今月の特集

2015年07月【アップデート】ギリシャ支援で合意。これからどうなる?

支援の「条件」で合意 ▼
ESMによる支援の中身、最大860億ユーロ ▼
債務削減ではなく債務再編で ▼
支援の条件、ギリシャに求められていること ▼
ハードルが高い国有資産の売却 ▼
喫緊の資金需要は、つなぎ融資やECBが供給か ▼
支援交渉の頓挫や「ユーロ離脱」観測の再浮上の可能性も ▼
最終的にはギリシャが自立できるかが重要 ▼

ギリシャ支援の「条件」で合意

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7月12日(実際には20時間を超える交渉後の13日朝)のユーロ圏首脳会談で、ギリシャとユーロ圏各国が合意に達し、ギリシャの「ユーロ離脱」の危機は取り敢えず回避されました。ただし、ギリシャは、支援を取り付けたわけではありません。あくまでも、支援を取り付けるための「条件」に関して合意したということです。

ユーロ圏首脳会談の声明冒頭には、「将来的に合意する可能性がある新しいESM(欧州安定メカニズム)プログラムの大前提として、ギリシャが信頼を取り戻すことが決定的に重要であることを首脳会談は強調する」とあります。ギリシャが数々の条件をクリアして信頼を取り戻すことで、ようやくESMによる支援の交渉が進められます。

ESMによる支援の中身、3年間最大860億ユーロ

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ESMを用いた支援総額は、3年間で最大860億ユーロです。このうち250億ユーロが銀行への資本注入に使われる見通しです。1月にチプラス政権が誕生する以前、必要支援額は約300億ユーロと見積もられていました。景況悪化や銀行システムの疲弊などによって、半年間で3倍近くまで膨れ上がった計算です。

債務削減ではなく債務再編で

ギリシャの債務減免については、ドイツの主張により元本の削減はしない方針です。債務期間の延長や金利引き下げなど、いわゆる債務の再編(リストラクチャリング)が中心となるようです。IMFは、ギリシャの財政が安定するためには、元本の削減は不可欠との見解を示しており、今後問題が表面化するかもしれません。

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支援の条件、ギリシャに求められていること

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実は基本合意書(MoU)はまだ交わされていません。ギリシャが7月15日に、(1)付加価値税などの増税、(2)年金改革の第一弾、(3)統計局の独立性確立、(4)財政赤字拡大時の歳出自動削減などを法制化したことで、ようやくMoUの交渉が始まります。

上記の法制化に加えて、ギリシャは、抜本的な年金改革、財政健全化、商慣行や市場の改革、電力公社の民営化、労働市場改革、金融制度改革など、自らの提案に一段とコミットすることを求められました。さらに、国有資産売却や行政府改革などユーロ圏からの追加的な要求も呑まされました。そして、それらの進捗をチェックするための監視団がアテネに常駐することになるようです。

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ハードルが高い国有資産の売却

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国有資産売却は、チプラス首相が最後まで抵抗した項目でした。債権団の提示した国外ファンドへの資産移管は免れましたが、ギリシャ国内にファンドを設置し、そこで自らが資産売却を進めることになりました。もちろん、債権団に厳しく監視されます。

国有資産売却により500億ユーロの収入が見込まれ、そのうち250億ユーロを資本注入の返済に充て、125億ユーロが債務削減、残り125億ユーロが投資に利用されます。

ブルームバーグによれば、2011年の支援第2弾の条件としても、国有資産売却が組み込まれました。これまでの売却実績は総額35億ユーロに過ぎないとのことです。目標の実現は相当に困難かもしれません。

喫緊の資金需要は、つなぎ融資やECBが供給か

首脳会談の声明によれば、ギリシャはECB保有国債35億ユーロの償還などで7月20日までに70億ユーロ、8月中旬までにさらに50億ユーロの資金が必要とされています。それらについては、ユーロ圏のワーキンググループが短期のつなぎ融資を検討しているようです。また、資金が枯渇しつつあるギリシャの銀行に対して、ECBは緊急流動性の供給を再開するものとみられます。

支援交渉の頓挫や「ユーロ離脱」観測の再浮上の可能性も

今回の合意は、チプラス政権やギリシャ国民にとって、箸の上げ下ろしまで注文をつけられるような屈辱的な内容となりました。それでも、ギリシャが粛々と条件を満たしていくようであれば、「ギリシャ」はもはや相場材料とはならないでしょう。

一方で、ギリシャ議会や国民の猛反発によって改革が滞るようであれば、支援交渉の頓挫、そして「ユーロ離脱」の観測が改めて浮上するかもしれません。

最終的にはギリシャが自立できるかが重要

ギリシャ問題が根本的に解決するためには、ギリシャが構造改革を進めることで、経済成長力を高めて、財政収支を安定化させ、債務残高を持続可能な水準に維持すること、そして必要な資金は自力で調達できるようになることが肝要です。

さもなければ、今回の支援第3弾をまとめることができたとしても、いずれ第4弾、第5弾が必要になるかもしれません。

(チーフアナリスト 西田明弘)

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7月「ギリシャ、デフォルト。国民投票後のシナリオ、ユーロ離脱はあるか」

6月「【アップデート】ギリシャ、IMF返済を先延ばし。デフォルト(債務不履行)はあるか、今後どうなる? 」

5月「ギリシャはデフォルト(債務不履行)するか。その時、為替相場はどうなる?

2月「ギリシャ政権交代:欧州債務危機は再燃するか。「ユーロ離脱」はあるのか」

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