今月の特集

2015年06月【アップデート】ギリシャ、IMF返済を先延ばし。デフォルト(債務不履行)はあるか、今後どうなる?

ギリシャ情勢は今後どうなるか

ギリシャと債権団(ユーロ圏各国、IMFなど)との交渉が難航しています。ギリシャは6月中のIMFへの返済、4回計16億ユーロをまとめて6月30日に一括払いとするようIMFに要請しました。月中の債務を一括して月末に支払うことはIMFが認めている措置で、1980年代のザンビアの一例があるだけとのことです。

6月7日時点の最新情勢をもとに、今後どうなるかを展望しました。

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次の交渉期限は6月30日、それとも6月14日?

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6月5日~19日に予定されていた返済を30日に先延ばししたことで、ギリシャは当座をしのぐことができそうです。ただし、30日までに債権団と合意して支援金の残り72億ユーロを受け取らなければ、今度こそデフォルト(債務不履行)ということになるかもしれません。

ギリシャと債権団が合意に達しても、その後に債権団のメンバーであるユーロ圏各国の議会承認を得る必要があるため、債権団は14日を非公式の期限に設定しているとの報道もあります。

ギリシャの国内政治が流動化する可能性も

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ギリシャの財政収支目標を達成する手段として、債権団が年金カットや付加価値税(消費税)の引き上げを求めているのに対して、チプラス政権はこれに断固反対しています。緊縮財政反対を公約にして政権を奪取したSYRIZA(急進左派政党)にとっても、債権団の要求は受け入れ難いものでしょう。

ギリシャが債権団の要求をのむためには、新しい選挙、債権団の要求に対する国民投票、連立政権の組み換えなどが必要になるとの見方もあり、今後ギリシャの政局が流動化する可能性もありそうです。

ギリシャがデフォルト(債務不履行)するプロセスとは?

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6月30日は先に延長されたギリシャ支援第2弾の期限でもあります。現行のままでは、6月30日を越えて支援金を受け取ることはできません。

返済が履行されない場合、期限から2週間後にIMFは厳格な督促状を発送します。さらに2週間が経過しても返済がなされない場合、IMFは「デフォルト(債務不履行)」を宣言します(期限から1か月後との説もあるようです)。

そこから、「クロス・デフォルト、クロス・アクセラレーション」が始まります。IMFの宣言を受けて、他の債権者もギリシャをデフォルトとみなすことが可能になり(クロス・デフォルト)、返済期限前であっても即座の返済を要求することができます(クロス・アクセラレーション)。

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IMFへの返済が履行されない場合、IMFは公的債権者であり、一般の投資家ではないので、格付け機関は直ちに「デフォルト」を認定しないかもしれません。ただし、債権者がクロス・アクセラレーションによって次々とギリシャに返済を要求する事態となれば、金融市場が大きく動揺する可能性もあるでしょう。

仮にギリシャが支援金を受け取ることが出来ても、支援第2弾が6月末に終了した後、7-8月にはECB(欧州中央銀行)が保有するギリシャ国債計67億ユーロの償還がやってきます。そのため、支援第3弾は不可欠との見方もあり、デフォルトの懸念が完全になくなるわけではなさそうです(*)。

(*)6/8付Wall Street Journal紙によれば、債権団は、支援第2弾を2016年3月まで延長し、その間にギリシャ銀行向け支援金の未利用分109億ユーロを流用可能とする提案をしましたが、ギリシャ政府はその条件に異を唱えてこれを拒否したとのことです。

預金封鎖や、ユーロからの離脱「GREXIT」はあるのか

ECBのコンスタンシオ副総裁は4月20日、「ギリシャがデフォルトしても、必ずしもユーロ離脱に追い込まれるわけではない」と語りました。ギリシャのユーロ離脱、いわゆる「GREXIT」の可能性は低いが、デフォルトの可能性は低くないということかもしれません。そもそも、EMU(経済通貨同盟)は不可逆的な統合であり、そこからの離脱は想定されていませんし、そのためのルールも存在しません。もちろん、ルールという意味では、新しく作れば存在しうるわけですが、そうするためのハードルは相当に高いと考えるべきでしょう。

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もっとも、次のようなシナリオは考えられます。ECBはギリシャの民間銀行へのELA(緊急流動性支援)を通じて、ギリシャ国債を担保に大量の資金を供給しています。ギリシャがユーロ圏と合意することを前提に、ECBはELA枠を拡大してきました。しかし、ギリシャがデフォルトすれば、ECBはELAを停止するかもしれません。そうなれば民間銀行は干上がってしまいます。預金流出や国外への資金流出が止まらなくなり、ギリシャは預金封鎖や資本統制に踏み切るかもしれません。

それでもユーロ資金が不足すれば、ギリシャ政府はIOU(借用書)で支払いを行わざるを得なくなります。事態が長期化すれば、IOUは新通貨に切り替えられるかもしれません。これは事実上のユーロ離脱(GREXIT)にほかなりません。そこまで深刻化する前にギリシャやユーロ圏は解決策を見つけると思われますが、ありえない話ではなさそうです。

過去のギリシャ支援とデフォルトの経験についてはこちら
⇒2015年05月 今月の特集「ギリシャはデフォルト(債務不履行)するか。その時、為替相場はどうなる?」

(チーフアナリスト 西田明弘)

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