(理由)があります。

1. 英国独自の自治権の確保
2. EU運営のための負担の軽減
3. 難民・移民問題の軽減
4. 金融街シティの監督権の獲得

などです。

2月18-19日に開かれたEU首脳会議では、英国から提起されたEU改革案(EU域内からの移民の福祉制限、EUの競争力強化、加盟国の主権強化など)を大筋で認める結果となりました。

難民・移民問題や、財政問題にあえぐ他のEU加盟国からは、英国だけに「特権」を与えることに不満の声も上がっています。
それでも英国の主張を呑んだ背景には、後述する理由から英国をEUに何としてでも留めたいとのEUの強い意向が感じられます。

Brexitの経済的な影響

英国がEUを離脱した場合、英国経済は大きな打撃を受けるとのシミュレーション結果があるほか、シティ(英金融街)の空洞化懸念、英国内の製造業の国外移転による雇用喪失懸念など、デメリットが多いというのがEU残留支持派の主張です。

英国のハモンド外相は3月に開かれた王立国際問題研究所での講演で「英国がEU離脱を決めた場合、EUとの新たな貿易協定が速やかにまとまる保証はなく、EUにとどまることが英国の利益になる」と訴えました。

6月の国民投票でEU離脱が決定された場合、EUが延長を認めない限り2年間で自動的に英国はEUを離脱します。しかし、その間に貿易協定がまとまるとは限らないと、同氏は指摘しました。

欧州のエンジニアリング業界団体「CEEMET」は、英国がEUから離脱した場合、英国のGDPが向こう15年間にわたり年0.5%押し下げられると試算しています。

BrexitのEUへの影響

英国がEUを離脱した場合、EUへの主な影響としては、「なぜBrexitしたいのか?」で触れた、「2. EU運営のための負担の軽減」「3. 難民・移民問題の軽減」がEUにとってはデメリットとして圧し掛かることになります。

とくに難民・移民問題については、2月のEU首脳会議で認められた「EU域内からの移民の福祉制限」に対して、移民を英国などに送り出してきた東欧諸国から不満が続出。

昨秋から国境検査を一時的に復活したオーストリアは、難民申請の受付数に制限を設けることを決定し、難民申請受付数を今年は3.75万件に抑えることとしました。こうした動きは、オーストリア以外のユーロ圏諸国にも拡がる可能性があり、ユーロ諸国の足並みが乱れることに繋がりかねない懸念があります。

Brexitの足もとの状況

2月のEU首脳会議で、キャメロン英首相がEU残留の条件として求めていたEU改革案が大筋で認められた実績をテコに、キャメロン首相は国民に対し「EU残留」を呼びかけています。

BOE(英中銀)のカーニー総裁は3月8日の議会証言で「BOEはEU離脱・残留について賛否を述べない」との立場を表明しました。
その一方で、「EU加盟は過去英国経済にプラスに働いている」「EUを離脱すればロンドンに拠点を置くグローバルな銀行が英国から移転するだろう」と残留派寄りの意見を述べるなど、キャメロン首相に足並みを揃えた格好です。

しかしEU離脱派は、EU残留派のこうした発言に対して、離脱に否定的な空気を醸成しようとするキャメロン政権の陰謀であり、「プロジェクト・フィアー(恐怖作戦)」だと反論しています。

4月12日に発表されたICM(調査会社)による世論調査では、EU離脱支持が45%、残留支持が42%と離脱支持が3ポイント上回っていることが分かりました。6日に発表された前回調査では、残留派が離脱派を1ポイント上回っていました。

ただ、12%が未定と回答していることから、「一方が絶対的な多数を占めるまでに至っていない」(ICM関係者)とされます。

また、20代、30代の若年層の3分の2が残留派と言われ、国民投票当日の投票率が通常の地方選挙と同じ30%程度なら離脱派有利、60%を超えれば残留派有利との指摘もあります。

Brexitに対する為替市場の反応

Brexitが市場のテーマとして浮上してきたのは、2月18-19日のEU首脳会議の直前あたりからです。

原油安の影響などから昨年11月以降、徐々に上値を切り下げていたポンド/円は、原油価格の下げ止まり感台頭で、今年1月中旬には一旦は175円近くまで反発しました。

しかし、2月のEU首脳会議でBrexitが主要テーマとして採り上げられることになり、同問題を巡る不透明感の高まりから、ポンド/円は大幅に下落。4月に入り、一時151.60円に下落しました(4月25日時点)。

【ポンド/円 (日足) 2016/1/13 から 4/25】 出所: FX Chart Square

今後6月23日の投票日にむけて、EU残留派と離脱派の勢力の変化などに金融市場が一喜一憂する状況が続くかもしれません。

6月23日の結果が「残留」となれば、ポンドは反発しそうです。一方で、結果が「離脱」となった場合には、英国とEUの交渉長期化も予想され、両者の新しい関係が明確になるまで、ポンドは下落圧力を受け易いのかもしれません。

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