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2015年03月3月期末接近!リパトリで「円高・株安」に!?

「リパトリ」って、なに?

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「リパトリ」・・・リパトリエーション(Repatriation)の略。
もともとは「本国送還、帰還」を意味しますが、転じて「海外に投資していた資金を本国に戻すこと」という金融用語として使われています。

具体的には、日本の投資家が海外(例えば、米国)の株式、債券などの資産に投資した資金を、決算の際に日本に戻す行為が「リパトリ」です。その際には、「海外資産の売却(決済)」と「日本円買い、現地通貨(今の場合、米ドル)売り」が行われます。

日本の企業(金融法人、事業法人など)は、本決算を3月とするものが多いため、「リパトリ」は3月期末の決算締めに間に合うように行われることが多いといわれます。

 

「リパトリ」が起きると、どうなるか?

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それでは、「リパトリ」が起きると、どうなるのでしょうか? 日米間の投資を例にとって考えてみましょう。

先に触れたとおり、「海外資産の売却」と「日本円買い、米ドル売り」という投資行動をとることで、

(1) 円買い需要が高まり、「円高、米ドル安」に振れ易い
(2) 米国株が売られ、それに連動して日本株が下落することで「株安」になり易い

以上の2つの現象が起こり易いといわれています。

とくに、日本株にとっては、個別企業の3月本決算について様々な憶測が飛び交う時期でもあり、そうしたタイミングでの「円高、米ドル安」進行は、輸出主導の日本企業にとってマイナスという連想が働きます。そのため、日本株下落に拍車が掛かるリスクが高まる点でも、3月期末の「リパトリ」には投資家の注目が集まるのでしょう。

「リパトリ」で「円高、米ドル安」は、本当か?

実際に、「リパトリ」で米ドル/円相場は「円高、米ドル安」に振れたのでしょうか?
過去の事例をもとに、検証してみましょう。

 

「米ドル/円の月別騰落率平均 (2000―2014年(15年間))」

(出所:BloombergデータをもとにM2J作成)

 

上のグラフは、2000年から2014年までの15年間における、米ドル/円の騰落率(前月末比)の月別平均値です。3月はプラス0.6%と、2月、12月に次ぐ高い伸びを示しており、「3月の米ドル/円は下がり易い」とはいえないようです。

ちなみに、同期間(2000―2014年)の3月の騰落は全15回中「9勝6敗」と、前月比プラスの回数が上回っており、09年から14年まで6年間、連続プラスとなっています。

このデータからは、むしろ7月から8月にかけての時期に「円高、米ドル安」に振れ易いという結果が出ており、一般にいわれる「3月期末はリパトリで、円高、米ドル安」という図式は、必ずしも確かではないのかもしれません。

 

「リパトリ」で「3月期末は、株安」は、本当か?

日経平均について、「月別騰落率平均」を同じ期間(2000―2014年)で行ったものが、下のグラフです。

「日経平均の月別騰落率平均 (2000―2014年(15年間))」
(出所:BloombergデータをもとにM2J作成)

 

3月の平均騰落率はプラス1.5%と、12月、11月に次ぎ、12ヵ月中で第3位につけており、米ドル/円と同様に「3月期末は、リパトリで株安」とはいえないようです。

ちなみに、同期間(2000―2014年)の3月の騰落は全15回中「8勝7敗」とプラスの回数がやや上回ったという結果になりました。

 

「リパトリ」への過度の懸念は不要か!?

加えて、海外資産への投資の動向をみるうえで重視される、財務省の「対外証券投資」のデータを確認しておきましょう。

米ドル/円の分析と同様に、月別の「対外証券投資(海外の株式、ファンド、債券への投資)」の動向をまとめてみました。

 

「月別の対外証券投資総額 (2005―2014年(10年間)の合計、単位:億円)」

(出所:財務省データをもとにM2J作成)

 

上のグラフは、2005年から2014年の10年間で、月別に対外証券投資のネット(買いから売りを差し引いたデータ)の金額を合計したものです。

このグラフによれば、3月は唯一のマイナスとなっており、「海外資産の売却」が起こっていたとみられます。ただ、前述の「米ドル/円の月別騰落率平均」の結果を併せて考えると、『3月期末で「海外資産の売却」は起こるようだが、米ドル/円への影響は限定的で「円高、米ドル安」になるとは限らない』という結論になりそうです。

というのも、「リパトリ」は3月末(またはその付近)で集中的に行われるのではなく、早ければ2月下旬から始まり、3月いっぱいにかけて行われるというのが、近年の定説となっているからです。売買が分散されることで、市場の変動が起こりにくいと推測されます。

自らの売買で、株価や為替レートを自分たちに不利になるように動かしてしまうことは、投資家にとって望ましいことではありません。「リパトリ」は3月期末に起こるものの、市場へのインパクトを避ける配慮によって、為替、株価とも影響が比較的小さく抑えられており、過度に影響を懸念しなくてもよいのかもしれません。


(市場調査部)

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