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2015年05月ギリシャはデフォルト(債務不履行)するか。その時、為替相場はどうなる?

6月9日時点の最新の状況を踏まえてアップデートしました。
⇒2015年06月 今月の特集「【アップデート】ギリシャ、IMF返済を先延ばし。デフォルト(債務不履行)はあるか、今後どうなる? 」はこちら

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ギリシャのチプラス政権がバルファキス財務相を交渉担当から事実上外したことで、ユーロ圏との合意に向けて期待が高まってきました。チプラス政権は、5月初旬の合意と、同11日のユーロ圏財務相会合での正式承認(=支援金受領)を目指しています。果たして、目論見通り土壇場で合意できるか、それともデフォルト(債務不履行)は避けられないのでしょうか。

仮にギリシャが支援金を受け取ることが出来ても、支援第2弾が6月末に終了した後、7-8月にはECB(欧州中央銀行)が保有するギリシャ国債計67億ユーロの償還がやってきます。そのため、支援第3弾は不可欠との見方もあり、デフォルトの懸念が完全になくなるわけではなさそうです。

ギリシャは2012年2月にデフォルトしているので、その前後の状況とマーケットの動向を振り返り、現局面と比較しておきましょう。

ギリシャ支援

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ギリシャは2010年春に財政収支を粉飾していたことが発覚、最初のギリシャ・ショックが発生しました。同年5月にユーロ圏とIMFから合計1100億ユーロの支援を受けましたが、それだけでは足りないことが次第に明らかになりました。

ギリシャは、デフォルト懸念が高まった2011年10月にユーロ圏やIMFと合計1300億ユーロの支援第2弾で合意しました。合意の内容には、ギリシャ国債の保有者が債務減免に応じること、そして引き換えにギリシャが経済構造改革を進めることが含まれました。

第2弾の支援が正式に承認されたのが、2012年2月末でした。これを持って、国債が減免され、一部の格付け会社はギリシャの格付けを選択的デフォルト「SD」に引き下げました。

ギリシャ危機の終息

その後、経済構造改革の是非を巡って、2012年5月の総選挙、同6月の再選挙と、混乱が続きました。最終的に債務危機が終息に向かうのは、同7月にドラギECB総裁が「ユーロを守るために何でもする」と宣言、その後にESM(欧州安定メカニズム)などのセーフティーネットが構築されてからでした。

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秩序だったデフォルト

ここで注意が必要なのは、2012年のギリシャのデフォルトが、債権者との合意に基づいて特定の債務を減免した「秩序だったデフォルト」だったことです。債務者が資金不足に陥り、債権者との交渉や合意なく、一方的に支払いを停止する「無秩序なデフォルト」ではありませんでした。それでも、マーケットの混乱は避けられませんでした。

債券市場の反応

ギリシャの債務危機が深刻化するにつれ、国債が売り込まれ、利回り(金利)は急騰しました。3年物国債利回りはデフォルトが懸念され始めた2011年9月には40%を超え、支援第2弾が正式承認され、デフォルト(債務減免)が確定した2012年2月末には100%を超えました。現局面で3年物国債利回りは20%台で推移しているので、デフォルトは完全には織り込まれていないと言えそうです。

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為替市場の反応

ギリシャ危機発生後も、米FRBのQE(量的緩和)などを受けて、ユーロは対ドルで上昇基調でしたが、債務危機の深刻化に伴い、下落基調に転じました。支援の合意成立や承認が近づく場面では債務危機の終息期待からユーロが買われることもありましたが、最終的にユーロが底を打ったのは、上述のドラギECB総裁の発言がきっかけでした。

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現局面では、2014年7月以降、ユーロが対ドルで大幅に下落してきました。ユーロ圏と米国の金融政策の方向性の差が一層鮮明になり、とりわけ、2014年末以降はECBのQEを材料にユーロ安が加速しました。足もとで、ユーロは反発していますが、ギリシャのデフォルト懸念が強まれば、一時的にせよユーロが売り込まれる局面はありそうです。

資本統制やユーロ離脱(GREXIT)はあるのか

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ECBのコンスタンシオ副総裁は4月20日、「ギリシャがデフォルトしても、必ずしもユーロ離脱に追い込まれるわけではない」と語りました。ギリシャのユーロ離脱の可能性は低いが、デフォルトの可能性は低くないということかもしれません。そもそも、EMU(経済通貨同盟)は不可逆的な統合であり、そこからの離脱は想定されていませんし、そのためのルールも存在しません。もちろん、ルールという意味では、新しく作れば存在しうるわけですが、そうするためのハードルは相当に高いと考えるべきでしょう。

もっとも、次のようなシナリオは考えられます。ECBはギリシャの民間銀行へのELA(緊急流動性支援)を通じて、ギリシャ国債を担保に大量の資金を供給しています。ギリシャがユーロ圏と合意することを前提に、ECBはELA枠を拡大してきました。しかし、ギリシャがデフォルトすれば、ECBはELAを停止するかもしれません。そうなれば民間銀行は干上がってしまいます。預金流出や国外への資金流出が止まらなくなり、ギリシャは預金封鎖や資本統制に踏み切るかもしれません。

それでもユーロ資金が不足すれば、ギリシャ政府はIOU(借用書)で支払いを行わざるを得なくなります。事態が長期化すれば、IOUは新通貨に切り替えられるかもしれません。これは事実上のユーロ離脱にほかなりません。そこまで深刻化する前にギリシャやユーロ圏は解決策を見つけると思われますが、ありえない話ではなさそうです。

Xデーはいつか?

ギリシャ政府は公的積立金や地方政府の資金を流用して資金繰りを続けています。ユーロ圏との合意が遅れて、ギリシャが一時的に支払いを停止するという形でのデフォルトはいつでも起こりうる状況です。ギリシャが支援金を受け取ることができれば、当座は凌げるでしょう。それでも、新たな支援第3弾で合意できなければ、7月や8月のECB保有国債の償還ができないケースが発生するかもしれません。

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(チーフアナリスト 西田明弘)

6月9日時点の最新の状況を踏まえてアップデートしました。
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